銀河フェニックス物語<少年編>第十七話(4)知らぬが仏
銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十七話「知らぬが仏」(1) (2) (3)
<少年編>マガジン
「その、マリアという彼女はどうなったんだ?」
「わからん」
「わからんとは?」
「あの御方が最後のパトロール任務に出ている間に退学して、行方をくらました」
「退学したのはセントラル音楽院か」
「そうだ」
また、結びついた。絡みとられていく。レイターが見たという学生証は本物だったに違いない。俺は今、自分がどんな顔をしているか、冷静を保てているのかわからない。ワラワロがじっと俺を見つめた。
「お前の気まぐれは俺もよく知っているが、この件はこの位にしとけよ。彼女の行方は銀河警察の公安が追ったがわからなかった。亡くなったと判断されて住民登録も破棄されている。アレック、深追いするな。もう終わった話だ。俺は今、俺の務めを果たしている」
ワラワロは連邦軍を辞めて、あの御方の後継者の警護を務めている。
「不思議なもんだな。俺はジャック将軍の息子を預かっているし、ワラワロがお仕えしている若様も、今、十二歳か」
ワラワロは怖い顔をさらに怖くした。
「もう一度忠告しておく。深追いするな。お前の命に関わるぞ」
「ああ、わかってるよ。邪魔したな」
俺は長いため息をついた。どうするよ。アレック・リーバ。面白い拾い物したとか言ってる場合じゃないぞ。

あの御方ならできる。音大生の彼女に架空の人物マリア・フェニックスの住民登録を与えることが。頭の切れる方だった。その上、銀河連邦の完全中枢に身を置かれた方なのだ。
おそらく彼女の妊娠を知って、駆け落ちを考えられたのだろう。家も身分もすべて捨てて、全く別の人間として、マリアとレイターと家族になって、新たな人生を歩もうとしておられたのではないか。
ちょうどあの頃、ジャック将軍が周囲の反対を押し切ってインタレス人と結婚し、相当なバッシングを受けたことをあの御方は近くで見ていた。
俺の直感は当たる。

直系の存在は世襲制の銀河連邦を政治と経済の両面から揺るがす大スキャンダルだ。
ワラワロは最後何と言った? 俺の命に関わるだと。警告だ。あの家はご存じという事か。あの御方に子どもがいたことを。公安警察が動いたと言ったな。すでにあの御方の実の息子の存在は邪魔でしかない。見つかったら間違いなく消されるな。
ダグ・グレゴリーはどうだ? 知っていたら懸賞金を懸けて殺そうとはしないはずだ。利用価値がいくらでもある存在だぞ。
おいおい。レイターはマフィアと公安警察の両方から命を狙われているってことか。
アーサーは気づいているのか? いや、住民登録の偽造に気づいても、情報を結ぶ線が無ければ天才でも見抜けまい。
俺の直感が騒いでいる。見て見ぬフリをせよと。俺の勘は外したことがない。ワラワロの言う通りだ。これ以上は深追いしない。
俺は俺の任務を遂行する。
あの御方が作り出した住民登録は特命諜報部でも追えなかったのだ。誰にも気づかれることはないはずだ。そして、レイターは、どのみち死人なのだ。
俺の腹は決まった。俺は何も知らない。知らぬが仏だ。
(おしまい)
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」