銀河フェニックス物語<少年編>第十八話(1)身長はいつまで伸びる?
「えいっ、えいっつ!」
バルダンに殴りかかるレイターがいつになく気合が入っている。というか、やけを起こしているようだ。

部屋にやってきた時から様子がおかしい、と思いながらヌイは二人を見ていた。
「おらおら、どうした?」
バルダンもいつもと違うことに気づいている。
「勝つには練習するしかねぇんだろ」
「その通り、一に練習、二に訓練だ」
ピンと来た。将軍家の坊ちゃんと何かあったな。レイターは坊ちゃんを倒そうと、バルダンに格闘技を習っているが、何と言っても坊ちゃんは手ごわい。そう簡単じゃない。
ダンっ。
バルダンの蹴りがレイターの腹に入る。鈍い音とともにレイターの身体が吹っ飛ぶ。床に転がったまま動かない。
「お前さん、大丈夫かい?」
近づいて様子を見る。
「くっそぉ」
苛立った声を出しながらゆっくりと身体を起こした。ケガはなさそうだ。壁にもたれ、力なく膝を抱えて座っている。
「俺、きょうここで寝るから」
「坊ちゃんと何かあったのかい?」
「……」
目をそらして僕の質問を無視した。当たりだな。
バルダンは、
「勝手にしろ」
と、二段ベッドの上の段へと昇った。バルダンが了解したのなら、この部屋でレイターが寝るのは僕も構わない。
「僕のベッドで寝るかい? 僕は仮眠室へ行くから」
バルダンが怒った声を出した。
「ヌイ、そいつを甘やかすな」
レイターは僕を上目遣いで見た。
「俺、この船に乗るまで、路上で寝てたから平気さ。こんな温度管理されてるところ、極楽だぜ」
両親を亡くしたことは聞いていたが、浮浪児だったのか。
ばすっ。何かがレイターに向かって投げつけられた。毛布だ。
レイターが驚いた顔でベッドの上の段に目を向ける。バルダンは強面に似合わず優しい。
「ありがと」
消え入るような声が聞こえた。
朝、起きるとレイターはいなかった。あいつは猫のように音を立てずに動く。僕たちを起こさないように出て行ったな。
食堂で坊ちゃんを見つけた。
「アーサー、お前さん、レイターと喧嘩したのかい?」

「喧嘩はしてませんけど。あいつ、昨晩はヌイのところに泊まったんですね。迷惑をかけてすみません」
坊ちゃんは礼儀正しく頭を下げた。
「いや、迷惑じゃないけれど様子が変だった。何かあったんだろ?」
坊ちゃんは面倒くさそうにため息をついた。
「健康診断の結果が返ってきたじゃないですか」
「ああ、きのう僕のところにも来たよ」
それとレイターとどういう関係があるのだろう。
「私の身長が伸びているんです」
思わず坊ちゃんの頭を見る。僕よりさらに高くなっている。
「レイターが背が伸びたと喜びながら近寄ってきたのですが、私がそれ以上に伸びているのを見て、怒って部屋から出て行ったんです」
「ガキだなぁ」
「仕方ありません、十二歳ですから」
というお前さんも十二歳だろ、という言葉を飲み込んだ。 (2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」