銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十二話(2) 地球人のディナー
・第一話のスタート版
・第二十二話(1)
今週のS1は『無敗の貴公子』エース・ギリアムの大事な一戦なのよ。

レイターは興味がないかもしれないけれど、上期の全勝がかかってるんだから。
イライラする。仕事が手につかない。
フ~。
深呼吸をして気を取り直す。
隣の席のベルがわたしの顔を見て笑った。
「週末、どうするの? レイターとS1。それともカノオと地球で食事?」

「どうして知ってるの?」
「噂になってるよ。派手に廊下でやったんでしょ。それにしても、地球で食事なんて滅多にできないよ」
「どうぞ、ベル、代わりに行ってきてちょうだい」
「相手がカノオじゃなけりゃね。あいつ金持ちのくせにケチだし、自分が地球人だ、って鼻にかけてるから、地球になんて行ったら、自慢話ばっかりだよ」
完全に行く気が失せた。
「とにかく、カノオ君の申し出は断るわ」
カノオ君はキャンセル料が発生する、と言っていた。
地球のレストランのキャンセル料って、いくらするんだろう。わたしが払わなくちゃいけないのだろうか。
断ると決めたら早い方がいい。
会いたくないけど、直接カノオ君の顔を見て話そう。
これ以上、誤解はごめんだ。
立ちあがったわたしに、ベルが声をかけた。
「がんばってねぇ。S1はどうするの? フェニックス号に観に行ったらカノオがヤキモチ焼くよ」
フェニックス号の大画面の4D映像システムで、エースの勝利を堪能したかった。
でも、今週末は止めた方がよさそうだ。
どうして、こんなことになっちゃったんだろう。
*
カノオ君はモニターに向かって座っていた。後ろから声をかける。
「お仕事中ごめんなさい」
カノオ君はすごい勢いで振り向いた。
「おお、ティリーか」

その馴れ馴れしい呼び方止めて欲しい。
続けてカノオ君は驚くことを口にした。
「週末の集合場所は、フェニックス号だからな」
「え?」
意味が分からない。
「S1観てから地球へ行くことにした。レイターがフェニックス号を出してくれるそうだ」
「そうなの?」

それなら大画面でエースが見られる。
「ティリーはS1が好きなんだな。笑顔が見られてよかった。それに、これで酒も飲める」
「レイターを運転手にするつもりなの?」
ちょっとムっとする。
「そうさ、あいつの仕事だろ」
「じゃあ、そのお金は誰が払うのよ」
この間の出張でフェニックス号を動かすのにはお金がかかる、という話をカノオ君としたばかりだ。
「あいつから言い出した話だから、いいんだ」

レイターとカノオ君の間でどんな話があったのかわからないけれど、フェニックス号でS1レースを観ることができるなら、まあいいか、という気分になった。
*
「どうだった?」
席に戻ると、ベルが興味津々といった顔で聞いてきた。
「よくわからないけれど、レイターとカノオ君が話して、S1観てからフェニックス号で地球へ行くことになってたわ」
「へぇ、流石だね、レイターは。ティリーへの愛を感じるよ」
「は?」
「カノオにはできない芸当だよ。フェニックス号でS1を観たいというティリーの願いを叶えた上で、カノウの機嫌も損ねない。キャンセル料も発生しないし、二人のデートを監視できる」
「監視って何よ、監視って」
「食事の後に、カノオが迫ってきたらどうする気?」
「そんなこと考えてなかったわ。食事はお断りするつもりだったもの」
「レイターがティリーの保護者になってくれるってことよ」
「保護者ぁ?」
「そうだ、週末、あたしもフェニックス号へ行くわ」 (3)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」