銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十二話(3) 地球人のディナー
・第一話のスタート版
・第二十二話(1)(2)
そして、週末。
ベルと一緒にフェニックス号を訪れた。
地球の高級レストランにはドレスコードがあるというから、手持ちの中で大人っぽい紺のワンピのアンサンブルを着てみた。

「いいじゃん、その服。きょうは俺とのデートじゃねぇのに」
レイターがさらりとお世辞を言う。
「あなたとデートは一度もしてません」
と答えながら、嫌な気持ちに襲われた。きょうはカノオ君とデートということになるのだろうか。
カノオ君はもう船の中にいた。
S1を観戦するレイターの部屋は、いつもと同じく散らかっている。
わたしとベルは、ソファーに場所をつくって座った。
レイターはベッドに腰掛け、後は床しか空いていない。
「汚いなあ。こんなところに座りたくないぞ」
カノオ君が文句を言った。
「じゃあ出て行けよ」
「仕方ない。ティリーの隣に座るか」
「ええっ?!」
「カノオはわたしの隣に座りな」
というベルを無視し、カノオ君は狭いソファーの隙間へ割り込むようにして、わたしの左隣に座った。
満員の通勤電車よりきつい。嫌な感じだ。
でも、部屋が暗くなって4D映像システムが立ち上がると、もうカノオ君のことは気にならなくなった。
エースしか見えない。
右隣のベルに話しかける。
「もちろんエースは今日もポールポジションよ」
「ハイハイ、わかってるわよ」
無敗の貴公子のアップが映る。トップを誓う、人差し指を立てた決めのポーズ。
「かっこいいーっ」

カノオ君が不機嫌そうに言った。
「ティリー、お前、もしや専務が好きなのか?」
「そうよ」
「専務はソラ系出身だが、地球人じゃないぞ」
「関係無いわよ」
「そうか、やっぱり金がある奴がいいのか。俺の実家だってクロノスほどじゃ無いが貿易会社を経営しているんだ。資産はある」
「はあ? わたしはレースをするエースが好きなのよ、黙っててくれない!」

エースを悪く言うのは許さない。
カノオ君はわたしの剣幕に驚いたのか、レースの間は一言も話さなかった。
*
そして、まったく危ういところもなく、わたしのエースは優勝した。
「エース、最高! 上期全勝よ」
わたしは立ち上がって喜んだ。
「専務の道楽にも困ったもんだな」

カノオ君が、わたしの興奮に水を刺すようなことを言った。
社内にエースのことを悪く言う人がいることは知っている。
「プレイングマネージャーのつもりか知らないが、赤字部門だぞ」
カノオ君の言うように、レース部門は利益を出していない。だけど、船の魅力を伝える最高の場だ。
「カノオ君は、速い船に憧れないの?」
「別に」
船への愛情が感じられない。
「どうしてクロノスに入ったのよ?」
「宇宙船メーカーは安定企業だ。中でもクロノスは最大手で時価総額が高い。優秀な俺にぴったりだ」
わたしとは考える次元が違い過ぎて、声が出ない。
レイターが口を開いた。
「優秀なカノオさまは、貿易会社カノオーラの跡取り様だからな」

カノオーラと言えば、わたしでも知っている有名企業だ。
「人には言うなと言われているんだが」
カノオ君は嬉しそうに話し始めた。
「俺はいずれ家業を継ぐ。カノオーラをクロノスのような大会社にするため修行に来たんだ。戻ったら社長だ。そうしたら、ティリーは社長夫人だぞ」
妄想はやめてほしい、と言おうと思った時、ベルが口をはさんだ。
「あ~ら、ティリーがエースと結婚したら時価総額一位の社長夫人よ」
カノウ君がむっとして黙った。
ベル、ナイスなコメントだわ。
と思ったのだけれど、エースと結婚ですって! それこそ妄想だ。 (4)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」