銀河フェニックス物語<少年編>第十九話(1)敵とブラックアウト
ピピピッ・ピーピーピー・ピピピッ……
アレキサンドリア号が救難信号をキャッチした。
通称アレックの船。銀河連邦軍所属のこの戦艦は要請があればどこへでも出かけていく。銀河辺境の公海をパトロールしている時のことだった。
「信号の発信先は?」
「敵船です。アリオロンの重巡洋艦」
艦橋の指揮卓に座るアレック艦長が艦を横付けするように命じた。
「お助けせにゃなるまい。応答信号を出せ」
「え? 敵を助けんの?」
レイターはびっくりして届けに来た弁当を落としそうになった。

「この広い宇宙で呼ばれるのも何かの縁だ。お前も立派な操縦士になりたいんだったら、覚えておけよ」
なんとまあ、ご親切なことだろう。マフィアのダグなら「チャンスだ」と喜んで撃沈するところだぞ。
窓に駆け寄ってアリオロンの重巡洋艦を見る。ボコボコと穴が開いて燃料が漏れ出ていた。この辺りに飛び交う小天体流星群にやられたようだ。
アレックの声が響く。
「簡易修理を手伝ってエネルギー補給する。けが人がいるようだから、こっちの救護班でも面倒を見ると敵に伝えろ」
通信士のヌイが流暢なアリオロン語で応じる。
俺も含めてみんなアレックの気まぐれには馴れっこだが、相手はアリオロンだ、罠の可能性だってある。戦闘に近い緊張感が艦内に漂う。
宇宙船お宅の俺にとっては、アリオロン艦を近くで見られるめったにないチャンスだ。船外作業班に手を挙げた。
「戦艦にガキを乗せてるってアリオロンにばれてみろ、人権委員会に告発されるぞ。お前は奥で飯でも作ってろ」
即座に却下されて腹が立つ。
「アーサーだって船外作業班じゃねぇかよ、俺と同い年だぞ」
「あいつは少尉だ。問題ない」
「ちっ」
芋の皮むきが嫌いだ。やってもやっても終わらねぇし。うまくむけたっていう達成感もねぇ。俺がいつもと同じことやってる間にアーサーは敵艦に触ってやがる。ふてくされていたところへ、白衣を着たジェームズが調理場へ入ってきた。
「ザブリートさん、レイターを借りてもいいですか?」
ザブさんが答えるより先に俺は立ち上がった。
「へい、どこでも行くぜ」
「僕はザブリートさんに聞いているんだ」
ザブさんが奥から出てきた。
「何があった?」
「レイターに献血をお願いしたいんです」

「げっ、献血ぅ」
思わず声が出た。一気に出かける気が失せた。
「誰か怪我でもしたのか?」
「アリオロン兵です。彼らに純正地球人の血液なら輸血できるので」
よりによって敵かよ。この艦に純正地球人は俺しか乗っていねぇ。
「そうか。ここは大丈夫だ。これを飲んで行って来い」
ご親切にもザブさんは栄養ジュースを持ってきた。俺の逃げ場はなくなった。
医務室のベッドに横になる。俺の腕にジェームズが採血針を刺しながら言った。
「アリオロン人の血液を君に輸血することもできるようだ。適合してる」
「へぇ」
驚いた。基本的に純正地球人は純正地球人の血しか受け付けない。だから俺は自己血を保存している。
「何だか変な話だな。仲間からは血をもらえねぇのに、敵からはもらえるのかよ」
(2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」