【DTM】ミックス作業で迷わない!効率的な15ステップ(作業フロー)
ミックスの方法や進め方に決まったルールはないため、基本的には自由に作業を進めても問題はありません。
ただ、初心者の方でもミスなく進めやすいと思われるミックスのステップ(作業フロー)を整理しておきたいと思います。
1. トラックの整理
最初に、ミックス作業を始める前に、トラックを整理して視覚的にわかりやすい状態に整えます。
トラックに名前を付ける: 各トラックに、Kick(キック)、Snare(スネア)、Bass(ベース)、Vocal(ボーカル)、Guitar01・Guitar02(ギター)など、何のパートかわかるように名前をつけます。
並び替え、フォルダ分け、色分け: トラックを見やすく並べ替えます。DAWによっては、複数のトラックをフォルダにまとめたり、色分けしたりする機能があるので、積極的に活用すると良いです。フォルダ分けや色分けをしておくと瞬時に何のパートかを判断できるようになります。
トラックの並び順の例を挙げておきます。
キック、スネア、ハイハットなどのドラム
ベース
ギター、ピアノ、シンセサイザーなどのメロディー楽器
ストリングスなどの装飾的な楽器
効果音
メインボーカル
ハモリ
ちなみに私は基本的に上から以下の順番で並べることが多いです。
① キック → 濃い緑
② スネア → 緑
③ ハイハット → 薄い黄色
④ ドラムのその他 → 薄緑
⑤ ベース → 濃い青
⑥ ギター → 薄いオレンジ
⑦ 鍵盤系
ピアノ系 → 濃いピンク
プラック → 濃い紫
シンセサイザー → 濃いオレンジ
⑧ ストリングス → 薄い紫
⑨ 効果音など → 黄色など(イメージに合った色を適当に選ぶ)
⑩ ボーカル → 白
⑪ ハモリ → 薄い水色
これはあくまで一例ですので、ご自身の作業しやすい順番に並べたり色分けしてみてください。
なお、パラデータを書き出す際、通常はDAW上のトラック名がそのままWAVファイルのファイル名になります。
そのため、文字化けやバグを避けるため、トラック名(ファイル名)は日本語ではなく半角の英数字を使用したほうが安全です。
名前の付け方の具体例については「【DTM】パラデータのミスを回避する・効率的な書き出しの方法」という記事で解説していますので、ここでは割愛します。
2. バス・FXトラックの準備
ミックス作業を効率化するために、バス・FXトラックをあらかじめ用意しておきます。
バストラックの用意: ドラム用、シンセ用、ボーカル用など、パートごとにバストラックを作成し、各トラックの出力をそれぞれのバストラックに送ります。こうすることで、ドラム全体にコンプレッサーをかけたり、ボーカル全体をまとめて音量調整したりといった作業が簡単にできるようになります。
FXトラックの用意: コンピューターの負荷を減らしたり、共通のエフェクトで一体感を出したりするために、空間系エフェクトなどを入れたFXトラック(センドトラック)を準備しておくと、その後の作業がスムーズです。最近はPCの性能が向上したため直接トラックにリバーブなどをインサートするケースも増えましたが、負荷の軽減や音色の統一などの点でセンドリターンを活用するメリットも多いので試してみてください。
3. マーカーの活用と下準備
DAWの機能を活用してミックス作業をスムーズに進めるための準備をします。
セクションマーカーの配置: DAWの「セクションマーカー」機能を使って、曲のセクション(Aメロ、サビ、Bメロなど)に目印をつけます。これにより、編集したい箇所に瞬時に移動できるようになり、作業効率が向上します。
素材の問題点を修正: ミックスを始める前に、素材の問題の確認・修正しておきましょう。
タイミングの修正: タイミングがずれているパートがあれば、早い段階で修正しておきます。
ノイズの除去: 各トラックを聴きノイズがあれば除去ソフトなどで取り除きます。可能であれば1パートずつチェックするとノイズを発見しやすいです。
4. 生ドラムの処理
生ドラムを録音した音源を扱う場合には、最初にドラムの処理をしておいたほうが作業がスムーズです。
ドラムをどこまでグリッドに近づけるかを決めた上で、タイミングがズレている部分を修正したりします。
またトリガー系のプラグインを使ってドラムの音を積極的に作っていくケースもあります。
5. ゲインステージング(1回目)とパンニング
(※前処理)ローカット処理
ゲインステージングの前に各トラックの不要な低域をEQやフィルターなどである程度カットしておいたほうが作業がスムーズに進みやすくなります。
ここからいよいよ本格的なミックス作業の開始です。
まずはエフェクトを使わずに、音量と定位のバランスを整え「ラフミックス」を作ります。
楽曲のアレンジやレコーディングが上手くいっていれば、ラフミックスの段階でも一定のクオリティのものが出来上がるはずです。
音量バランスの調整: ミキサーのフェーダーを使って、各トラックの音量バランスを調整します。「ミックスの基本は音量バランスの調整」といわれることもあるとおり、この作業がミックスの成否を左右するといっても過言ではありません。
パンニング: 音量調整と同時にパンニング(音を左右に振ること)を行います。低音楽器やボーカルなどの主役は基本的にセンターに定位させます。
音量バランスを調整する順番はさまざまですが、土台となるキックとスネアから調整を始めるのがおすすめです。
① 「キック」のフェーダーを「-10dB」前後に合わせる
「-12dB~-10dB」に揃える流派や「-10dB~-8dB」に揃える流派など様々なやり方がありますので、ご自身のやりやすい方法で問題ないと思います。
② 「スネア」をキックに合わせて調整する
③ 「ハイハット」を調整する
パンニングも一緒にする
④ 「ドラムのその他」(タムやオーバヘッド)を調整する
パンニングも一緒にする
⑤ 「ベース」をドラムに合わせて調整する
※ベースの直後に先にボーカルを処理をする人もいます。
⑥ 「ギター」を調整する
パンニングも一緒にする
⑦ 「鍵盤系」を調整する
パンニングも一緒にする
⑧ 「ストリングス」を調整する
パンニングも一緒にする
⑨ 「効果音」などの音量を調整する
パンニングやMS処理も一緒にする
⑩ 「メインボーカル」の音量を調整する
⑪ 「ハモリ」の音量を調整する
パンニングも一緒にする
曲のジャンルや構成に合わせて順番を入れ替えても問題ありません。
上記の順番と異なり
①キック→②スネア→③ハイハット→④ボーカル→⑤ベース→⑥その他ドラム(タム、オーバーヘッド)→⑦ギター、鍵盤系、ストリングス→⑧コーラス、
という順番でボーカルを早い段階で処理をする流派もあるので、自分のやりやすい順番で作業を進めるのが良いと思います。
EDM系の楽曲ではキック、ベース、ボーカルの3つが骨格となっている楽曲も多いので、そのような場合にはキックとベースを調整した直後に、ボーカルを調整したほうがスムーズに作業が進むケースもあると思います。
ただ、いずれにせよ曲の土台となるキックやスネアなどは最初に音量を決めておいたほうが作業が進めやすいと思います
ここまでの作業をした上で、全体で聴くと、バランスがどこか崩れていると思いますので、全体で聴きながら微調整を繰り返していきます。
パンニングをするタイミングは様々な考え方がありますが、私は音量調整と同時並行で行っています。
音量バランスを整えた後にパンニングをすると、バランスが崩れたような印象になり、作業がやり直しになることが多いからです。
キックやベースなどの低音楽器はセンターに定位させます。
主役となるボーカルやギターソロなども基本的にセンターに定位させます。
6. ラフミックスの分析とエフェクトの適用
ラフミックスが完成したら、一度エフェクトをかけずにじっくりと聴き込み、問題点を洗い出します。
ラフミックスの分析:
ボリュームバランスは適切か?
どのパートを目立たせるべきか?
不要な帯域や帯域の重複はないか?
位相の問題はないか?
トランジェントが強すぎる音はないか?
これらの点をメモに書き出すなどして言語化し、どのような処理が必要かをイメージします。
7.ゲインステージング(2回目)
ラフミックスをしたまたゲインステージングで解決する問題がないか検討します。
「ゲインステージングはさっきやったはず」と思うかも知れませんが、「ミックスの基本は音量バランスの調整」なので、ラフミックスの問題点を把握したら改めてフェーダーを調整することで解決できる問題がないかを検討します。
8.オートメーションを書く(フィルター、ボリュームなど)
例えば「Aメロ、Bメロ」はボーカル以外の楽器が静かだけれども「サビ」で急に盛り上がるような曲の場合、ボーカルの音量が一定のままだと、「サビ」で急にボーカルが聞こえにくくなることがあります。
そのような場合にはオートメーションで「サビ」の箇所のボーカルの音量を持ち上げる必要があります。
また歌い出しの発音が弱いボーカリストの場合、子音部分があまり聞こえず母音が目立ってしまうような場合があります。
そのような場合に歌い出しの部分をオートメーションで持ち上げることで、子音部分がハッキリと聞き取れるようになり、メリハリのあるボーカルに仕上げることができます。
その他に、各楽器のパラメーターにオートメーションを掛けたり、フィルターを少しずつ開けていくような演出をする場合もあります。
9.素材の問題点を修正するためのエフェクトを掛ける
音量のバランスを取った後に、オーディオ素材の問題点を解決し、修正するためのエフェクトを掛けていきます。
この時点では積極的な音作りはせずに以下の目的でエフェクトを使用します。
・音量差を整えるためのコンプレッサー、リミッターを掛ける
・不要な帯域(超低域など)のカット
(各トラックで衝突している帯域がある場合には、いずれかのトラックをカットして調整)
・トランジェントが強いサウンドの調整
・位相の補正
この時点では音作りをすることはしないので、イコライザーはClaro、FabFilter Pro-Q、KIRCHHOFF-EQ などの余計な味付けをしないプラグインのほうが便利です。
Claroなどには音量を一定に維持してくれる機能が搭載されているので、イコライザー処理をしても音量バランスが崩れにくいというメリットもあります。
ClaroやFabFilterを持っていない場合には、DAWにデフォルトで入っているデジタル系のイコライザーでも全く問題ありません。
トランジェントの処理についても、この時点では味付けの少ないデジタル系のコンプレッサーやトランジェントシェイパーを使ったほうが安全だと思います。
10.音作りをするためのエフェクトを掛ける
「素材の問題点を修正するためのエフェクト」を掛けた後に積極的な音作りをするためのエフェクトを掛けていきます。
音作りをするためのエフェクトとしては以下のようなものがあります。
コンプレッサー
→1176、FAIRCHILD 670、LA-2Anなど
イコライザー
→Pultec系 EQなど
トランジェントシェイパー
→Smack Attackなど
サチュレーター
→アナログテープのモデリングなど
空間系
→リバーブ、ディレイ
モジュレーション
→コーラス、フェイザー、フランジャーなど
アナログ機材(コンプ、EQ、マイクプリアンプ、チャンネルストリップなど)をモデリングしたプラグインを通すと倍音が付加され、サチュレーターを通したような効果を得られることがあります。
エフェクトを使う場合には、Gainmatchなどのプラグインを使ってエフェクトの適用前後の音量差を揃えると、全体の音量バランスも崩れにくくなります。
リバーブやディレイを「センドリターン」で使った場合には、音量が大きくなってしまうため、フェーダーで音量を調整し直す必要があります。
なお、作業の手順を分かりやすくするために「9.素材の問題点を修正するためのエフェクトを掛ける」と「10.音作りをするためのエフェクトを掛ける」の作業を分けていますが、ミックス作業に慣れている場合や時間がない場合は「9.素材の問題点を修正するためのエフェクトを掛ける」と「10.音作りをするためのエフェクトを掛ける」を同じタイミングで、同じプラグインを使って処理しても問題ありません。
ただ、エフェクト系プラグインをインサートする際には「素材の問題点の修正」と「音作り」のいずれを目的として作業をしようとしているのか、確認をしながら作業を進めると迷いが少なくなると思います。
11.ボーカルのピッチ補正、ブレスの処理、タイミング補正をする
ボーカルのピッチ補正等はミックスの最初の段階で行っても良いのですが、ボーカル以外のオケがある程度出来上がった状態でピッチ補正等をしたほうが効率が良いことも多いと思います。
例えばギターはピックを当てた瞬間はピッチが高く、徐々にピッチが下がっていくという傾向があります。
そのためギターを「ジャカジャジャ」を搔き鳴らしているような場合には、楽器隊のピッチも少し高く聞こえることがあります。
その場合にはボーカルのピッチも少し高めにしてあげると、楽器隊との一体感が生まれやすくなります。
また、楽器隊が敢えてタイミングをズラしている場合には、ボーカルのタイミングもそれに合わせる必要が出てくることがあります。
楽器隊の調整をする前にボーカルのピッチ補正・タイミング補正をしてしまうと、後になって楽器隊に合わせて再度ボーカルの補正をしなければならないケースも出てくるので、楽器隊のサウンドがある程度出来てから、ボーカルの補正をしていったほうが良いと思います。
12.ステレオイメージの調整、MS処理
ある程度、全体が出来上がったら、全体を通して聴いてみてステレオイメージに問題がないか確認します。
イメージャーでステレオイメージを広げると位相の問題が生じるケースがあるので、音場を広げる方向で処理する場合には可能な限り各トラックのパンニングを調整する方法で処理をしたほうが安全です。
逆にステレオイメージを狭くする分には、イメージャーやMS処理系のプラグインを使っても問題は起きにくいです。
たとえば低域が左右から聞こえて不自然な場合には、イメージャーやMS処理可能なプラグインを使って低域だけ音像をセンターに寄せる処理をすれば解決することが多いです。
なお突発的なFX(効果音)については位相の問題が生じても気にならないことが多いですし、音像を広げることで主役のボーカルなどを邪魔しないように出来るというメリットもありますので、FXに関してはイメージャーなどで積極的に広げる方向の音作りをしても良いと思います。
13.ゲインステージング(3回目、各トラックの音量を改めて調整する)
ここまでの作業の中で音量バランスが崩れている部分が出てくると思いますので、改めて全体を聴きながら音量バランスを整えていきます。
14.ノイズチェックをする
エフェクト系プラグインの挙動などによりノイズが混入する場合がありますので、改めてノイズの有無をチェックします。
オーディオファイルが途切れている箇所や、オートメーションなどでプラグインをバイバスさせた地点に「ブツッ」「ボンッ」というような細かいノイズが入ることがあるので注意が必要です。
ノイズチェックの作業はスピーカーよりも、MDR-CD900STのように「音が近い」「高域が強め」などの特徴のあるヘッドホンで行ったほうが分かりやすいです。
ただMDR-CD900STは設計が古く、現代においてはコストパフォーマンスがあまり良くないという意見もありますので、普段から使っているお気に入りのヘッドホンでノイズチェックができるようであれば、それで十分だと思います。
私は最終的なチェックにはOLLO AUDIO X1を使っています。
安価で比較的新しい設計のチェック用ヘッドホンを探している場合には、Austrian Audioのヘッドホンも良いと思います。
同社の低価格モデルのHi-X15は高域が強調されているので好みが分かれる製品ですが、左右の分離感が優れていてノイズなども把握しやすく、軽いので疲れにくいと思います。
15. 2mixに書き出して異なる再生機器で聴き比べをする
全ての調整が終わったら、モニタースピーカーのみならず、ヘッドホン、フルレンジスピーカーなど、様々な機器で聴き比べて、同じような印象になるかを確認することが望ましいです。
基本的にミックスはどのような環境で再生しても違和感が無い状態で再生できることを目指します。
モニタースピーカーやモニターヘッドホンは各周波数がバランス良く再生できるように設計されているためミックスが失敗していても気がつきにくいことも多いです。
例えばベースの中域や高域をカットして低音域に寄せた場合に、モニタースピーカーではベースの音は聞こえたのに、小さなスピーカーで再生するとベースの音がほとんど聞こえないという場合があります。
そのためフルレンジスピーカーや、小型スピーカー、スマホなどで聴いた時にも違和感のない音源になっているかを確認しておくのが望ましいです。
車を持っている人は、車の中で大きめの音量で聞いてみるのもオススメです。
なおミックスのチェックをする際には、面倒でも「2mix」(LとRの2つのチャンネルにまとめた音源ファイル)に書き出してから確認することが望ましいです。
2mixに書き出す前の状態で確認をしようとすると各エフェクトや音源の設定を自由に変更できる状態なので、意識が各トラックのパラメーターのほうに向いてしまい、「曲を全体として聞く」という意識から保ちづらい傾向があります。
2mixに書き出すことで各トラックのパラメーターが動かせない状態になるため「曲の全体」に意識を向けやすくなります。
また2mixに書き出すことで波形を目で確認できるようになるので「極端な音量差がないか」「波形が部分的に不自然に飛び出している部分がないか」「海苔波形になっていないか」など、耳だけでは気づかなかった部分に気づくこともできます。
2mixを聴きながら気になった点があればメモ帳などに問題点などを次々と書き出していって、改めてミックス段階のプロジェクトに戻って修正を加え、また2mixで書き出して確認をする・・・という作業を繰り返していきます。
