銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十三話(6) 気まぐれな音楽の女神
・第一話のスタート版
・第二十三話(1)(2)(3)(4)(5)
わたしとアーサーさんで、リウミンさんを舞台の袖へ連れてきた。
ちょうどその時、第一楽章『はる』が終わった。曲が終わった、と勘違いした人たちから拍手があがる。
「さあ、リウミンさん舞台へ」
わたしがうながす。
けれど、リウミンさんは悲しそうに首を横に振った。
「私はチャムールたちを裏切ってしまったのよ。同じステージに立つ資格は無いわ」
リウミンさんはピアノへ向かおうとはしなかった。
その時、舞台からレイターがやってきた。
すっ、とリウミンさんの手を取る。
あまりに自然な動きに、リウミンさんは操られた人形のように舞台へと歩きだした。

リウミンさんの逡巡を、レイターのエスコートがきれいに断ち切った。
レイターのよく通る声が会場に響き渡る。
「『四季と幼子の情景』の生みの親、リウミンさんです」
拍手が一段と大きくなった。
「第二楽章からは、リウミンさんと一緒に、銀河一の音楽をお楽しみください」
レイターが流れるような動作でイスを引く。
リウミンさんは うながされるままにピアノの前に座った。
拍手が止み、一瞬の静寂。
そして、リウミンさんの指先から美しい旋律が流れ始めた。
レイターは相変わらず女性の扱いがうまい。
あんな風にエスコートされたら、わたしだってピアノの前に座ってしまったかも知れない。
レイターは音もなく舞台の袖へと戻ってきた。
「お疲れさま」
「美人のエスコートだから疲れねぇけどな」

と言って笑った。
ほんとにこの人は。
*
わたしたちは観客席で続きを聞いた。
第二楽章の『なつ』は、『はる』から一転、力強い日差しと波のイメージだ。
難易度の高いピアノ曲とチャムールたちの歌声が交わる。
ああ、わかった、すべて計算されているのだ。
上手すぎない合唱が、わらべうたっぽさを表現している。
『あき』、『ふゆ』と続く『四季と幼子の情景』はソラ系の四季を音で着色し、描きだしていた。
演奏が終わると、子どもも高齢者も会場中の観客が立ち上がって拍手した。
スタンディングオベーション。
コンサートは大成功だった。
*
慌ただしくステージのセットチェンジが始まり、わたしたちはチャムールたちの控室に顔を出した。
「チャムール、みんな、ごめんなさい」
リウミンさんが涙を流しながら頭を下げていた。
「リウミン、戻ってきてくれたじゃない」
チャムールが泣きながら、リウミンさんをハグした。

「私たちこそごめんなさい。きょう、難しいパートをコーラスで歌ってわかったの。観客との一体感が得られたのは、あのハーモニーだったからよ。ありがとう。リウミンのおかげだわ」
ほかのみんなもうなづく。
「そうよ、楽しかったわ」
無事に終わって本当によかった。
メンバーではないわたしも、胸が熱くなる。つられて涙が出そうだ。
隣にいた、レイターがつぶやいた。
「謝礼って、いくらもらえんのかな?」
わたしはレイターの服を引っ張った。
「やめなさいよ」
「あん?」
「恵まれない人へのチャリティー募金なのよ」
「アーサーが、謝礼出してもらえって言っただろ」
「とにかく、もらっちゃだめ」

わたしは声を荒げた。 (7)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」