銀河フェニックス物語<出会い編> 第五話(14/25) 今度はハイジャックですって?!
<第五話のあらすじ>ハイジャックされた超豪華客船『カシオペア』で蜂起した船長たちに犯人が毒薬のスプレー銃を使用した。レイターは毒で汚染された操縦席から船長たちを救い出してきた。(1)~(13)
男性医師がオグリースに言った。
「とりあえず船長たちの命は取りとめたが危険な状態だ。一刻も早く病院で治療をうけさせなくては三人とも死んでしまうぞ」
オグリースは震える声で同意した。
「わ、わかった」
動揺しているのが手にとる様にわかる。
三等座席に座っていた縦縞のスーツを着たビジネスマンが近づいてきた。
「われわれにできることはあるか?」
「スタッフロボが倒れちまってるから、人力で船長たちを医務室へ運んでくれ。担架が通路の非常棚にある」
レイターがてきぱきと指示し乗客たちが動く。
レイターはオグリースに向けて言った。
「こっから一番近い惑星マヌなら十五分で着くから人質を選別しろ。病人と一緒に子どもとか降ろせる奴はみんな降ろせ」
オグリースはうなづいた。
レイターが完全に仕切っている。
「逆に、操縦士を一人要求しろ。俺一人でも十分だが念のためだ」
レイターの言葉にわたしは驚いて聞き返した。

「あなたが操縦するの?」
「俺以外に誰がいるんだよ」
この人が操縦が上手いことは知っている。だけど。
「免許ないんでしょ?」
「は?」
レイターが目を丸くしている。こんな時だから無免許操縦だとか言ってる場合じゃないことはわかっているけれど。
「俺の免許は限定解除だぜ」

レイターが誇らしげに免許を見せた。
生まれて初めて現物を見た。大型長距離船も操縦できる限定解除免許。
「どうして持ってるの?」
限定解除の取得には宇宙航空大学出て乗務経験十年以上が必要なはず。
「『銀河一の操縦士』だから」
答えが答えになってない。
医者がレイターに聞いた。
「君は大丈夫なのかね? これだけの毒にさらされて」
「ああ、俺は仕事柄慣らしてんだ」
後ろからルギーナ王妃の声がした。
「皇宮警備官は薬物耐性の訓練を受けているのよね」

「薬物耐性?」
聞いたことがあるような無いような。
「予防接種みたいなもんだ」
レイターが軽く説明した。
「よく毒見をしてもらったわね」
ルギーナ王妃の言葉にレイターが笑顔で返した。
「ま、大半は味見でしたけどね」
毒を盛られる王妃とそれを守る警備官。ドラマみたいな話だ。
一般市民のわたしには想像がつかない。
レイターから離れたところで医者がわたしに言った。
「彼氏のこと気を付けてあげなさい。いくら毒物に慣らしていると言っても心配だ」
「は、はい」
と、答えてから気が付いた。レイターは彼氏じゃない。
*
操縦室をフルパワーで空気洗浄し、レイターが機長席に座った。
マヌ星へ向けて操縦している。
そしてわたしはレイターの隣の副操縦席に座っていた。
「変な気を起こさないでください」
オグリースが後ろの席からわたしにスプレー銃を向けながら言った。レイターに毒が効かないからわたしが人質になったのだ。
気分はよくない。
銀河警察からコクピットに思わぬ連絡が入った。
「マヌ星からカシオペアの着陸許可が降りない」
「ど、どういうことだ。どうする?」
オグリースが心配そうにレイターに聞く。
「隣の星系まで飛んでちゃ間に合わねぇ。予定通りマヌに降りる」
マヌ星はもう目の前だ。

マヌ星はこの間まで地下採掘権をめぐって戦争していた。
一年の三分の二は砂嵐が吹いているという住みにくい星で、今は連邦軍の管理下に置かれているはず。
「高度六千五百から、大気圏突入までカウントダウン願います」
機長席のレイターが管制とやりとりをしている。
「現在、マヌ空港の周辺に砂嵐警報が出ている。着陸の許可はできない」
レイターが怒鳴った。
「バカ野郎! こっちにゃ重病人が乗ってんだよ。一分一秒争ってんだ」
「命を危険にさらす許可はできない」
「うるせぇ、強制着陸する」
「宙航法に違反する」
「ごたごた言うんじゃねぇ。俺を誰だと思ってやがる『銀河一の操縦士』だぜ」
そう言うとレイターは管制のモニターを切ってしまった。 (15)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」