銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (7)
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「ラールの御心のままに」
と言いながら、食事を運んできたのはわたしと同じくらいの年齢の少女だった。アルバイトさんだろうか。
「お嬢さん、かわいいね」

レイターが声をかけた。恥ずかしいからやめて欲しい。
女性を尊敬してるって言うけれど、どう見てもただ女好きなだけじゃないの。
「そのリップ流行りの色だろ。よく似合ってるぜ」
「ありがとうございます」
少女は恥ずかしそうに笑った。
言われて気がついた。彼女のパール入りリップは新色だ。随分細かいところに気のつく人だ。
レイターおすすめのアリオロン料理チャダムを口にする。おいしいけれど、これはどう食べてもトマトシチューだった。
*
食事をしながらフレッド先輩と明日の仕事の確認をする。
「明日はドーム市外の高重力検査場で交渉するからね。ティリー君は僕の仕事をよく見ていてくれたまえ」

「はい」
「とにかく、来期の高重力検査の予約を取らなくちゃいけない」
「はい」
検査場は重力フィールドの外にある。わたしは気になった。
「ドーム市外って重力はどうなっているんですか? 重力制御装置の圏外で十Gですよね」
「大丈夫だよ、この星は重力フィールドのほかに細かく個別制御できる技術を持っているんだ」
「すごいですね」
さすが高重力産業の星だ。
フレッド先輩とわたしが仕事の話をする横でレイターはウエイトレスの少女と楽しそうだ。
「お勧めの料理はどれかなぁ?」
「こちらはどうでしょうか」
レイターは「これ、うまいね」「おかわり欲しいね」と次から次へと注文し平らげていた。
そして女性の扱いがやたらと上手い。
「美人が運んでくるとおいしさが倍増するね」
「いえいえ、当店の料理がおいしいんですよ」
と少女は満更でもない顔で給仕を続けた。
この人、わたしのことは子ども扱いするのに。
食事はそれなりにおいしかった。というのも、このところフェニックス号で、美味しいものを食べ過ぎて感覚が麻痺している。
チェーン店レストランはやっぱりチェーン店の味がした。
一通り食べ終わるとレイターは会計伝票を見ながら言った。
「さて、税込み一万5704リルです。一人いくら払えばいいでしょう?」
大半はレイターが食べた分だ。わたしはすぐに答えた。
「一人、五千234リルで、あまりが二リルです」
「さっすがアンタレスの人は計算が速いね」
わたしたちアンタレス人は数字に強い。十桁の四則演算の暗算ぐらいは小学校へ上がる前にできるようになる。
「でも、残念。違うんだな」
違う? ということは
「均等割りじゃなくて、食べた量で比例配分するということ?」
「ブッブー。そんなことしたら俺が損するじゃねぇかよ」
レイターは口をとがらせて否定したけど、損はしないと思う。
「ここはフレッドが全額払うので、俺たちはただです」
「き、君何を言い出すんだ」
フレッド先輩が焦った声を出した。
「会社の経費で落とせよ」
レイターはさらりと許せないことを口にした。
「そんなことをしたら横領になるでしょ。普通に割り勘で払います」

わたしたちアンタレス人は順法意識が高いと言われている。不正は許せない。
「大丈夫だよティリーさん。先輩はお優しいからおごってくれるさ。俺の分もね」
フレッド先輩とレイターがごちゃごちゃ話し始めた。
どうやら以前、レイターがフレッド先輩のボディーガードをしていた時に助けたことがあって、その借りを返せと言っている。
「借りたもんは命のあるうちに返すのが礼儀っつうもんだろ」
「おかしいじゃないですか。レイターはそれが仕事だったんでしょ、借りとかいう話じゃないわ」
わたしは異議を唱えたけれど
「わかった、僕が奢るよ」
と、結局フレッド先輩が支払った。厄病神は吝嗇家だ。 (8)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」