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銀河フェニックス物語<少年編>第十七話(3)知らぬが仏

銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十七話「知らぬが仏」(1) (2) 
<少年編>マガジン

 レイターが部屋を出ていった後、ドリアを口へ運ぶ。どうも落ち着かんな。『銀河一の操縦士』というあいつからいつも聞かされているフレーズが俺の記憶の奥深くを揺らす。
 昔、俺の近くにもいたぞ。『銀河一の操縦士』と呼ばれた人物が。

 あれは何年前だ。あの御方が突然の事故で亡くなったのは。自らの命を犠牲にして少女を救った行為に銀河中が悲しみに包まれると同時に、連邦の権力と資産の行方に騒然となった。
 連邦加盟星系のすべてに記帳所が設けられ連邦葬が行われた。あれから十二年か。「俺が生まれる前に父親が死んだ」と言うレイターも十二歳。まさか。
 脳の中が蠢く。
 あの御方について噂が流れたことがある。ご家族に恋愛を反対されていると。その相手は確か音大生だった。
 おいおい。手にじっとりとした汗がにじみ出る。
 あの御方の息子が生きていたなんて話になったら、これは大事件だ。もう、世襲の後継者は正式に育てられているんだぞ。単なる財産分与という話じゃ済まない。
 これ以上の詮索は止めろ。俺の直感が囁く。俺の勘は当たる。もう、止めるんだ。

 しかし、好奇心という奴は簡単には抑え込めない。
 俺が将軍家付きだった頃のアルバムを開く。将軍とあの御方は親友だった。世襲の辛さを二人で分かち合っているように見えた。あの御方は軍に入る必要はなかったのに、卒業後、経験を積みたいとご家族を説得した。将軍が後ろから入隊に手を貸した。俺にはモラトリアムにしか見えなかった。
 戦闘機の前に四人で並んだ写真。ペアを組んで模擬戦で対戦した時のものだ。俺とジャック将軍、あの御方とお付きのワラワロ。お坊ちゃん方の遊びにつきあうつもりだったあの日、俺は考えを改めた。何が起きたかわからないうちに、俺はあの御方に撃墜された。非凡な戦闘機乗りの才能。将軍は戦力としてあの御方を軍へ引き入れていた。
 
 『銀河一の操縦士』と呼ばれるようになったあの御方は軍の大会で負け知らずだった。だが、実戦に行くことはなかった。ご家族が止めていた。許されていたのは定期航路のパトロール。安全な任務のはずだった。
 だが、あの御方は命を落とした。

 写真の中のあの御方を見る。髪も瞳もレイターと同じ色をしている。いや、同じ地球人だ。似ていて不思議はない。
 確かめずにいられない。ワラワロに連絡を入れた。

「アレック、お前から連絡とは珍しいな」

 厳しい目つきは変わらないが、少し老けたな。俺は社交辞令を飛ばして本題に入った。
「なあ、ワラワロ、あの御方に当時、音大生の彼女がいただろう。彼女の名前知ってるか?」
「もちろんだ。俺はあの御方の警護を務めていたんだからな」
「教えてくれないか?」
 ワラワロは不審げな顔で俺を見た。
「どうしてだ」
「俺の気まぐれだ」
「相変わらずだな。まあいい、昔の話だ。マリアだ。マリア・ドロテア嬢だ」
 予想通りだ。レイターの母親と同じ名前だ。だが、地球人にはよくある名前だ。俺は必死に平静を保った。
(4)へ続く


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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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