銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(6) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意
<第七話のあらすじ>
ティリーは顧客のジョンソンさんに来週の試乗までに難問パズルを作ってほしいと言われ困っていた。レイターが天才軍師のアーサーをフェニックス号に呼びパズルの作成を依頼した。(1)~(5)
「あんたら、夕飯食ってくだろ?」
レイターがわたしたちに聞いた。
「いいの?」
反射的に答えてしまった。悔しいけれどレイターが作る料理は美味しい。
「久しぶりにいただこう」
とアーサーさんも応じた。
「魚のソテーと野菜炒めだぜ」

そう言いながらレイターはキッチンに立った。
この船は操縦席とリビングダイニングがくっついていて、キッチンも一つの空間の中に設置されている。こんな船は見たことがない。
いつもはジョン先輩と一緒に料理ができるのを待っているけれど、アーサーさんと二人で待つのはなんだか居心地が悪い。
「お手伝いするわ」
と、カウンター越しに言ってから後悔した。
この間、レースを見るためにジョン先輩とここフェニックス号を訪れた時のことを思い出した。
料理が下手なわたしに、レイターは嫌がらせで料理を作らせようとしたのだ。
どんな意地悪されるかわからない。 恐る恐るキッチンへと入る。
「そりゃ、ありがてぇ。野菜切ってくれる? 俺、魚の下ごしらえするから」
きょうは意地悪するつもりはないようだ。
料理が下手とはいえ、野菜を切ることぐらいはできる。
「わかったわ」
レイターに合わせてあるからか調理台が高い。
*
アーサーさんがレイターに声をかけた。
「申し訳ないが、私は調べ物をしたいからマザーのデータベースを借りていいか?」

「いいも何も、あんたんちの金だ好きに使えよ」
「了解」
わたしはレイターに詰め寄った。
「将軍家のお金ってどういうこと? また、悪いことしてるんじゃないでしょうね」
この人は将軍家に税金を払わせようとした前科がある。
「俺の住民登録が将軍家の住所になってるって言ったろ」
「それは聞いたわ」
「だから、正規のファミリー契約してんだよ。嘘じゃねぇよ。あいつに聞いてみな」
そういうことか。
レイターはほとんど本を読まないのに、この船のデータベースは最新刊から何から何まで読み放題の高額契約で不思議に思っていたのだ。
*
さて、調理台の前で悩んだ。
包丁立てにたくさん包丁が刺さっていた。
レイターは調理師免許を持っている。本格的すぎてどれを使えばいいのかわからない。
まあ、野菜ならどれでも切れそうだ。手ごろな大きさの包丁を適当に抜いて持った。
そして、ピーマンを手に困ってしまった。

いつもわたしが調理に使うクイックレシピではピーマンはすでに細く切られている。
このヘタの部分はどうすればいいのだろう。
先に切り落としちゃえばいいのかな。恐る恐るヘタのところへ包丁を入れる。
スパっ。気持ちいいほど包丁が進む。
恐ろしい切れ味だ。うちで使っている包丁とは全然違う。
まな板に種がこぼれた。
ピーマンの種とワタってどうすればいいんだろう。手で取っちゃっていいのだろうか。
レイターが隣に寄ってきた。
「ティリーさん、あんた、もしかして料理やんねぇの? それ、肉切り包丁だぜ。野菜切りにくいだろ?」
嫌味な人だ。やっぱりわたしに恥をかかせたかったんだ。
「わざわざ言わなくてもいいでしょ。わたしが料理下手だって知ってるくせに」
「はあ?」
レイターが驚いた顔をした。
「俺、あんたが料理してるところ今初めて見たぜ?」
「だって、この間わたしが料理作らないって言ったら、嫌がらせのチャンスを逃したって悔しそうにしてたじゃない」
「俺が?」
レイターは首を傾げた。
この人にとってはどうでもいいやり取りだったのだろう。いじめる側は覚えていないものだ。
「あっ、あれか?!」
思い出したようだ。
「俺、ティリーさんの手料理を食べるチャンスを逃した、って言ったんだぜ」
「えっ?」
レイターが笑った。
「被害妄想だな。あんたが勝手に勘違いしてくれて助かったぜ。何、食わせられたか危ねぇところだった」
いつもわたしのことをからかうから、てっきり嫌がらせだと思っていた。 (7)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」