見出し画像

肩の骨折・手術前後を乗り切る「自宅生活完全ガイド」三角巾・バストバンド・寝方・着替えのコツをナースが伝授

「骨が折れています」
固定具をつけたまま帰宅した、その夜から始まります。

「本当にこのままで大丈夫?」
「三角巾、合ってる?」
「夜、痛くて眠れない」
「着替えがこんなに大変だと思わなかった」

病院では教えてもらえなかった。
でも帰った瞬間から始まる、切実な困りごと。

私は整形外科の外来・病棟で、
毎日この「帰宅後の不安」を抱えた患者さんと向き合ってきました。

この記事は、その答えです。

肩の骨折だけでなく、
腱板断裂の手術前後の方にも使える「教科書」として書きました。


【この記事を書こうと思ったきっかけの患者さんがこちらです】



この記事で手に入るもの

✔ 三角巾の正しい付け方と「黄金の高さ」
✔ バストバンドを正しく使う方法
✔ 着替えが劇的に楽になる「脱健着患」の実践
✔ 夜の激痛を和らげるクッションの使い方
✔ 今すぐ病院へ連絡すべき危険なサイン
✔ 「固定しすぎ」が引き起こす意外なリスク
✔ 手術後も続く固定生活を乗り越えるコツ


【自己紹介はこちら】



1.なぜ「固定」が治療の主役なのか


三角巾やバストバンドを見て、
「ただ吊っているだけでしょ」と思っていませんか。
違います。これは立派な「治療」です。


🟨🟨腕の重さは想像以上🟨🟨

三角巾は上肢の重量を支え、上肢の動きを制限するが、肩関節の動きは妨げない。
肩関節の動き(特に内旋および外旋)も制限する必要がある場合は、固定帯を追加すべきである。


片腕の重さは体重の約5〜6%と言われています。

体重60kgの方なら、片腕だけで約3〜3.6kg。

固定せずにぶら下げると、
3kg以上の重りが骨折部を常に引っ張り続けている状態になります。

これが痛みと腫れの原因です。


🟨🟨筋肉が骨を引っ張る🟨🟨

肩の周りには大きな筋肉が複数あります。
骨折すると、この筋肉の張力で骨が引っ張られ、
ズレ(転位)が大きくなることがあります。

固定は、この筋肉を「お休みさせる」ために不可欠です。

三角巾の役割:
→ 腕の重さを首と体で分散させる
→ 腕の動きを制限する

バストバンドの役割:
→ 腕が体から離れて「ぶらぶら」するのを防ぐ
→ 肩の内旋・外旋を制限する
→ 骨折部のズレを防ぐ

この2つがセットで「簡易デゾー固定」として機能する。



🟨🟨手術前も、手術後も🟨🟨

固定生活は手術で終わりません。
手術後も数週間、三角巾での固定が続きます。

「手術前の固定の過ごし方」が術後のリハビリの質にも影響します。
正しい使い方を知っているだけで、この期間のつらさが大きく変わります。



2.三角巾の極意――「黄金の高さ」とは


「ただ吊るすだけ」では首が凝るだけです。
高さの調整が全てを変えます。


🟨🟨三角巾の正しい付け方🟨🟨

① 骨折している側の腕を、
  自分でもう片方の手で支えるか、
  机やクッションに乗せて安定させる。

② 三角巾の頂角(90度の角)を
  骨折側の肘に当てる。

③ 三角巾の長い辺が胸の前に
  まっすぐ来るように置く。



④ 足の方に伸びている三角巾を
  腕を包むようにして首の後ろへ持っていく。



⑤ 首の後ろで両端を結ぶ。


⑥ 肘の部分の角を結んで処理する。


❤️‍🩹❤️‍🩹重要❤️‍🩹❤️‍🩹
手首が三角巾の外に垂れ下がらないようにする。
三角巾が短すぎると、尺骨神経が圧迫され手関節が三角巾の外に垂れ下がることがある。
これが続くと手首〜指のしびれの原因になります。



🟨🟨黄金の高さ🟨🟨

手首の位置が「おへそより少し上」に来るように調整してください。


これより低い場合:
→ 腕の重みが肩にかかる
→ ズキズキした痛みが続く

これより高い場合:
→ 肩が不自然に引き上げられる
→ 首・肩のこりが悪化する

おへそより少し上:
→ 腕の重さが最も分散される
→ 肩への負担が最小になる



🟨🟨首の負担を減らす工夫🟨🟨

紐が首に食い込むと、頭痛や肩こりの原因になります。

解決策①:
紐の間にフェイスタオルを挟む。
これだけで食い込みが劇的に改善する。

解決策②:
たすき掛け(片側を脇の下を通して結ぶ)にする。
首への圧迫がゼロになる。
長時間つける方に特におすすめ。


🟨市販のアームスリングという選択肢🟨

病院の三角巾は自分で調整が難しい場合があります。

機能的な上肢固定帯を使用することで、患者さん自身でも簡単に着脱することができ、必要な上肢の肢位が保ちやすく、腕の重みによる肩への食い込みも最小限に抑えることができます。

特に一人暮らしの方で三角巾の着脱が困難な方に喜んでもらえます。

手術後まで長く使うなら、市販の専用アームスリングを一つ持っておくことをおすすめします。



ここまでが無料でお読みいただける部分です。
第3章からは「バストバンドの正しい使い方」
「夜の激痛を和らげる具体的な方法」
「固定しすぎが引き起こすリスク」を全部お伝えします。


3.バストバンドの役割と正しい使い方

ここから先は

2,708字

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?