銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十二話(4) 地球人のディナー
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怒ったカノオ君は、ベルを指さしながら言った。
「後で後悔するなよ。俺はお前とは絶対に結婚しない。俺は、俺を見下ろすような女は嫌いなんだ」
「背が高くて助かったわ」

笑顔で応じるベルを見て、レイターがぷっと噴き出した。
今のやりとりって何?
カノオ君が好きなのは、背の低い女子ってこと?
*
地球という星は、青く美しい宝石のようだ。
修学旅行で一度だけ、来たことがある。あの時は、銀河連邦議事堂を見学した。
カノオ君が予約した地球のレストランは、高級街のビルの最上階に入っていた。
レイターが運転するエアカーから、カノオ君と降りる。
エアカーの助手席でベルが手を振った。
「じゃあ、ティリー。九時に迎えに来るから、楽しんできてね」
小さなため息が出た。

できることならベルと代わって欲しい。
センスの良い店内。
窓際の席で、カノオ君と向かい合って座った。
緊張する。
何と言っても、地球の高級レストランなのだ。
きらびやかな夜景が目に染みる。
現金を十万リル用意してきた。
事前に検索したところ、この店の平均予算は一人五万リル。
万一、カノオ君の分まで立て替えることになっても大丈夫なように、大目に準備した。こんなに使うことにはならないと思うけれど。
「この店は、子どもの頃からよく来てるんだ」
カノオ君が言うのは嘘ではないのだろう。給仕長を呼びつけた。
「おい、裏メニューを言われる前に持ってこい」

「申し訳ございません」
自分の家の召使いと間違えているんじゃないだろうか。居心地が悪い。
「ワインはボトルで頼もう」
とカノオ君が言い出した。
「わたし、そんなに飲めませんから」
やんわり断る。
「いや、俺は平気だ」
今度はソムリエを呼びつけた。
「カノオ様、お待ちしておりました」
カノオ君がテイスティングをする。その様子は慣れていた。
「地球産か、まあまあだな」
「恐れ入ります」
カノオ君がわたしを見ながら言った。
「俺は、普段から一流の物に触れるよう親父から言われている。本物を見極める目が養えるんだ」
カノオ君のお父さんは、正しいことを言っていると思う。
なのに、冗談にしか聞こえない。
カノオ君と乾杯する。
このワインが美味しいのかどうか、正直よくわからない。
カノオ君がウンチクを垂れているから、ありがたい物なのだろう。
*
出てきた料理は美味しかった。
このお店は地球産の食材を使っていると言う。
初めて食べる味なのに、どこか懐かしい後味。スープをおかわりしたくなった。
けれど、会話は最悪だった。
カノオ君は地球で生まれて、わたしも知っている地球の名門校に小学校から入って、大学までエスカレーターで進んで、という自分史を延々と語り出した。
ベルが想像した通りの自慢話。
「すごいわね」
と適当に相槌を打つ。
カノオ君がさらに盛り上がる。
*
話は就職活動に差し掛かった。
白身魚のソテーが運ばれてきた。
「言っておくがティリー、俺の入社はコネじゃない」
「そうなんだ」
意外な気がした。
「もちろん、クロノスと取引のある親父が、俺のことを事前に社長に話したが、俺は普通に試験を受けて入ったんだ」
いや、それって絶対、コネ入社でしょ。
「知ってるかティリー、レイターは将軍家のコネでクロノスに入社したんだぞ」
カノオ君が、勝ち誇ったような顔をした。

「知ってるわ」
その話は本人から聞いたことがある。
「卑怯な奴だな」
はいはい。ソテーをナイフで切りながら適当にうなづく。
「その上、処分が出て退社になったんだ。最悪だぞ」
「そうね」
無敗の貴公子をレースで破って社内を騒がせたのよ。って教えてあげようかと思ったけれど、やめておいた。
レイターに対抗意識を燃やしているカノオ君に、何を話しても面倒なことになりそうだ。 (5)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」