銀河フェニックス物語<出会い編> 第五話(9/25) 今度はハイジャックですって?!
<第五話のあらすじ>超豪華客船『カシオペア』がハイジャックされた。アリオロン同盟への亡命を要求する犯人と警察との交渉は決裂。三等座席ではビジネスマンたちがハイジャック犯に立ち向かおうと準備を進めていた。 (1)~(8)
銀河警察の交渉には期待できない。
縦縞スーツの男はほかの客と示し合わせた。我々三等座席は監視が緩い。金持ちの座席と違ってシートベルトも外せる。息を止めて、あのスプレー銃を奪う。
ハイジャック犯の反ス連の奴らは十人。それに対してこの船の乗客と乗員はあわせて百人以上だ。
勝ち目はある。アリオロンなんかに連れていかれてたまるか。
ふと、紙飛行機を見ると文字が書いてあるのに目が止まった。
『警備ロボットの武装を解除するまで動くな』
忘れていた。
この船には高性能な警備ロボットが乗っている。宇宙海賊から豪華客船を守るためのロボット兵。
紙飛行機を飛ばしてきた特等座席の男の言うとおりだ。計画の練り直しが必要だ。
*
特等座席に人型ロボットが機内食を運んできた。
スタッフロボットを見ながらティリーは思った。さすが豪華客船だわ。制服に身を包んだ女性型の給仕ロボットはスタイル抜群、ファッションモデルのような容姿。スタッフロボも特注のオーダーメードだ。

わたしとレイターの座席に運んできたロボは印象的な顔立ちをしていた。まっすぐに切りそろえられた艶やかな黒髪が特徴的で、おそらくソラ系東洋地区の人がモデルだ。
通路側に座るレイターが声をかける。
「美人ちゃんだね。お名前は?」
「キョウコです」
「いい名前だ。俺はレイター・フェニックス。よろしく」
レイターが握手している。確かに美しいけれどレイターは女性の形をしていればロボットでも何でもいいのだろうか。
「ありがとうございます」
ロボットのキョウコは動きに無駄がない。飲み物の巨大なボトルも軽々と片手で持って客席のコップに注いでいく。
「ラッキーだぜ、ティリーさん。特等座席のメニューだ」
重厚なパッケージに入った機内食。レイターは嬉しそうに手をつけた。お金持ちの特等座席用の食事が三等チケットのわたしたちにも運ばれてきた。
繊細な盛り付けを見ても普段食べている食事とは違う。
けれどこんな事態だ。食べようという気力がわかない。
「ティリーさんが食べないなら俺がもらってやるよ」
レイターの笑っている顔を見ると腹が立ってきた。誰のせいよ。厄病神のせいでしょ。
「わたし食べます」
無理やりでも口にしよう。隣の席のルギーナ王妃が笑顔を見せた。
「そうよ、食べられる時に食べましょう」
レイターがいい女だと言った意味がわかってくる。王妃は魅力的だった。
*
わたしはレイターに聞いた。
「アリオロンって遠いの?」
「そうだなぁ、距離はあるけど、こっからなら銀河出てワープ航法すりゃ一週間で着く」
わたしは驚いた。思ったより近い。
「もっと遠いかと思ってた」
「まあ、実際に行こうとすると、間に無管轄空域と戦闘緊張地帯があるから普通はもうちっとかかる」
「わたしたち連れていかれたらどうなるのかしら?」
「強制労働」
「え?」
「冗談さ」
冗談に聞こえない。
「人権委員会を通じた交渉で帰れる。俺もそうやって帰ってきた」
「そうなの?」
この人は一体何者なのだろう。
*
ティリーと話しながらレイターは気が付いた。
ハンスの目的は人権委員会の開催か。
半年前に領空侵犯したアリオロンの情報収集艦を連邦軍が捕まえた。その乗組員の返還交渉が進んでねぇ。金持ちのカシオペアの乗客ならいい交渉材料になる。
ってことはこのシナリオを描いたのはアリオロン軍だ。
嫌な予感がしてきた。この船のどこかにアリオロンの手引き者が乗ってるはずだ。 (10)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」