銀河フェニックス物語<出会い編> 第五話(15/25) 今度はハイジャックですって?!
<第五話のあらすじ>毒で倒れた船長たちをマヌ星へ連れていくためレイターが超豪華客船『カシオペア』を操縦した。ところがマヌ星に砂嵐警報が出ていて着陸許可が降りなかった。(1)~(14)
「ど、どうする気だ?」
オグリースがレイターに聞く。
「着陸するさ」
レイターは平然と答えた。
茶色い風で目視が利かなくなってきた。機器の値も不安定だ。
わたしは怖くなって聞いた。
「管制してもらえないんでしょ。しかも砂嵐だって言うのよ」
突然、管制用モニターが明るくなった。
「おい、レイター」
さっきの管制官より年配の男性が映りレイターに呼び掛けた。
「あん?」
「お前が操縦してるなら最初からそう言え。いつ転職したんだ?」
そう言って笑った。
「お久し、ベーリーあんたまだそこにいたのか」
レイターが親しげに声をかけた。知り合いのようだ。
さっきまで対応していた管制官が後ろからおそるおそる声をかける。
「空港長、ほんとによろしいのですか?」
「ああ、構わん」
「機長経験も不明のこんな若造ですよ」
「大丈夫だ。こいつは、ここの砂嵐の着陸に失敗したことはない」
空港長のベーリーさんが言い切った。
「ということだから、よろしく頼むぜ」
レイターが真剣な表情になった。操縦桿のレバーを引く。
管制はベーリー空港長が担当した。
「砂嵐による磁場補正は九十六度」
「オーライ」
二人の息がぴったりとあっている。

かっこいい。
思わず、レイターの横顔に見とれてしまった。
さっき医者から「彼氏」と言われたことを思い出す。レイターがわたしの彼氏だったら・・・。
この人普段はおちゃらけているけれど、こうして真剣に操縦している時は素敵だ。
と思った自分の考えを即座に打ち消した。
素敵? そんなはずない。この男はデリカシーのかけらもない『厄病神』よ。
わたしのあこがれは、我が社の社長でS1ドライバー『無敗の貴公子』エース・ギリアム。
『厄病神』のレイターとは月とすっぽんだわ。
*
砂嵐で多少船が揺れたけれど、レイターは空港の指定された場所にぴったりと着陸させた。この人の操縦はうっとりするぐらい巧い。
「相変わらずいい腕してるな」
空港長がレイターの腕をほめた。
「へへ、当たり前だろ。俺は銀河一の操縦士だぜ」
わたしはレーサーが好きだ。そのせいだ。嬉しそうなレイターの顔を見たら胸がキュンとした。
*
船長たちはすぐにマヌ星の病院へと運ばれた。
中央船室ではオグリースが人質として残す乗客の名前を発表していた。人質を十人に絞り込んだと言う。
わたしは手を握りしめてその様子を見ていた。緊張する。
「申し訳ありませんがルギーナ王妃には引き続き、人質となっていただきます」
「仕方ないわね」

王妃は肩をすくめた。
十億リルを払うから解放してくれ、と言っていた社長の名前も呼ばれた。
「私には持病があるんだ。病人なんだ。解放してくれたまえ」
社長はオグリースに必死にアピールしていたけれど、
「あなたの財力は我々に役立つ可能性があります」
と、要求は受け入れられなかった。
医師の男性も人質として残ることになった。
力のある人たちが人質として残されている。
だからかわたしの名前もレイターの名前も呼ばれなかった。
ルギーナ王妃には悪いけれどここで解放されることにホッとした。
*
後ろの席の親子も解放される。わたしはお兄ちゃんのミゲルの手を握って出口へ向かう列に並んだ。
「よくがんばったね」
「うん」
ミゲルと話すわたしを見ながらレイターが言った。
「と言う訳で、ティリーさん。ここでお別れだ」
「ちょ、ちょっと待って。あなたも名前呼ばれなかったじゃない」

「あん? 誰がこの船動かすんだよ」
「交代の操縦士が来るんでしょ」
「俺は銀河一の操縦士だぜ」
最初からこの人は残るつもりだったんだ。
「じゃあ、わたしも残るわ」
「悪いが、ティリーさんあんたに残ってもらっちゃ俺が困る。あんたを守るのが俺の仕事だ」
いつもふざけているレイターの表情が真剣だった。 (16)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」