銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (10)
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「えっ?」
「レイター!」
わたしが驚いて声を上げるのと、アーサーさんがレイターをたしなめる声が重なった。
一瞬、殺し屋と言う言葉を信じてドキッとした。どこかその言葉に通じる雰囲気を持った人だった。
「だって、職業軍人なんだぜ、連邦軍の」
連邦軍と言う言葉を聞いて気がついた。わたしがなぜこの男性となぜ会ったことがあると思ったのか。
「も、もしや、将軍家の殿下?」
レイターがにやりと笑った。
「ティリーさん、よくご存じだねぇ」

よくご存じも何も、ニュースを見ていれば連邦軍の総帥である将軍家の動静は普通に報道されている。
だから、会ったことがあるような気がしていたんだ。
アーサーさんは世襲である将軍家の跡取り、すなわち次期将軍で、高知能のインタレス人を母に持つ天才軍師。
ニュースだけじゃない。女性誌でも特集されるプリンス。そんな有名人が目の前にいることが信じられない。思わず姿勢を正してしまう。
「こいつんちは広くて船も停められるから便利なんだ」
将軍家の居宅は月の御屋敷と呼ばれる大豪邸だ。
下宿屋と言っていたけど、将軍家って不動産事業も手掛けているのだろうか。
アーサーさんが優しくわたしに声をかける。
「緊張なさらないでください。レイターとは古い付き合いなので」
わたしが持つ軍人のイメージとはかなり違う。

でも、不思議だ。この星は永世中立星なのだ。どうして将軍家の人がいるのだろう。恐る恐る聞いてみる。
「お仕事ですか?」
「ええ、軍の新型艦が5S-Lの認証検査を受けているので、ガーディア社の視察に来ました」
わたしの仕事とほとんど同じだ。遠い世界の人が急に身近に感じる。
優雅な手つきでアーサーさんがカップを口にする。
「マザーの淹れるコーヒーは本当においしい」
「本当ですね」
わたしも味わいながら相槌を打つ。

アーサーさんはレイターと同い年ということだけど、立ち居振る舞い全てが洗練されていて、大人だった。
それに引きかえ、レイターは何なの。
「やっぱ、コーヒー料金値上げして取るか。ティリーさんはお子さま料金でいいぜ」
一言一言に腹が立つ。
「止めてちょうだい。アーサーさんのような紳士を見習いなさいよ」
「俺が紳士じゃねぇみたいじゃん」
「紳士ってどういう人のことを言うかあなた知ってるの?」
* *
二人のやりとりを聞きながら、アーサーは懐かしさを感じた。こんな場面を前にも見た。
私はつい、からかいたくなった。
「こんなかわいいお嬢さんがレイターのガールフレンドとは驚きました」
レイターとティリーさんがコーヒーを吹き出し、同時に反論した。
「アーサー、ちょっと待て」
「ち、違います」
二人の過剰ともとれる反応が、お互いの関心の高さを示している。ということに気づいていない。
もう一押ししてみるか。
「初めてティリーさんを見た時、レイターの彼女というイメージが浮かんだもので」
「アーサー!」
椅子から弾かれる様にレイターが立ち上がった。
「どうかしたのか?」
「いんや何でもねぇ」
首を横に振りながらレイターが腰かける。レイターは私のメッセージを受け取ったな。
それにしてもあいつ。私のことを殺し屋呼ばわりするとは。
それを言うならお前だろう、という言葉を飲み込む。レイターが連邦軍の特命諜報部員であることは秘匿事項。私が反論できないのを知って挑発してきた。
相変わらず腹の立つ奴だ。 (11)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」