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銀河フェニックス物語<裏将軍編>最後の最後は逃げるが勝ち(11)

銀河フェニックス物語 総目次
裏将軍編のマガジン
・最後の最後は逃げるが勝ち(1)~(10

* *

 そんなに荷物があるわけじゃない。
 レイターの前では一度も着ることがなかったな。ヘレンは手にした白いワンピースを丸めてカバンに突っ込んだ。

  レイターとの契約が終わる。もうあの人と一緒に暮らせないのだ。

 わかってた。
 彼には宇宙船と前の彼女しかいないって。

寝転ぶ

 ギャラクシー・フェニックスを解散することにレイターは全く躊躇がなかった。彼の中には仲間もあたしも存在していないのだ。
 他の女のことを考えながらあたしを抱く男。
 これが、あたしたちの契約。

 わかってた。
 いつかこんな別れの日が来ることを。でも突然過ぎる。心の準備も何もできていない。

 どうして、今なの。少年から日々成長していくレイター。今の彼が愛おしくて、想いは募るばかりなのに。

 大好きなものを、自分のものだと主張して触れていられるのは幸せだった。たとえ、それがうそだとわかっていても。

 そこには、いつか、手に入るかも知れない、という淡い期待と強い願いがあったからだ。

 それが打ち砕かれた。
 幻想は幻想でしかないとわかった今、近くにいるだけで身が焼かれるように苦しい。ここは地獄だ。

振り向き

 もうギャラクシー・フェニックスには、いられない。

 
* *

 ヘレンがアジトからいなくなった。
 二人で使っていた部屋がやけに広く感じる。
 船に乗れねぇと俺にはやることが何もねぇ。そんな俺をアレグロが誘った。

「俺は月に帰るが、レイター、お前も来るか? 大学に提出するリポートを作成しなくちゃならないんでな。部屋ならたくさん空いているぞ。将軍家の月の御屋敷ほどではないが」

横顔微笑逆

 月ってのは気が重いが、二週間は船も飛ばせねぇ。アレグロの提案に乗ることにした。

 ハサム一族の大豪邸は、将軍家の月の御屋敷とそれほど離れていない地区にある。俺のハイスクール時代の生活圏とかぶってた。
 外へ出る気にはならなかった。
 豪邸内にいくつも停めてあるハサム一族の船をいじって、船に乗れない禁断症状を埋めた。

 船の免許がもうすぐ手に入る。それは魅惑的で俺はずっと待ち焦がれていた。
 なのに、気持ちが弾まねぇ。空虚、って感じ。今、船に乗ることを我慢しているからか。いや違う。
 俺は思い当たった。手の届く場所に誰もいないことに。

 フローラと約束した銀河一の操縦士になるための本免許。それと引き換えに、俺は失ったのだ。すぐ隣で俺を支えてくれた存在を。

 ヘレンのことは好きだ。だが、恋愛感情じゃない。あいつの愛に俺は応えられない。

裏将軍と御台バックなし

 ヘレンの気持ちは気づいていたが、知らないフリをした。
 ビジネスに徹した。あくまで二人の関係は契約だ。

 なのに、物理的に離れると違う姿が見えてきた。
 ヘレンは見返りを求めずに俺を支えてくれた。わがままを許してくれた。俺はそれに甘えて全体重をかけて寄っかかっていた。
 あいつが隣にいないと不安定で立っていられないことに、いなくなって初めて気がついた。

 そして、ここ月の空気が、俺の記憶をかき乱す。

* *


 アレグロの妹、フラットは楽しんでいた。

フラット前18.前目

 小兄者のアレグロ兄さんが家に連れてきた『裏将軍』は大兄者の情報によればヤバイ過去の持ち主だ。私は興味があった。
  
 私が通う名門私立にも、隣の公立ハイスクールのレイターの噂は時折、聞こえてきていた。大人たちは『将軍家のバカ息子』って呼んでいたけれど、彼は女子の間で人気があった。
 お調子者のチビって話だったのに、今、彼の背は小兄者と変わらない。イケメンでかっこいい。面食いな私の好みにヒットした。

 レイターは小兄者以上の宇宙船お宅だ。いつ見ても駐機場で船のメンテをしてる。よく飽きないものだ。

「ねえ、デートしない?」
 休日、暇だった私は誘ってみた。
「あん?」
「街で買い物したいの」
「あんたらには恩があるから、俺が必要ならつきあうが」
 あまり乗り気じゃなさそうだったけれど、私は地元のショッピングモールへ強引に連れ出した。

 想像通りだ。いけてる彼氏って感じ。
 女の子の扱いも慣れててエスコートのタイミングとか、申し分ない。でも、全然楽しそうじゃない。ニコリとも笑わなかった。   (12)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」