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銀河フェニックス物語<少年編>第十四話 暗黒星雲の観艦式(20)

ハヤタマ殿下を救出したとしてコルバに感謝状が贈られることになった。
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<少年編>第十四話「暗黒星雲の観艦式」
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 観艦式に出席したままの派手な服装で、僕はバルダン軍曹と一緒に尋問室へ入った。医官のジェームズ少尉と銃を手にしたヌイ軍曹がそろって敬礼する。

 部屋の真ん中の拘束椅子に武装解除された短髪の男性が座っていた。いぶかし気な表情で僕を見つめる。十二歳の僕が礼服を着用した様子は、見ようによってはコスプレ的でもある。
「被弾の衝撃で一時的に意識を失ったようですが、現時点で健康状態に問題はありません」
 ジェームズが報告した。敵のアリオロン人は純正地球人と同じ人種だ。

 アリオロン軍歴データベースから呼び出した手元の資料では三十二歳とある。経験豊かな中堅士官か。
 尋問の手順はすべて頭に入っている。士官学校の実習での成績は良かった。だが、僕は気が重かった。
「アリオロン宇宙軍のグリロット・サルダ中尉ですね」
 アリオロン語で話しかける。
「……」
 返事はない。僕の発音がよくないのだろうか。

 このふねでアリオロン語が話せるのはヌイ軍曹と僕だけだ。僕はアリオロン語の辞書をすべて覚えている。難解な書面でも読み書きはできる。話を聞き取ることもできる。だが、発音やイントネーションは完璧ではない。
 自動翻訳機を使えばことは足りるが、誠意を持って相手の母国語で話しかける。

「私は、アーサー・トライムス少尉です」
 中尉の表情をうかがう。瞳孔に動きがある。僕の名前と勲章を下げた礼服を見て、連邦軍次期将軍であることを認識したようだ。
「グリロット中尉。あなたは、連邦軍の捕虜となりました。領空侵犯の罪に問われています。これから質問をしますが、あなたには黙秘権があります」
 彼は値踏みするような目で僕を見つめた。
「あなたは、鮫ノ口暗黒星雲を超えて、連邦領内に侵入しました。この事実を認めますか?」
 情報漏洩対策でこの部屋は外の音が遮断されている。だが、無音ではない。普段なら気にも留めない空調のファンの音がカサカサと音を立てていた。沈黙が続く。ゆっくりと待つ。黙秘権を選択すべきか、彼は熟慮している。
 アレック艦長は僕に礼服のまま尋問せよと命じた。興味を誘引し話をしてみたいと思わさせるためだ。

 彼はゆっくりと口を開いた。
「認めます」
 これまでも修羅場を潜り抜けてきたことを思わせる、落ち着いた声。彼が反応してくれたことに安堵する。
「鮫ノ口暗黒星雲を超えて、なぜ連邦領内にいたのか、目的を教えてください」
「観艦式の偵察です」
 予想していた通りの回答だ。これは、表向きの理由だ。
「あなたはどんな情報を得ましたか?」
「……黙秘権を行使します」
 有能な軍人だということは航行ログを見ただけでわかった。ハヤタマ殿下にわざと捕まりそのまま連れ去ろうとしたのだ。
 鮫ノ口を通って領空侵犯した後にフチチ機が到着するまでのタイミングを計っていたのだろう。こちらとしては、なぜ今それを調査するのか、その理由が知りたい。暗黒星雲と何らかの関係があるはずだ。明日以降も尋問を続ける必要がある。
「あなたの身柄はソラ系の収容所に移送され、人権委員会の判断を待つことになります。ほかに聞きたいことはありますか?」
「いいえ」
「お伝えになりたいことがあれば、こちらのボタンを押してください。自動翻訳機で話ができます」
 敵兵だが、彼に対して憎しみも怒りもない。武人としての沈着冷静な態度に尊敬の念さえ浮かぶ。ハヤタマ殿下だったらどう感じるのだろうか。家族を殺した敵を前にしたら。

 疲れた。尋問報告書の作成はヌイ軍曹に任せることにした。
 自室に戻るとレイターが二段ベッドの上で寝ていた。こいつも今日は疲れただろうな。
 礼服を脱ぐと身体が軽くなった。腰に下げたポーチの中にハヤタマ殿下から頂戴したデジタルアートが入っていた。
 机の上に飾る。美しい色の変化にあらためて見入ってしまった。

「フチチか? きれいじゃん。それ、値が張りそうだな」
 ベッドの上の段から声がした。   (21)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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