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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十三話(4) 気まぐれな音楽の女神

第一話のスタート版
第二十三話(1)(2)(3

 午前中、大ホールでのリハーサルを終えた時のことだった。

 リウミンは、最悪な気分に襲われ、控室で大声を上げた。
「ユニゾンでは嫌よ! どう考えても、ここをはずすわけにはいかないわ」

リウミン白 後ろ目怒り

 私の曲の世界観が崩れていた。

 ハーモニーをなくすことは、どうしても譲れない。
 今のリハーサルを聞いて再確認した。 

「でも、きれいにハモれないのよ。同じ音なら、それらしく聞こえるわ」

n52 チャムール横顔困り顔カラー

 ハーモニーをやめたいというチャムールたちは、困り顔で私を見つめた。

 こんな気持ちじゃ演奏できない。

 楽譜を持って控え室の席を立った。
「待って」
 腕をつかむチャムールの手を振り払い、私は外へ出た。

 苛立った気持ちを落ち着けよう。

 あの季節の彩を表現するには、複層的なハーモニーが必要で、ユニゾンでは伝わらないのよ。
 楽譜を変えたいって、簡単に言わないで欲しい。


 若い学生たちが出店を出していた。
 いい香りがしてくる。楽しそうに鉄板で炒め物を作っていた。

 あのぐらいの頃、学生の頃は、何でもできると思っていた。
 私はセントラル音楽学院のピアノ科に在籍し、著名なピアノコンクールに何度も入賞した。
 
 そんな私が「ピアニストを止める」と言った時、教授陣は驚いて引き留めた。
 その全てを振り切って、私は作曲の道へと入ったのに。

 売り込んでも売り込んでも、作曲の依頼は来なかった。
 私は実家へ戻った。

 曲たちは、私の前に降臨してくる。それを次々と譜面に書きつけた。
 けれど、音楽の女神ムーサは、一向に私に振り向かなかった。

「あなた、これからどうするつもりなの?」と母に心配され、わたしは食いぶちを稼ぐためにピアノの教師を始めた。

 かつて、ピアノの天才少女として騒がれた私は、一流のピアニストになるに違いない、と期待されていた。

 母も、近所の人も私のことを憐れんでいる。
 折角、セントラル音楽学院まで卒業したのに・・・、と。


 そんな時だった。
 久しぶりにチャムールに会った。

 幼いころからチャムールのことは、よく知っている。
 彼女も私も神童と呼ばれて、人とは違う子供時代を送った

 合唱を楽しんでいる、というチャムールと、公民館の文化祭にオリジナル曲で参加しようという話で盛り上がった。
 私は夢中になって『四季と幼子たちの情景』を作り上げた。

 もし、私とチャムールがタイタンの普通の子どもだったら・・・。

チャムールとリウミン子供バックなし

 そんなことを想像していると、音符たちが自然に湧き上がってきた。

 チャムールたちが、音楽の素人だということはわかっている。
 そこも考慮して作ったのだ。歌えないはずはない。

 私はプロの作曲家。
 新たな音を紡ぎ、表の世界へ導き出すのが私の使命。

 でも、誰も私の作り出すものを理解してくれない。

 孤独と絶望が私を苦しめる。 チャムールを想ってこの曲を作ったのに・・・。 そのチャムールすらわかってくれなかった。


 子どもたちが金魚すくいを楽しんでいた。
 紙が破れて金魚がたらいに落ちる。

 まるで私みたいだ。どこにも進むことはできない。

「まもなく大ホールは、次の演目、合唱が始まります」 
 開演のアナウンスが聞こえた。私たちの番だ。
 戻らなくては。

 その時だった。

 音楽の女神ムーサが意地悪に微笑み、私にささやいた。
「戻る必要はないわ。不完全なものを客に聞かせることはないのよ。リウミン、あなたがいなければコンサートはできない。お前の存在の大きさを、チャムールたちに知らしめておやり。お前の世界を不完全にした罰だよ」と。

 私の魂はムーサに捧げている。ムーサの言うことは絶対だ。


**


「まもなく大ホールは、次の演目、合唱が始まります」 
 開演のアナウンスが入った。
 
 ティリーは何か自分にできることが無いだろうか、とチャムールを見つめた。

n14ティリー振り向き@3タートル

 リウミンさんはまだ戻ってこない。

 チャムールは肩を落としてアーサーさんと話している。
「仕方がないから、アカペラでやるわ。単なるわらべうたになっちゃうけれど」

 と、その時、アーサーさんがレイターを見て命令口調で言った。
「レイター、お前が弾け」

n32上向き@カーデ口開き逆カラー

「あん? 俺?」
 自分で自分を指さすレイターを見て、チャムールが肩をすくめた。

「お願いしたいところだけど、楽譜もないのよ。ピアノ伴奏譜はリウミンしか持っていなくて」
 いやいや、楽譜があったとしても、あんな難易度の高い真っ黒な楽譜、初見では弾けない。

 アーサーさんが続ける。
「お前、練習聞いたんだろ」
「第一楽章しか聞いてねぇぞ」

練習@口への字2

「わかっている。できないことは要求していない。第一楽章だけでいいから時間を稼ぐんだ。その間にカルロスを使ってリウミンさんを探し出す」

 アーサーさんは勝算があることしか言わない。

 そうか、伴奏曲なのだ。リウミンさんと同じように弾けなくてもいい。
 わたしもレイターにお願いした。
「チャムールのために頼むわ」
「高いぞ」     (5)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」