銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(4) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意
<第七話のあらすじ>
ティリーが担当するジョンソンさんはパズル協会の会長だった。来週の試乗までに難問パズルを作ってきてほしいという。ジョンソンさんにはライバル会社のトップ営業マンもハールの売り込みをかけていた。(1)~(3)
翌日、隣の席のベルが同情した顔で話しかけてきた。

「厄病神はすごいね。ハールに魔法使いが乗ってたんだって? 噂になってるよ」
わたしはため息をついた。
「それって、わたしの負け確定って噂?」
ベルは否定せず、思わぬ言葉を続けた。
「よかったじゃん。うらやましいよ」
「うらやましい?」
意味がわからない。
「だって、ハールに魔法使いだよ。売れなくてもティリーのせいじゃないよ」
「そっか」
力なくわたしは相槌を打った。釈然としないけれどベルの言う通りだ。
「魔法使いに会ったの?」
ベルが興味津々で聞いてくる。
「挨拶しただけだけどね」
「どうだった?」
さわやかな笑顔で『素敵な女性』と口にするケバカーン氏とのやり取りが真っ赤なイメージとともに蘇った。

「流石だったわよ、わたしも魔法をかけられちゃったわ」
「すっごい、人たらし、って噂だもんね」
人の心をつかむ天才。あの人なら価値の無い石ころだって魔法をかけて売るのだろう。
*
その魔法使いと戦うために、わたしは課長に値下げの相談をした。
「アラマットを値引きしてジョンソンさんに販売したいのですが」
「これでギリギリの価格だとわかってるよね」
課長は渋い顔をしている。
「ハールより値段を下げないと売れないんです。ジョンソンさんはオプションはいらないと言っているので、オプション分の値引きができないでしょうか?」

言葉に力が入る。もうこの手しか思い付かない。
「ティリー君、相手はハールに乗った魔法使いなんだろ」
「は、はい」
「その値引きで勝てると思うかい」
「え?」
頭が固まった。
オプション分の値下げ、それしか手はないけれど、それでジョンソンさんを納得させられる自信はない。
課長は諭すように言った。
「オプション分の値下げをクロノスがしていると言う話が広まると困るんだよ。だから値引きできるのは、これ位だ」
課長が示した数字を見た瞬間、焼け石に水、と言う言葉が浮かんだ。
わたしは叫びくなった。
ハールと戦うのに、魔法使いと戦うのに、これでは武器になりません! わたしに死ねと?
でも、どうしようもない。課長はこの戦いをあきらめている。
そして、課長の言うことは正しい。
「わかりました」
わたしは意気消沈しながら席へと戻った。
*
更に、わたしに追い討ちをかける連絡が入った。研究所のジョン先輩だった。
「ティリーさん、魔法使いと対決してるんだって?」

「はい」
「彼は一体何をしようとしてるんだい?」
質問の意味がわからない。
「ハールを売ってますけど」
「ギーラルの研究所が大変なことになってるんだ。スーパースペシャルコンピュータを魔法使いが独占して、難解なパズルを作っているらしい」
「えええっ?!」
魔法使いは徹底的だ。顧客のニーズをあまねく満たすつもりなのだ。
ジョンソンさんは言っていた「パズルは僕の人生」と。
流石だ。
ケバカーン氏の真っ赤な髪と笑顔が頭に浮かぶ。彼はただ人あたりがいいだけじゃない。努力しているのだ。
わたしだってできることはやらなくては。
ジョン先輩に聞いてみた。
「うちの研究所のコンピューター使って、パズル作ってもいいでしょうか?」
「あはははは」
ジョン先輩が笑いながら答えた。
「何言ってるのティリーさん? そんなことできるわけ無いじゃん」
一笑に付された。
全身の力が抜ける。わたしには武器も何もない。でも、このまま何もせずに負けるわけにもいかない。
わたしの取り柄は真面目と努力。
とりあえず、難問パズルの本を購入した。
数学的なパズルは結構いける。わたしは数理能力に秀でたアンタレス人なのだ。パズルの一つや二つ、作れるかも知れない。
しかし、そんな甘い世界では無いことにすぐ気がついた。
解くのと作るのは大違いだ。
何と言っても魔法使いは研究所のスペシャルコンピュータを使って作成しているのだ。 (5)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」