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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十三話(5) 気まぐれな音楽の女神

第一話のスタート版
第二十三話(1)(2)(3)(4

「謝礼としていくらか出してもらえれば、文句はないだろう」
 アーサーさんの言葉に、レイターは渋々承諾した。
「ちっ、やりゃあいいんだろ」


 観客席の照明がゆっくりと落ちて暗くなった。

 わたしたちは舞台の袖へと移動した。
 ステージにライトがあたる。

 チャムールたち六人が、ステージの真ん中に並び一礼をした。

 レイターが舞台の端に置いてあるグランドピアノに座る。
 無理言って頼んだけれど、大丈夫だろうか。

 よく考えたら、わたしはレイターが音階を弾いているところしか聞いたことないのだ。

 緊張でドキドキしてきた。

 レイターが前奏を弾き始めた。

n205レイター横顔@2逆

 あのピアノ協奏曲のような旋律が流れ出す。
 ほっとすると同時に驚く。

 人間業とは思えない、超高速トリル。
 フェニックス号で聞いた『はる』そのままだ。

 隣のアーサーさんは落ち着いている。
「レイターは、耳で得た情報を楽器で再生することができますから」

 春の情景。
 優しい風がそよそよと花びらを揺らす。

 チャムールたちのソプラノがわらべうたを響かせる。 追いかけるアルトが美しいハーモニーを織りなす。

 そして、レイターの超絶技巧な伴奏。


 第一楽章は五分しかない。聞き惚れている場合ではなかった。
「アーサーさん、急いでリウミンさんを探しにいかないと」

n36@3タートル口横開く

 あせるわたしにアーサーさんは一点を指さした。
「大丈夫です。カルロスが見つけました。彼女ならあそこにいます」
 アーサーさんが暗い観客席の後方を示した。

  リウミンさんが、呆然とした顔で扉の前に立っているのが見えた。

「彼女はいなくなることで、自分の存在を示したかったのでしょう。でも、代わりにレイターが弾いてしまった」 


 アーサーさんと一緒に、観客席の脇を通ってリウミンさんのもとへ急いだ。

 レイターの演奏は見事としか言いようがない。

ピアノを弾く手3バックなし

 オクターブの激しい跳躍。
 春の嵐をピアノが表現する。

 耳でコピーしたものを再現しているとは思えない。
 というか、楽譜を読み込んで長期間練習したとしても、こうは弾けない。

 ステージを凝視しているリウミンさんに、顔見知りであるわたしが小声でそっと声をかける。
「リウミンさん。戻ってください、お願いします」

 リウミンさんの顔に表情がない。
「もう私には存在意義が無いわ。私がいなくてもステージは続く・・・」

リウミン横顔

 チャムールたちのわらべうたが、サビに差し掛かる。

 演奏中だけれど、隣のドアから子どもたちが出入りする。
 合唱がホールの外まで響く。
 興味を持った人たちが、ドアから次々と入ってきた。

 アーサーさんが静かに言った。

「リウミンさん、貴方は作曲家です。貴方が音を表の世界に引き出してあげなければ、まもなく、この曲は未完のまま終わってしまいますよ」

n30アーサーカーデ微笑カラー

 リウミンさんは、泣きそうな顔でアーサーさんを見た。
「そうよ私は作曲家。演奏ではなく作曲の魅力に取り憑かれたのよ。でも、誰もわかってくれない」
「貴方の曲、素敵ですよ。観客の顔を見てご覧なさい。貴方が存在しているから、貴方の作品が人々の心に届くのです」

 子どもたちが、チャムールたちのハーモニーに合わせて、わらべうたを口ずさんでいた。
 大人たちは懐かしそうに身体を揺らしている。

 そして、間奏。
 レイターのピアノはプロのリサイタルみたいだ。

ピアノ@

 不思議な空間だった。

 素人のチャムールたちのわらべうたと、レイターの高度な技術が調和している。
 観客が心をつかまれ聴き入っている。     (6)へ続く

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