銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(2) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意
<これまでのあらすじ>
ライバル会社が発売した小型宇宙船「ハール」が燃費抜群で売れている中、ティリーが担当となったジョンソンさんは燃費のいい船を探していた。そんな中、厄病神の船で営業へ向かうことに・・・
ジョンソンさんの自宅近くの駐機場にフェニックス号を停め、レイターが運転するエアカーで自宅へ向かう。
こじんまりとした一戸建てのジョンソンさん宅に着くとレイターが楽しそうな歓声をあげた。
「ほ、ほう」

「どうしたの?」
「ティリーさんの敵はハールだけじゃなさそうだぜ。ほら、隣のエアカー見てみなよ」
隣に駐車していたエアカー。ドアに貼られたステッカーに目が吸い寄せられる。
赤い髪の魔法使いが箒にまたがったマーク。

この業界で知らない者はいない。『ギーラル社の魔法使い』ケバカーン氏のエアカーだ。
ライバル会社ギーラルの男性トップ営業マン。魔法を使ってどんな船でも売るという。
魔法使いがハールを売る。これじゃ鬼に金棒だ。
目の前が真っ暗になる。『厄病神』が戦う前から発動している。
「はあぁ」
わたしは深いため息をついた。
*
ジョンソンさんの家の玄関からスーツ姿の『魔法使い』が出てきた。二十代後半のケバカーン氏本人を見るのは初めてだ。

わたしと背の高さは変わらない。小柄なリゲル星人。
真っ赤な髪の毛が印象的だ。普通の赤色じゃない。蛍光赤色だ。
「よう」
レイターが魔法使いに声をかけた。
「おや、レイターさん。お久しぶりです、営業ですか?」
どうやら知り合いのようだ。
「いやいや、僕ちゃんは銀河一の操縦士。営業はこちら」
レイターに紹介されてわたしは挨拶をした。
「初めまして、クロノスのティリー・マイルドです」

魔法使いはさわやかな笑顔を見せた。
「僕はギーラルのケバカーンです。こんな素敵な女性が僕のライバルだなんて光栄だなあ」
一瞬心がはずんだ。「素敵な女性」だなんて、口から出まかせ、白々しいお世辞に決まっている。
なのに、なんと自然に心をつかむのだろう。これは魔法だ。
あわてて気持ちを締めなおす。
「こちらこそ、お手柔らかにお願いいたします」
*
ジョンソンさんは三十代後半の独身男性。引継ぎメモには少々偏屈、とあった。緊張しながらあいさつをする。
「クロノスのティリー・マイルドです」
「ティリーさん、僕は、経済的な観点から船を選びたいんだ」
いきなり本題に入った。かなり合理的な人のようだ。
「だから、相見積もりはきちんと取ろうと思ってる。それでギーラルの人も呼んだんだ。面白い人だったよ。今来た真っ赤な営業マン」
「そうでしたか」
不安を感じながら相槌を打つ。
ギーラルの魔法使い。
あの、燃えるような赤毛は一度見たら忘れないインパクトがある。
一体どんなセールストークを展開したのだろう。
「ハールは燃費がいいから、僕の希望に沿うんだよね。僕、フリーのエンジニアなんだ。だから、収入が不安定でね。君みたいな大企業に勤めてる人にはわからないと思うけど」
「い、いえ」
わたしは慌てて首を振る。
「節約できるところは節約したいんだよ。だから、燃費は大事。ランニングコストがかからないっていうのはいい」
わたしはパンフレットを数冊並べた。
「弊社の燃費のよい船をそろえてみました」
「ふむふむ」
ジョンソンさんは燃費のコーナーを重点的に見ている。困ったことにどの船もハールより燃費は悪い。
「ふーん、さっきの彼も言っていたけれど、やっぱりハールはずば抜けて燃費がいいんだね」
胃が引っ張られるような感覚に襲われる。
燃費では負けてます。でもハールの耐久性は低いです。という言葉がのどまで出かかる。
弊社で一番燃費の良いアラマットを推してみる。
「こちらの船はハールよりは燃費が落ちますけれど、操縦性も安全性も格段にいいんです」
説明するわたしを遮るようにジョンソンさんが言った。
「そういうところは求めていないんだよね。あと、知りたいのは価格かな」
「は、はい」
パンフレットに価格は載せていない。急いで価格表を取り出す。 (3)へ続く
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」