銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(最終回) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意
<第七話のあらすじ>
アーサーの作ったパズルのおかげでハールとの戦いに勝ったティリーは購入契約のためにジョンソンの自宅を訪れた。だが、契約書を見たジョンソンは突然これは違うと言い始めた。(1)~(11)
ジョンソンさんが不満げな声で言った。
「僕が欲しいのは、経済的に節約出来る船だって伝えたよね」
わたしは青ざめた。ここへ来て、厄病神が発動した。
課長のあせった声が耳の奥で聞こえた。「何、のんびりしているんだ。敵は魔法使いだぞ!」と。
ケバカーン氏の真っ赤な髪と人懐っこい笑顔が頭に浮かんだ。

ギーラルの魔法使いは一体どんな魔法を使ったのだろう。
「やっぱり、ハールがよろしいんですか?」
自分の声が震えている。
「ん? ハール? あれは燃費はいいけれど、剛性が弱すぎるよね。耐用年数が短くて経済的には高くつくと思うんだよね」
ジョンソンさんが言っていることは正しい。
「僕はエンジニアだから、その辺りはきちんと見極めるよ。ハールは実際に乗ってみてよかった。だから、本当は試乗してから決めたいところだけれど、まあ、定番品で何度か乗ったことはあるからいいんじゃないかと思って・・・」
そう言いながらジョンソンさんが机の上にあったパンフレットを手に取った。
初めてここへ来た日に渡した『ラムベル』のパンフレットだった。
わたしは思わず振り向いた。
ドアの前に立っているレイターが笑っている。

あの日、レイターが「俺ならラムベル勧める」と言ったからたまたま持ってきたパンフレットだ。
「この船、いいよね。定番でパーツもそろっていて、メンテナンスも安くすむ。長く乗れてどう考えても割安で費用対効果がいい。君が、もっと推してくれてもよかったのに」
「す、すみません」
契約ボードを開いた。ラムベルを入力する。
定価が出てきた。
わたしの権限で割引ける最大まで値引きした。それでも、アラマットより高い。
「これでいかがでしょうか?」
恐る恐る数字をジョンソンさんに見せる。
「うん、いいよ。ここへサインすればいいのかな?」
「はい」
あっけない程簡単に契約が成立した。
厄病神の船で来たのに。いや、厄病神の船で来たから成約できたのだ。
契約データを本社に送信する。
課長は驚いているだろうな。わたしがミスしたと思っているかも知れない。どうしてアラマットじゃなくてラムベルなんだ、って。
「オプション、ただでお付けしますね」
「僕はオプションはいらないと言ったでしよ」
「でも、お付けしたいんです。感謝の気持ちです」
ジョンソンさんは振り向くと、レイターと目を合わせた。
「僕は十分彼に感謝しているよ」
意味がわからない。
確かにラムベルはレイターのお勧めだったけれど・・・。
「わたし、ラムベル勧めたのが彼だってジョンソンさんにお伝えしましたっけ?」
「何のこと? ぼくが感謝しているのは新規パズル本企画のことだよ」
「パズル本?」
「『超難問百問パズル』だよ。君の会社の調査部の人が原稿書いてくれたんでしょ」
アーサーさんのことだ。

「僕が会長を務めているパズル協会には出版部門もあるんだ。あの百問は素晴らしい。パズル界を揺るがす名著だよ」
ジョンソンさんの声が感動で上ずっている。
レイターがニヤリと笑って近づき、データカードをジョンソンさんに渡した。
「原稿料と十パーセントの印税はこちらの口座へ頼むぜ」
口座番号だ。名義がレイターになっている。
アーサーさんが作った百問のパズル案を勝手に売って儲けようとしているに違いない。
小声でレイターを問い詰める。
「ちょっとコレ一体どういうことよ?」
「あいつ、利用するのはお互いさま、って言ってただろ」
そう言ってレイターはウインクした。 (おしまい)
第八話「唇よ、熱く営業トークを語れ」へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」