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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十三話(最終回) 気まぐれな音楽の女神

第一話のスタート版
第二十三話(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7

「冗談だ」
 アーサーさんはすました顔で言った。
「いや、あんたが出れば金が集まる。儲かるぞ」

 というレイターの頭を、アーサーさんは手にしていたパンフレットで、目にも止まらぬ速さではたいた。
 スパーン、と気持ちいい音がする。

「痛ってぇ。本気でぶつなよ」
 とレイターはぼやいたけれど、あの速さじゃないとレイターがよけるからだ。

 レイターとアーサーさんの漫才のようなやりとりを、チャムールは幸せそうに笑って見ていた。  

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 チャリティコンサートから一か月が経った。

「リウミンに作曲の依頼が、来るようになったのよ」
 とチャムールが嬉しそうに報告してきた。

 あの日、タイタンの公民館の催しは、ずっと情報ネットワークで生中継されていたのだ。
『四季と幼子の情景』は、超難しいピアノ曲と、誰でも歌えるわらべうたの異色の組み合わせということで、一気にトレンド急上昇した。

 音楽の女神『ムーサ』が、リウミンさんに微笑みかけたのだ。



 リウミンさんが、テレビ番組に呼ばれていた。

リウミン白 前目微笑み逆

 その様子を、フェニックス号の居間でレイターと見ていた。

 ピアノが上手なタレントたちが、第一楽章の『はる』を間違えずに弾きとおせるか、という企画。
 事前に楽譜が渡されていたけれど、ノーミスで弾けたタレントは誰もいなかった。

 わたしは素直に感心した。
「レイターすごいわね。あなた、どうして耳コピーであんなに弾けたの」
「あん? 俺、アーサーと船に乗ってた頃、音階暗号譜を解いてたからな」
「音階暗号譜って何? この間、アーサーさんも言っていたわよね」
 
「宙航座標の暗号が和音で送られてくるんだ。次々と来る音を聞き取ってキーボード入力するのさ。戦闘中にこの解読ミスったら、船に乗ってる全員死ぬから、マジ緊張」

逆振り向き後ろ目にやり逆

「こ、怖いわね」

「その代わり、暗号通信士は給料がいい」
「それであなたやってたのね」
 納得する。 
「音階暗号譜はアーサーも解けねぇんだ。あいつ、理論は完璧だったけど実技が追いつけなかったんだぜ。けけけけ」

少年横顔後ろ目カラー

 バカにした顔でレイターが笑った。

 笑ってはアーサーさんがかわいそうだ。
 レイターには音楽的才能があるのだから。

 レイターは、居間に置いてあるギターを手にして曲を弾きだした。
 リストのラ・カンパネラだ。
 美しく速い指使い。思わず聞き惚れる。
 わたしがリストを好きだ、と言うのを覚えてくれていたんだ。

「ねえ、ピアノでも弾いてくれない?」
「曲は弾かねぇ、って言ったろ」
 ギターで弾くのは問題ない、ということなのだろうか。

「いっそ、ピアノのコンクールとかに出てみたらいいんじゃないの」
「俺は銀河一の操縦士だぜ。ピアニストじゃねぇし」

「でも、賞金だってもらえるかもよ」

t23@2色やや驚く.

「あんた、リウミンさんを見ただろ。コンクールに出てくる奴ら、って魂をムーサに売ってるんだ。普通じゃねぇんだぜ」

「じゃあ、どうしてレイターはピアノの練習をしてるの?」
「あん? ピアノの練習なんてしてねぇよ」

 嘘だ。あの後、気がついたのだ。
「運指練習してるじゃないの」
 
 レイターは格納庫で船をいじっている時、添加剤をなじませてる間とか、空いた時間に超高速でハノンを弾いているのだ。

ピアノを弾く手

「ノンノン。あれは操縦の練習さ」
「は?」
 冗談はやめて、って言おうとして気が付いた。

「もしかして、宙航座標をキーボード入力するための?」
「当たり。俺はムーサじゃなくて宇宙の神さまに魂を売ってるからな。コンマ一秒だって素早く、かつ、ミスしねぇで座標入力するためには、訓練が必要なのさ」
 レイターが笑った。

 自らの魂と与えられた時間を、残らずその世界の神さまに捧げることで、一流のプロが作られていく。
 この人は、生活の全てが宇宙船の操縦に繋がっている。
 
 そして、ひるがえって、自分にはそこまで打ち込めるものがない。
 悔しいけれど、何もないわたしには、レイターがまぶしく見えた。   (おしまい)
第二十四話「展覧会へようこそ」へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」