銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(5) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意
<第七話のあらすじ>
ティリーは顧客のジョンソンさんに来週の試乗までに難問パズルを作ってほしいと依頼された。ライバル会社のトップ営業マンは研究所のコンピューターでパズルを作成しているというが・・・。(1)~(4)
打つ手がないまま、木曜日になった。
レイターが最終兵器を用意すると言っていたから、会社帰り、期待しないでフェニックス号へ行く。
と、そこに、最終兵器がいた。
「こ、こんばんわ」
恐縮しながらあいさつをする。
将軍家の御曹司であるアーサー・トライムスさんが居間のソファーに座っていた。
アーサーさんは銀河一の天才軍師だ。

「こんばんわ、ティリーさん」
物腰柔らかで、長い長髪を後ろで束ねているその姿は、軍人らしくない。
「天才の脳みそはこういう時に使わねぇともったいないだろ」
アーサーさんはレイターと昔から付き合いがあり、先日、ハイジャックに襲われた時には助けに来てくれた。
「難しいパズルを作ればいいのか?」
アーサーさんがレイターに聞いた。
「ああ、超難問を頼むよ」
「数学的なもの、言語的なもの、どんなものがいいんだ?」
「俺とティリーさんが得意な数学的なもので頼むぜ」
「お前は文学的才能はゼロだからな」
「うるせぇ!」
アーサーさんが何やら数式を書き始めた。二箇所に空欄がある。
「ここに入る数字を求めよという問題だ。どうだ?」
難解と言うか、式も問題の意味すらよく分からない。
「おい、アーサー、何じゃこりゃ?」

「ヒントは、先週、数理学会で発表された新説エレフランの解だ。挿入して解析すれば、解けるだろ」
「パズルじゃねぇだろ、それは。単なる数学の問題だ!」
「お前が超難問と言うから作ってみたんだ。これが解ければキンドレール数学賞が取れるレベルだな」
キンドレール賞って世界最高峰の数学賞だ。
「俺が解けなきゃパズルじゃねぇんだよ」
「百年かければ解けるだろう」
「・・・あんたねぇ」
「冗談だ」
「はぁ」
レイターがため息をついた。冗談というには面白くない。
「難しいな」
アーサーさんが眉間にシワを寄せた。
そして、わたしが買ったパズルの本を手に取った。パラパラとめくる。
その時間、三秒程度。
レイターがアーサーさんを指差して言った。
「ティリーさん知ってる? こいつインチキ何だぜ」
インチキ?

「今ので読書完了なんだ」
「え?」
「すべてのページが頭にインプットされて、しかも、一度見たものは二度と忘れねぇ。アーサー、二十五ページに何が書いてあるか言ってみろよ」
わたしはアーサーさんに見えないように二十五ページを開いた。
アーサーさんは一言一句間違えず文章題を読み上げ、ついでに答えも言った。
解答は別冊になっていてアーサーさんは見ていない。
今、解いたんだ。
すごい。天才とは聞いていたけれど。手品でも見ているようだ。
「インチキだろ」
茶化すレイターにアーサーさんが口を尖らせて応じた。
「民族的に情報処理方法が違うんだから仕方ないだろう」
「こいつ、絶滅民族インタレス人の末裔だからな」
将軍家に嫁いだアーサーさんの母親が高知能のインタレス人と言う記事を見た覚えがある。
アーサーさんがわたしの方を向いて言った。
「もう少し勉強して日曜日までに作ってみますね」
もうアーサーさんしか頼れる人はいない。
「よろしくお願いします」
頭を下げるわたしにアーサーさんが思わぬ提案をした。
「その交渉に私も同行しましょうか?」
「いえいえ、滅相も無い」
わたしは手を振って答えた。
それでなくても将軍家の手を煩わせた上に時間まで取らせるわけにはいかない。
レイターが口を挟んだ。
「いや、ティリーさん、こいつを連れて行った方がいい。パズルオタクは何を言い出すかわかんねぇぞ」
「どういうこと?」
「魔法使いが作ってきたパズルを解けって言われたらどうするよ?」
あり得る。ジョンソンさんは少し変わったところがある。
魔法使いは研究所のスペシャルコンピュータを使って問題を作成しているのだ。それを解くように言われたらアーサーさん無しには無理だ。
「ティリーさん、私で良ければ同行しますよ」
アーサーさんの優しい笑顔が神様に見える。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
わたしは再度頭を下げた。 (6)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」