娘は食い尽くし系|コストコの悲劇
「買い置きは節約になる」
その言葉を、素直に信じていた。安い時にたくさん買っておけば、いざという時に助かる。冷蔵庫に食材がある安心感。冷凍庫に肉が眠っている豊かさ。これぞライフハックではないか。
ところが我が家では、その理論がまったく通用しなかった。原因は娘である。
3個入りのプリンが消えている。冷凍庫に小分けした肉が見当たらない。犯人を探すまでもない。育ち盛りという名のブラックホールがいるからだ。
特に危険だったのがコストコである。
あそこはお得な倉庫だと思っていだが、娘にとっては食い尽くしのテーマパークだった。
ディナーロール三十六個は、数日かけて食べるものだと思っていたのに、気づけば袋はしぼみ、テーブルにはパンくずが散らばっていた。まるで台風が通過したあとである。
プルコギも危険だった。五日分くらいあるつもりで買っている。ところが、娘の前では「五日分」ではなく「ちょっと多めの一食」になる。
巨大ポテチも、スマホを見ながら袋の底まで到達する。チーズケーキにいたっては、存在した証拠すら怪しい。食べようと思った時には、すでに皿の上に記憶だけが残っていた。
買い置きとは、本来なら未来の自分への備えである。だが我が家では、娘の胃袋への献上品だった。節約のつもりで買っているのに、買えば買うほど消えていく。財布の中身は確実に痩せていった。
「明日からダイエット頑張る」
その言葉も何度聞いただろうか。ディナーロールより回数は多い。
結局、コストコ会員を返納した。買い置きで節約する以前に、買い置きが生き残れない家だったのである。
冷蔵庫に食材を入れたはずなのに、翌日には何もない。あれは節約ではない。食い尽くし系という名の、フードロスならぬフードロスト事件である。
🔗 前章はこちら:刺さるて言葉が嫌い📚
🌀 シリーズ序章:ADHD?いや、ただのナマケモノかもしれん🦥
