251203 死ぬなんて決して言うな!
今日のプレイリストから 409
”Never Say Die!”
チャット・パイル
共演:ヘイデン・ペディゴ
来日中のジョニー・デップが坂本しのぶさんと面談したと、今日の朝刊が小さく報じていました。坂本さんは母親のお腹にいる時に有機水銀に侵されて、生まれた時から水俣病を患っています。デップが映画で水俣病を撮影した写真家、ユージン・スミスの役を演じた機縁から実現したものでした。
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バンド名のチャット・パイルとは、地下資源を採掘する際に出る廃棄物を盛り上げたボタ山です。日本のボタ山は石炭採掘時のものですが、オクラホマ州にあるチャット・パイルは鉛や亜鉛採掘時にできたものです。鉛中毒を引き起こし、特に子供の脳に重大な障害をもたらしました。
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19世紀はじめ、同州北東部に、不毛の土地が広がっていました。肥沃なミシシッピ川流域に住んでいた先住民族がここへ強制移住させられました。ところが、20世紀になると鉛や亜鉛の鉱脈が発見されました。
先住民は再び土地を奪われます。白人労働者たちとともに危険な環境で働くことになりました。第1次世界大戦で戦時需要が高まり、新しい町ができました。しかし、戦争が終わると景気が悪くなり、採掘産業は衰退し、チャット・パイルと無数の坑道だけが残されました。
20世紀末、3〜4割の子供の血中鉛濃度が基準を超えているという衝撃の調査結果が発表されました。坑道による地盤沈下も進行し、結局、21世紀となって町は消滅しました。行政が機能を停止し、ほとんどの住民が退去したのです。しかし、チャット・パイルは今も残っています。
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2019年、オクラホマの若者4人がバンドを組んだとき、地域の負の遺産をバンド名にしました。激しい怒りをぶつけるような絶叫轟音系ノイズ・ロック、スラッジ・メタルです。メジャーではありませんが、多くの熱心なファンを獲得しています。
And there was no world
(世界なんて存在しなかったんだ)
Without the blood of your children
(子供たちの血がなかったら)
Without the pain of the masses
(大衆の痛みがなかったら)
Without the screams of eight billion
(80億人の叫びがなかったら)
オクラホマ州はアメリカで「最も問題の多い州」と言われます。鉛公害の問題だけではありません。多くの黒人住民を虐殺したタルサ人種虐殺もありました。168名もの生命が奪われた連邦政府ビル爆破事件は記憶に新しいところです。犯人は白人住民でした。チャット・パイルはオクラホマのバンドとして地域の問題のすべてを受け止め、告発しようとしているのでしょう。
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坂本さんは、子供の頃、なぜ産んだのかと思ったそうです。しかし、今はそう思いません。チャット・パイルに命じられなくとも、彼女は「死ぬ」なんて決して言わないんです。その代わりに、水俣のことを、自分のことを、みんなに知ってほしいと言います。
