「幕末太陽傳」川島雄三~パワフルな人間喜劇・群像劇の傑作~
写真引用(C)日活
川島雄三監督の傑作であり、日本映画史に残る群像喜劇だ。舞台は幕末の品川遊郭。オープニングは、現代の品川の街が映し出され、ナレーションでかつてこの東海道の最初の宿場町に遊郭があったことを伝えている。川島雄三監督は、時代劇を扱いながら現代の映像を挿入する手法は、『雁の寺』(1962)のエンディングでもやっている。物語のベースは古典落語の「居残り佐平次」。脚本に川島雄三、田中啓一ほか今村昌平も入っていて、今村は助監督もやっている。
改めて見たが、やはり見事な群像劇だ。舞台となる遊郭・相模屋(実在したらしい)で事件・トラブルが次々と起きる。豪華な役者陣が多数登場しながら、それぞれのキャラクターも生き生きとしており、中心人物の居残り佐平次・フランキー堺がテンポ良く台詞を喋りながら遊郭の中を走り回る。この佐平次の駆け回るアクションが効果的だ。見事な物語の推進役を果たしている。一文の金も持ち合わせていないにも拘わらず、仲間たちと飲めや歌えやの大騒ぎ。結局は居残りながら、遊んだ分を働くことになるお調子者の佐平次は、器用に遊郭内で起きるトラブルを次々と解決してく。そしていつの間にか、みんなから頼られるほどの存在になる。花魁役の南田洋子と左幸子は張り合って喧嘩ばかりしている。南田洋子が若く可愛らしくてビックリ。客たちの気を惹きながら部屋から部屋へと顔を出し、男たちを手玉に取っているしたたかな花魁を演じている。左幸子と中庭で大立ち回りの大喧嘩もある。貸本屋のあばた面の金造(アバ金)役の小沢昭一と左幸子は心中騒ぎを起こすが、金造を海に突き落としてさっさと左幸子は止めてしまう。ところが海が浅かったために金造は幽霊になって化けて出てくる顛末もある。
時は幕末、尊皇派と攘夷派が争っていて、異人たちとのトラブルも耐えない。遊郭に長期逗留している客に高杉晋作がいて、石原裕次郎が演じている。その長州藩の仲間に二谷英明、小林旭らがいる。二谷英明が異人との揉め事で落とした懐中時計を、佐平次が拾ったことから物語が展開していく。その他、相模屋主人の金子信雄、妻の山岡久乃、若旦那が梅野泰晴。若旦那は博打に夢中で、女中のおひさ(芦川いづみ)と駆け落ち騒ぎ。女中のおひさの大工の父(植村謙二郎)は、博打の借金返済のため娘を相模屋に売ったろくでもない男。さらにハーフのような顔立ちの若衆に岡田眞澄、やり手婆の菅井きん、南田洋子の客に殿山泰司、同じ花魁の客の息子(加藤博司)と鉢合わせというトラブルも起きる。そんなトラブルを次から次へと佐平次はしたたかに裏で手を引き、化かし合いで解決したように見せ、小銭をせしめる。
イギリス公使館焼き討ちを画策している高杉晋作に佐平次は、「どうせ旦那がたは、百姓町民から絞り上げた御上の金で、やれ攘夷の勤皇のと騒ぎまわってりゃそれで済むだろうが、こっちとりゃ町民は、そうはいかねぇんだ。てめぇ一人の才覚で世渡りするからには、首が飛んでも動いてみせまさぁ」と啖呵を切る。バイタリティ溢れる町民の強さ、化かし合いながらもしたたかに生きていく花魁たちのふてぶてしさが描かれている。庶民のエネルギー溢れる人間喜劇になっている。
1957年製作/110分/G/日本
配給:日活
監督:川島雄三
脚本:川島雄三、田中啓一、今村昌平
撮影:高村倉太郎
照明:大西美津男
美術:中村公彦、千葉一彦
録音:橋本文雄
編集:中村正
音楽:黛敏郎
助監督:今村昌平
キャスト:フランキー堺、南田洋子、左幸子、石原裕次郎、芦川いづみ、金子信雄、織田政雄、岡田眞澄、植村謙二郎、河野秋武、二谷英明、西村晃、高原駿雄、小林旭、武藤章生、小沢昭一、梅野泰靖、新井麗子、菅井きん、山岡久乃、殿山泰司、市村俊幸
