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銀河フェニックス物語<少年編>第十七話(2)知らぬが仏

銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十七話「知らぬが仏」(1)
<少年編>マガジン

「まあ、自業自得というか、あの爆発で生き残ったとしても、どのみちすぐに殺される運命だったんだ。銀河警察は少年を保護せずマフィアに突き出そうと動いていた」
「ほう」
「お前、任務じゃないというのなら、これを調べてどうする気なんだ?」
「どうもせんよ。俺の思いつきだ」
 俺の答えに同期は肩をすくめた。
「相変わらずだな。一つ、気になることがある。レイター・フェニックスの母親の住民登録が巧妙に偽造されていた。病死したのは間違いないが、本人特定ができなかった。マフィアがやったのかも知れないが、それにしては手が込み過ぎている」
「ふ~ん」
 特命諜報部が追いかけられないとは相当だな。
「アレック、お前、本当は何か知っているんだろ。お前のアレクサンドリア号から住民登録データベースにアクセスがあったことはわかっているんだ」
 おいおい、何だと。俺は驚いたが顔には出さずに答えた。
「ありがとよ。俺の気まぐれにつきあってくれて。じゃあな」
 ぷつりと通信回線を切った。俺の艦からアクセスがあっただと。アーサーか。あいつしかいないな。

 あいつは事情を知っている。だから、この艦にレイターを残すよう進言した。レイターの奴がモリノの好条件になびかなかったのもそれが理由か。
 それにしても、うまいこと生き延びたもんだ。

 住民登録が偽造されていたという母親は何者なんだ。裏社会の帝王の愛人か? ヌイの話ではマリアと言う名前の音楽家だったな。情報ネットワークで検索をかける。
 地球にあるピアノ教室が生徒を募集中という古いテキスト情報が一件だけ出てきた。マリア・フェニックスの名前はセントラル音楽院の学籍名簿にもヒットしない。住民登録偽造で学歴詐称の母親か。

 興味が湧いた。レイターに艦長室まで食事を運ばせた。
「お待たせぇ。俺の愛情たっぷりドリアだぜ」
 十億リルの懸賞金が駆けられて殺されかけたとは思えない相変わらずのお調子者だ。
「お前、歌が上手いな。感謝祭の歌姫はびっくりしたぞ。音楽教師のお袋さんに教えてもらったんだって?」
「えへへ、そうだぜ」
 うれしげに答える様子は普通の十二歳だ。
「ヌイに聞いたが、お袋さんは名門のセントラル音楽院を出てるそうじゃないか」
 レイターは誇らしげに笑顔を見せた。
「すごいだろ」
「お袋さんがそう言ってたのか?」
 急に警戒した目をした。
「違う」
「じゃあ、誰かから聞いたのか?」
「……」
「まあ、別にいいけどな」
 レイターがゆっくりと口を開いた。
「俺、偶然見たんだ」
「何を?」
「セントラル音楽院の学生証。お袋の顔写真だった」
「ほう」
「けど、お袋に口止めされた」
「口止め?」
「誰にも言うなって。俺の住んでたところは貧乏地域だから、授業料が高いって思われると生徒が来ないからってさ」
「まあ、そうだな。セントラル音楽院の出身だって言えば、いくらでもぼったくれるからな」
「その学生証が遺品の中になかったんだ。お袋のたった一枚の写真だったのに」

 俺の直感が騒ぐ。
「お前の父親は誰なんだ?」
「アーサーにも聞かれたけどさ、俺、名前も何も知らねぇんだよ。嘘じゃねぇぜ。俺が生まれる前に死んだって聞いた」
「ふ~ん」
 本当に死んだかどうか怪しいな。別れた男に内緒で産んだということだってある。
「親父は銀河一の操縦士だったんだ。すごかったって母さんがいつも言ってた」
「それで、お前、銀河一の操縦士になりたいのか」
「へへ、まあな」
 十二歳らしい照れた笑いをみせた。銀河一の操縦士か、マフィアの跡取りよりは健全だな。
(3)へ続く


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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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