銀河フェニックス物語<出会い編> 第五話(6/25) 今度はハイジャックですって?!
<第五話のあらすじ>ティリーが乗った超豪華客船『カシオペア』がハイジャックされた。メルバ星系のルギーナ王妃とともに特等座席に座らさせられたボディガードのレイターは犯人に馴れ馴れしく話しかけた(1)~(5)
レイターに続いてルギーナ王妃も犯人にたずねた。
「で、ハンス、あなたたちの目的は何なの? 夫とは喧嘩中だし、私には自由になるお金はないから身代金は払えないわよ」
さっきレイターに即金で五千万リル払うって言わなかったっけこの人。
「要求はこれからお伝えします」
ハンスはスプレー銃を私たちに向けながら答えた。
*
「こちらは銀河警察だ。反ス連、君たちの要求は一体何だ」
ハンスと警察のやり取りは、モニターを通して中央船室にいるわたしたちにもそのまま公開された。
犯人側のリーダーとみられる背の低い男は高らかに答えた。
「僕たちの要求はアリオロンへの亡命です」
アリオロンへの亡命ですって。
「アリオロン旅行かぁ」
隣のレイターがのんびりとした声で言った。
「旅行じゃないわよ!」

事の重大さが分かっているのだろうか。
わたしたちが所属する銀河連邦とアリオロン同盟はもう宇宙三世紀にわたって覇権争い、つまり戦争をしている。
とは言え武力衝突は今や前線や一部の地域で起きているだけで、それはニュースの中の出来事だ。
普段の生活でアリオロンの話を耳にすることはほとんどない。
学校では『見えない戦争』って習った。
「アリオロンへ行きたいのなら、わたし達を巻き込まないで勝手に行けばいいのに」
思わず口にするとレイターが笑いながら言った。
「そうだな。勝手に領空侵犯して撃ち落とされちまえばいいんだ」
そうか、間に前線の戦闘緊張地帯があるから簡単には行けないのだ。
通常、銀河連邦の人間がアリオロンへ行くことはないし、逆もまた然り。
*
警察と犯人の交渉は続いていた。
「我々は、このカシオペアでログイオンへ向かいます」
ログイオンってアリオロンの帝都だ。
「そこで乗客乗員の皆さまをアリオロン同盟へ引き渡します」
わたしたちも一緒に連れて行かれるってこと?
乗客の間に不安の波が広がる。わたしもパニックになりそうだ。
レイターがわたしの手を握った。温かくて大きい手。いつもなら「スケベ」と言って振り払うところだけれど、レイターの手の温もりで気持ちが落ち着いてきた。
伝わってくる「大丈夫だ。心配いらない」って。
*
特等座席に座っていたいかにも金持ちそうな中年の男性が反ス連に声をかけた。
「金なら払う。私を解放してくれないか? 十億リル払う」
男性の隣に座るルギーナ王妃が言った。
「あら社長。ご自分一人だけ助かろうなんて随分恥ずかしいことをなさるわね」
「王妃、あなただってこんな茶番につきあえないでしょうが」
二人は知り合いのようだ。
王妃がスプレー銃を持つハンスに話しかけた。
「いくら払ったら全員解放してくださるの? 夫に言って銀河連邦中から身代金を集めるわ。一人一億として百億? それとも二百億?」
すごい交渉だ。王妃の迫力にハンスが押されている。
「わ、我々はお金が目的ではありません」
「ふ~ん、こちらの社長さんより、随分ご立派ね」
王妃が感心している。
身代金が交渉の条件にならないとすると、ほかにどんな手立てがあるのだろうか。
隣に座るレイターがわたしの方を向いて言った。
「まあ、悪いところじゃねぇよ、ログイオンって」
わたしを安心させようとしたのかも知れないけれど、無責任な発言は余計に不安が募る。
「どうしてわかるのよ?」
「暮らしたことあるからさ」
「え?」
「アリオロン語さえ覚えりゃドラマも面白ぇし、料理も上手い」
永世中立星へ行った時、レイターがアリオロン料理について詳しかったことを思い出した。
「アリオロン人と会ったことあるの?」
わたしの問いにレイターが面白そうに笑った。
「帝都のログイオンに行ってアリオロン人に会わねぇほうが無理だよな」 (7)へ続く
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」