銀河フェニックス物語<裏将軍編>最後の最後は逃げるが勝ち(10)
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レイターの表情がうつろだ。シナリオ通りに動揺している。
ここに俺は駄目押しの言葉を放った。
「仮免を本免許に格上げするだけじゃない。限定解除免許付きだ」
「限定解除免許だと」

「お前は筆記も受かっている。アレクサンドリア号の四年分が実務経験に特別に認められた。ただしこの機会を逃したら、一からやり直しだ」
小型船から大型船までどんな船でも操縦できる限定解除免許。通常、取得には十年の実務経験が必要だ。
だが、将軍家のアーサーは大型軍艦の航行経験が高く評価され、実務四年で交付される特別措置が取られた。そのことはもちろんレイターも知っている。
そして、一からやり直しと言うのは、この先十年、大型船で修業しないと限定解除は取れないと言う意味だ。
「解散する」
あっけなくレイターは落ちた。
アーサーの読み通りだった。限定解除免許を付ければ話はすぐまとまると。
限定解除の条件はアーサーが自ら交通部に掛け合った。

レイターは自分と同じもしくはそれ以上の操縦技術があり能力は限定解除免許に値する。レイターに自分と同じ措置を取ればギャラクシー・フェニックスは解散し、交通部にデメリットはない、と説得した。
「な、何言ってるの?」
御台所が大声で叫んだ。
「レイター、あなたわかってる? 飛ばし屋を統一したところなのよ」
「御台、すまねぇ。統一しちまったから駄目なんだ」
アーサーの言った通りだ。「レイターは速い飛ばし屋とバトルがしたいだけなので、統一してしまったら、もう旗はどうでもいい筈です」と。
とにかくこいつは船さえ乗れれば良かったのだ。速い奴と飛ばすこと、それ以上何も求めていない。統一はこいつより速い奴がいないことの裏返しだ。
御台所は必死に訴えている。
「仲間はどうなるの? 見捨てる訳?」

「元に戻るだけだ」
「あたしは嫌よ」
「じゃあ、ギャラクシー・フェニックスは残して俺が抜ける」
「あなたが抜けたら解散してもしなくても終わりよ」
裏将軍のいないギャラクシー・フェニックスは解散も同然だ。交通部はそれでも構わないと考えている。
側近のアレグロが口を開いた。
「この交渉はレイター、お前にしかメリットがない。ギャラクシー・フェニックスに何の利益ももたらさない」

理路整然とレイターの説得にかかった。
レイターは困った顔をした。さすがに仲間を裏切る行為に簡単に踏み切れないのだろう。
俺は交通部の取引条件を提示した。
「まあ、そう言うな。銀河警察もお前らと共存したいと考えているんだ。一般道で暴れなきゃ、バトルの摘発は見送る」
ここから先はアレグロ・ハサムとの交渉となった。
世間ではハサム一族のバカ息子と呼ばれているが、裏将軍をプロデュースしただけのことはある。切れ者だった。
もはや説得したところでレイターの意思は変わらないだろう、ということを読み切っている。
解散をソフトランディングさせるためのシナリオをアレグロと練る。
飛ばし屋統一と共に裏将軍は引退。緩やかな連合体へと移行する。ギャラクシー連合会に残るも良し、旗が必要であれば独立も認める。
ただし、一般道での暴走行為はこれまで通りご法度。状況によっては「死ぬより怖い制裁」が課される。
これなら交通部も納得するだろう。飛ばし屋の力を分散しながら一般道の安全を確保する。
別れ際、レイターに忠告した。
「免許が出来るまでの二週間、絶対に船を操縦するなよ。操縦したら、免許の話はなくなる。限定解除どころか、一生、普通免許もおりなくなるぞ」

「わかった」
あいつは素直に頷いた。
御台所は全く納得していなかった。
「何のためにあたしたち頑張ってきたの。裏将軍のいないギャラクシー・フェニックスなんてあり得ない」
彼女は怒って部屋から出て行ってしまった。 (11)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」