銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十三話(7) 気まぐれな音楽の女神
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「あなたは一体何者なの?」
気持ちが落ち着いたリウミンさんが、レイターに向かって聞いた。
「銀河一の操縦士だぜ」
「どうして、弾けるの? 私の曲が」
「あん?」
「あの曲は、ピアノコンクールの課題曲並みの難易度なのよ。それを楽譜も見ないで、ミスタッチもせずに弾くなんて、セントラル学院のピアノ課の生徒だってできないわ」
「ピアノは音ゲーだろ」

というレイターの言葉に思わずわたしは叫ぶ。
「違うでしょ!」
ピアノの演奏は音楽ゲームとは違う。
「俺、ノーミスでクリアするのが好きなんだ」
と言ってレイターは笑った。
「俺のお袋もセントラル音楽学院出てるんだぜ」
「そうなんですか?」
リウミンさんが身を乗り出す。
「ピアノは毎日弾けって、お袋に言われてた」
レイターがフェニックス号でハノンを超高速で弾いていたことを思い出す。前にレイターのお母さんは亡くなったと聞いた。
「お袋は、ピアノの教師やって、街で歌ってた。音楽の世界を楽しんでた。ムーサに愛されてたからな」
「ムーサって?」

わたしは聞いた。
「音楽の女神さ。ムーサはさあ、人を幸せにする一方で、気まぐれで残酷なんだ」
リウミンさんがうなづいた。
「そうね。ムーサは、私の曲なんて見向きもしないわ。嫌われてるのよ」
「いや、あんたはムーサに愛されてる、あの合唱曲、すんげぇ良かった。俺、普段はピアノで曲弾かねぇけど、弾きたくなった。きっとムーサはチャンスを引き連れて、微笑みかけてくる」
「ありがとう」
リウミンが笑顔をみせた。
わたしはレイターに聞いた。
「レイターはどうして普段は曲を弾かないの?」
「あん? お袋に言われたからさ。人前でピアノ弾くなって」
「どうして?」
「下手だからだろ」
いや、下手じゃない。
変なお母さんだ。
毎日練習しろと言いながら、人前で弾くな、って言うなんて。
*
帰り道、チャムールとアーサーさん、わたしとレイターで並んで歩く。
チャムールが感心していた。
「レイターがあんなにピアノが上手だとは知らなかったわ」
アーサーさんが応じた。
「レイターの耳は、混線した通信も聞き分けることができたからね。音階暗号譜が解読できて、重宝したよ」
「ふん。俺はあんたのためにやってたわけじゃねぇよ。それにしても、チャムールさんもつまんねぇだろ?」
「え?」
「あんなに歌がうまいのに、アーサーと一緒に歌えなくて。こいつ、絶対に歌わねぇんだ。連邦軍歌だって、歌ってるふりさ」
チャムールがアーサーさんに聞く。
「将軍家は音楽は嗜まないの?」
「我が家は音楽より武芸が優先されるからね。学ぶ機会がなかったんだ」
「歌うの嫌いなの?」
アーサーさんが困った顔をしている。

レイターが茶々を入れる。
「アーサーは音痴なんだよ。だからチャムールさん。俺と一緒にデュエットしようぜ」
むっとしながらアーサーさんが反論した。
「私は一般人と同じくらいの能力はある。お前が音楽に秀でているせいで、苦手と錯覚していただけだ」
アーサーさんらしくない言い訳がおかしい。
「じゃあ、歌ってみろよ」
「そうだな。来年はコンサートに参加するか」
「へ?」
レイターが飛び上がって驚いた。 最終回へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」