銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(3) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意
<第七話のあらすじ>
ティリーが担当となった顧客のジョンソンにライバル会社のトップ営業マンが燃費抜群の宇宙船ハールを売り込んでいた。ティリーは緊張しながらアラマットの価格を提示する。(1)~(2)
基本的にわたしが勤めるクロノス社の船は値段が高い。
今回はハールに苦戦しているため、値引き率を普段より多く設定してあるのだけれど・・・。
「このぐらいになります」
アラマットの価格表を見せる。

「ふ~ん」
反応が悪い。魔法使いはハールを一体いくらで提示したのだろう。価格表の別のページを開いて補足する。
「今でしたらこちらのシートカバーですとかこのあたりのオプションを無料でお付けできます」
「僕はオプションとかいらないんだよね」
スパンと断られた。
この交渉は厳しい。そもそも燃費重視じゃハールに太刀打ちできない。
厄病神のせいだ。
本体の価格はぎりぎりだけれど、課長と相談したらもう一声何とかなるかもしれない。
「では、お値段について、本社でもう一度検討して参ります」
「じゃあ、来週、この船持って来て」
ジョンソンさんはアラマットのパンフレットを指さした。
「さっきの彼にもハールの試乗をお願いしたんだ。だから乗り比べようと思う」
身が引き締まる。ギーラルの魔法使いと直接対決ということだ。
*
ジョンソンさんが思わぬことを聞いた。
「君、パズルは解くかい?」
「パズル、ですか」
引き継ぎメモを思い出した、ジョンソンさんの趣味はパズルだ。
ジョンソンさんがマスに数字が描かれたものをプリントアウトしてわたしに手渡した。
「さっき、ギーラルの彼にも渡したんだ。僕、銀河パズル協会の会長をやっていてね。これ、僕が作った問題だよ。是非解いてみてくれ」
この問題を解かないと船を買ってもらえないのだろうか。心配するわたしにジョンソンさんが笑顔で言った。
「別に正解した方の船を買うって訳じゃないけれど、見積りが同じレベルだったら、解けた方買おうかと思ってさ」
責任重大だ。あわてて問題を見た。
わたしたちアンタレス人は数字に強い。十桁の四則演算の暗算ぐらいは小学校へ上がる前にできるようになる。
マスに入った数字から法則性が見えてきた。空いたマスに数字を記入する。
「ほお」
ジョンソンさんが目を見開いた。
「そっか、君、アンタレス人だもんね。やっぱりこの問題は止めよう」
「え?」
「こっちにしよう」
ジョンソンさんが新たな問題を出した。三次元ホログラムで細かく描きこまれた図形だった。
「さあ、この中に立方体がいくつ隠されているかわかるかな?」
三次元の奥まで手が込んだ作りだ。これはすぐには解けない。
後ろにいたレイターが寄ってきた。
「俺もやっていい?」

ジョンソンさんが不敵に笑った。
「どうぞどうぞ。僕の作った問題だよ」
「ふむ」
いつもふざけているレイターが真剣な顔をして問題を凝視した。珍しい。
「263個」
さらっと、レイターが答えた。
「当たりだ」
ジョンソンさんが驚いている。わたしも驚いた。
「どうしてレイター、こんな問題解けるの?」
「あん? 俺は銀河一の操縦士だぜ」
意味がわからない。
「パズルとどんな関係があるわけ?」
「毎日、三次元の宙航座標見て裏側の計算もしてんだ」
ああ、そうか。
ジョンソンさんが拍手をした。
「素晴らしい。じゃあ、君たちにお願いがある。僕が解けないような難しいパズルを作って来週持ってきてくれたまえ」
「ええっ?!」
「よろしく頼むよ。ギーラル社の彼にもお願いしたんだ。僕はパズルに充てる時間を作るためにフリーランスで仕事をしていてね、パズルは僕の人生なんだよ」
パズル協会の会長に解けないような問題なんて作れっこない。
帰りの船で落ち込むわたしにレイターが軽く言った。
「俺に任せとけよ。木曜の晩、フェニックス号に最終兵器を用意しとくから」 (4)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」