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銀河フェニックス物語<出会い編> 第五話(8/25) 今度はハイジャックですって?!

<第五話のあらすじ>超豪華客船『カシオペア』がハイジャックされた。アリオロン同盟への亡命を要求する犯人と警察との交渉が再開した。これがうまくいけば帰れるとティリーは期待したのだが。(1)~(7)

 その期待は一瞬にして打ち砕かれた。
「人質は必要です」
 オグリースが即答した。
「どうしてだ、アリオロンへの亡命を手助けすると言っているんだ」
「銀河警察を僕たちが信用すると思いますか? 僕たちがデモ集会を開くたびに、でっちあげの罪で仲間を拘束するあなたたちを」
 オグリースの声は静かだけれど怒りに震えていた。

「では、せめて乗客に必要な物資を届けさせてくれ」
「この船には一か月無停泊で過ごせるだけの機能があることはご存じでしょう。カシオペアの周囲二キロに船を近づけないでください。破った場合には乗客を一人ずつ殺害します」
 殺害、その言葉が聞こえた瞬間、船内に緊張が走った。
「わかった。また、連絡する」
 交渉は不調のまま終わってしまった。

 すぐ後ろの一等座席から泣き声が聞こえた。子供の声だ。ティリーは振り向いた。

n12ティリー振り向き逆

 赤ん坊を抱いた若い母親が五歳ぐらいの男の子を必死でなだめている。二人の兄弟を抱えてあせっているのかどんどんと叱り声になっていく。
「泣かないの。しぃー。ミゲル、静かに」
 母親が叱れば叱るほどミゲルと呼ばれたお兄ちゃんの泣き声は大きくなる。
「静かにしなさい!」
「パパに会いたいよぉ~」
 おそらく、この船で父親に会いに行く予定だったのだろう。小さな子供でも何が起きているのかわかるのだ。自分たちは目的地とは別の遠い場所へ連れ去られようとしていることに。

 そして、今度は抱き抱えていた赤ちゃんが、ミゲルの声に呼応するように大声で泣き始めた。
「すみません。申し訳ありません」
 母親が頭を下げて周りの乗客に謝っている。

 と、ガタン、レイターがシートを動かした。
「動かないで下さい」
 ハイジャック犯のハンスがレイターにスプレー銃を向けた。
「うるせぇ!」

n20レイター口開けて怒る@

 レイターのあまりに迫力ある声に、ハンスがたじろいた。
 横にいたわたしもびっくりした。そして、泣いていた子どもたちも泣き止んでしまった。

 レイターは素知らぬ顔で自分とわたしのシートをぐるりと回転させ、親子に向かい合うようして腰掛けた。
「ごめんな、びっくりさせちまったな」
 そう言いながらレイターはポケットからメモ帳を取り出すと、何やら折り始めた。

 ハンスはスプレー銃を向けてしばらくレイターの様子を見ていたけれど、何も言わずに離れていった。
 折角子どもが泣きやみ静かになったのだ。このままにしておくのが得策と判断したのだろう。

「ほれ、宇宙船」
 ミゲルの顔が輝いた。レイターは何とまあ器用なのか。一枚の紙が見事な宇宙船に姿を変えていた。
「ここ、引っ張ってみ」
「わあ、変形する」
「作ってみるか?」
「うん」
 母親が頭を下げた。目に涙が浮かんでいた。

「すみません。ありがとうございます」
「謝ることねぇよ。悪いのは全部あいつら。折角の美人さんが台無しだ」
 そう言いながらレイターは母親の手を握っていた。ったく、この人は。
「この船飛ぶの?」
「飛ぶさ」

 そう言うとレイターはひょい、と投げた。紙飛行機、というか紙宇宙船はきれいな弧を描いて船の三等座席の方まで飛んでいった。
「うわあすごい」
 ミゲルが喜ぶと、ハンスが近づいてきた。
「調子に乗らないでください」
「わあったわあった」
 レイターが手で追い払う仕草をした。

 レイターが飛ばした紙飛行機はすーっと座席の上空を飛び、三等座席の縦縞のスーツを着たビジネスマンまで届いた。男はいらだっていた。アラスリーまで三十分乗るだけだったのに、こんなことに巻き込まれるとは。
 しかも、あきれた。紙飛行機か。
 特等座席の奴らは随分とのんきなことだ。俺たちが今から蜂起しようとしているのに。     (9)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」