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娘よ…最後に散歩行ったのいつ?|犬たちがパパママ派になった理由

犬を迎えた日、娘は目をキラキラさせながら言った。

「わたしが毎日お散歩行くね!ご飯もあげるね!ぜんぶ任せて!」

その姿はまるで、ペットショップの前で愛を誓う小さな聖女であった。こちらも親である。娘の成長、命を預かる責任、犬との絆。そんな教育的なものまで勝手に想像してしまい、「おお、これは情操教育にもなるではないか」と胸の中で拍手していた。

しかし、今思えばあれは選挙演説である。

公約は立派だった。毎日お散歩、ご飯担当、ぜんぶ任せて。もはや犬界のマニフェストである。ところが政権発足から三日で支持率は急落し、四日目には活動実態が消えた。

パパが「今日お散歩どうする?」と聞けば、「友達と遊びに行く」「ダンス練ある」「バイトで疲れてる」と、理由だけは湧き水のように出てくる。

家にいる日はいる日で、自室にこもってスマホとにらめっこである。犬が散歩に行きたそうな顔をしても、スマホの中の世界のほうが優先される。しまいには「えぇ……」「行けばいいんでしょ」と逆ギレ気味に立ち上がる。いや、パパとしては散歩に行ってほしいだけで、反乱軍を鎮圧してほしいわけではない。

そして犬たちは賢い。パパが「お散歩行く?」と言うと、娘ではなくパパとママのほうへ一直線に来る。娘のほうも一応チラッとは見る。だが、その目はもう期待ではない。「あの人は動かない」という、犬なりの統計処理が完了している目である。

わが家の犬たちは、おそらく家族内ランキング表を持っている。散歩部門一位パパ、二位ママ。娘は圏外。たまに写真を
撮る人、くらいの扱いである。

ご飯も同じである。娘が自発的に犬のご飯をあげた記憶は、かなり薄い。頼めば動く。頼まなければ動かない。つまり、娘の中で犬のご飯は通知が来ないアプリなのだ。開けば存在するが、自分から起動することはない。

パパが熱で寝込んでいる日でさえ、犬たちの腹時計は正確に鳴る。布団の中で「なんか視線を感じる」と目を開けると、そこにはご飯待ちの犬がいる。目が語っている。「あの人には期待していません。あなたが起きてください」。病人に対する配慮より、空腹のほうが強い。命とはそういうものだ。

トイレシートもまた、信頼を分ける重要な儀式である。犬が用を足す。シートを替える。これだけの話だが、娘にはなぜか見えていない。見えていないのか、見ないことにしているのかは不明である。ただ、犬たちはそこも見ている。可愛がるだけの人と、生活を整えてくれる人。その違いを、犬は人間より冷静に判断する。

その結果、犬たちは娘の部屋に入らなくなった。これは地味に大事件である。犬にとって部屋とは領土であり、布団とは楽園であり、人間の膝は指定席である。その犬たちが娘の部屋を避ける。犬会議で何らかの決議があったと考えていい。

「娘さんについてですが、抱っこはします。写真も撮ります。ただし散歩、ご飯、トイレの実績が不足しています」

おそらくそんな議事録がある。ココが議長で、リンが感情的に「でもたまに可愛いって言ってくれるもん!」と弁護しているかもしれない。だが最終的には、実績重視である。犬社会は思ったよりシビアなのだ。

とはいえ、娘が犬たちを嫌いなわけではない。むしろ大好きである。寒い時は抱きつき、写真を撮る時はテンションが上がり、友達が来た時には自慢げになる。「かわい〜♡」とも言う。ただ、その愛は生活を支える愛ではなく、ぬいぐるみ的な愛に近い。柔らかくて、温かくて、可愛いところだけを抱きしめたい愛である。

一方、親の愛はもっと地味である。散歩に行き、雨の日に足を拭き、トイレシートを替え、ご飯を量り、体調を見て、毛玉をほどく。そこにキラキラはない。あるのは腰の痛みと、拾ったうんち袋の重みである。

だからこの家では、「好き」の方向が少しずつ違うのだ。娘は可愛がる愛。パパとママは世話をする愛。犬たちは、世話してくれる人を信じる愛。どれも間違いではない。間違いではないのだが、親としてはやはり言いたくなる。

娘よ。

最後に散歩へ行ったのはいつだ。

最後にご飯をあげた日は覚えているか。

トイレシートを替えた回数を、胸を張って言えるか。


犬を迎えた日のあの公約は、まだ有効なのか。それとも、もう任期満了で自然消滅したのか。

今日も犬たちは、散歩の気配を感じるとパパとママのほうへ走ってくる。娘の前を素通りするその背中には説得力がある。言葉は話せなくても、犬はちゃんと見ているのだ。

💬 ……娘よ、たまには散歩へ行ってくれ。犬たちの中の娘の順位、たぶん今は「たまに抱きついてくる親戚のお姉ちゃん」くらいや😂🐾

🐶 ココのアンサー:ほんまは好きなんやで🥰
🐩 リンのアンサー:娘はうちのこと😤

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🐾 前話はこちら:ベッド上の覇権争い🛏️

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