銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十三話(3) 気まぐれな音楽の女神
・第一話のスタート版
・第二十三話(1)(2)
練習が終わると、チャムールがチラシを取り出した。
「よかったらレイターと一緒に来て」
チャムールの実家の近くで毎年開かれている、地域の文化祭だという。
小さな公民館のホールが会場だった。入場料千リルと書いてある。
「金、取るのか?」

チラシをのぞきこみながら、レイターが言った。
「実費以外は、全額寄付することになってるの」
「なぁんだ、儲け話じゃねぇんだ」
レイターはすぐにお金の話に結び付ける。
「チャリティって書いてあるでしょうが。ねぇ、チャムール。彼氏のアーサーさんは来るの?」
わたしの問いにチャムールは、少し恥ずかしそうに答えた。
「ええ」
「あいつを呼んでも仕方ねぇよ。音楽的才能ゼロだから」
とレイター。
「アーサーが歌う訳じゃないからいいのよ」
チャムールが笑顔を見せた。
ピアノの前からリウミンさんが、レイターに近づいてきた。
「このピアノ、音が深くて響きもとてもいいわ。調律が素晴らしい。感動しました」

「俺、一級整備士だから」
と言ってレイターが笑った。
**
日曜日、フェニックス号でレイターと一緒にタイタンを訪れた。
ここは、文教地区で落ち着いた街だ。
会場の公民館の中は、子どもたちが走り回っていた。

学生が主催するゲームコーナーや、地元の人による軽食の出店に、人の列ができている。お祭りの手作り感が懐かしい。
チャムールが歌う大ホールをのぞいてみる。
三十分ごとに、演奏あり、演劇あり、いろいろな団体が次々と交代していく。催しのごった煮だ。
チャムールは白いブラウスに黒のロングスカート、合唱のステージ衣装を着ていた。
アーサーさんが普段着でチャムールの横に立っていた。

あまりに自然で、誰も将軍家の御曹司だとは気づいていない。
少し離れた場所に、将軍家秘書官のカルロスさんが私服で立っているのが見えた。

「私たちの出番は三十分後なの」
フェニックス号の練習では、第一楽章しか聞けなかったから楽しみだ。
チャムールたちの前の団体は、ドタバタなコントを披露していた。
あまり面白くない。観客は飽きたら勝手に出ていく。開演中もホールの出入りが自由だ。
コントが終わると会場のセッティングが始まり、グランドピアノが舞台に運び込まれた。
ホールの舞台には幕もなく、随分とゆるいイベントだ。
わたしとレイターとアーサーさんの三人は、会場の前の方に席を取った。
青い顔をしたチャムールが客席に走って来た。
「どうしたの?」

「リウミンが戻ってこないの」
「え?」
「昨日から揉めていたんだけど、こんな直前でいなくなるなんて。困ったわ」
チャムールによると、昨日の最終練習で、コーラスの音がうまくとれないところがあり、チャムールたちが、その部分だけパート分けを止めてユニゾンにしたい、とリウミンさんに提案した。
そして、きょう午前中のリハーサルで実際にユニゾンで歌ってみたところ、リウミンさんが「これは違う」と怒ってしまったのだという。
「リウミンと私たちのレベルが違いすぎていることは、わかっていたんだけれどね」
チャムールが肩を落とした。
こんなところで、厄病神が発動した。 (4)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」