ミックス作業で大事なこと(7):バッファサイズについて
DAWで楽器やボーカルを録音する際は、レイテンシー(音の遅延)を減らすためにバッファサイズを小さめに設定することがあります。
しかし、ミックスやマスタリングの作業をする際はこのバッファサイズを大きく設定することをおすすめします。
バッファサイズが小さいままだと、複数のエフェクトプラグインやCPU負荷の高いプラグインを使用する際にコンピューターにかかる負担が大きくなり、音飛び(ノイズ)やDAWのフリーズ、強制終了などの原因になります。
ミックスやマスタリングの作業に移る際は、バッファサイズを大きめに設定することでコンピューターの処理の許容量が増え、作業が安定しスムーズに進められるようになります。
「ダイレクトモニタリング」と「DAW(ソフトウェア)モニタリング」
バッファサイズを大きくすると、レコーディング時に演奏者やボーカリストが自身の音を確認する「モニタリング」に影響が出ることがあります。
この影響について理解するためには、オーディオインターフェイスを使ってレコーディングを行う際に演奏者やボーカリストが自身の音を確認するモニタリング方法について、主に以下の2種類があるということを把握しておく必要があります。
ダイレクトモニタリング
オーディオI/F → モニター出力
・レイテンシー(音の遅れ)がほぼゼロ
・物理的な回路で直接信号を返すため、演奏のズレがない。
・DAW上のエフェクト(リバーブ、コンプなど)はモニター音に反映されず、入力された素の音が聞こえる
・ただしDSP機能を使ったりアウトボードと組み合わせることでモニター音にエフェクトを掛けることが可能
DAW(ソフトウェア)モニタリング
・オーディオI/F → PC/DAW → オーディオI/F → モニター出力
・DAW上のエフェクト(アンプシミュレーターなどのプラグイン)をかけながらモニターできる
・PC内部の処理を介すため、レイテンシー(音の遅れ)が発生する(バッファサイズの設定に依存)
「DAW(ソフトウェア)モニタリング」の問題点
近年、PCやMacの性能向上により、DAW上のエフェクト(プラグイン)を使いながら録音するために、後者の「DAWモニタリング」を利用する方が増えています。
しかし「DAWモニタリング」は以前よりレイテンシーを小さくできるようになったとはいえ、特にシビアな演奏者にとっては気になる程度のわずかな音の遅れが生じます。
例えば、 ボーカリストによっては若干のレイテンシーを無意識に回避しようとしてヘッドホンを片耳から外して歌ったり両手でヘッドホンを強く耳に押しつけるような仕草が見られることがあります。
これは意識的に遅延を認識していなくても身体が何らかの違和感を覚えていることが原因であるケースがあります。
また、ギター録音の場合にも、クリーン系のサウンドでカッティングフレーズを録音するような場合には、わずかなレイテンシーであってもリズムの違和感に覚えることが良くあります。
さらに(PCの性能にもよりますが)バッファサイズを小さく設定して「DAWモニタリング」で録音すると録音データに定期的に「プチッ」というクリックノイズやドロップアウトノイズが入るリスクが高くなります。
そのため、個人的には録音の際には可能な限り「ダイレクトモニタリング」をを活用し、ボーカリスト・演奏者が装着しているヘッドホンに声や演奏の音を直接返し、DAWのバッファサイズを大きくしたままレイテンシーをゼロに近い状態にしたほうが良いと考えています。
「ダイレクトモニタリング」の問題点
一方で「ダイレクトモニタリング」にも注意点があります。
最大の問題点は低価格帯のオーディオインターフェイスの場合、モニタリング音(演奏者・ボーカリストのヘッドホンに返す音)にエフェクトを掛けることができないという点です。
「DAW(ソフトウェア)モニタリング」であれば、DAW上にエフェクトプラグインをインサートするだけで、安価なオーディオI/Fでもモニタリング音にエフェクトを掛けた音を返すことが可能です。
しかし「ダイレクトモニタリング」でエフェクトを反映させるためには、DSP(Digital Signal Processor)内蔵のオーディオインターフェイスを利用するか、外部のアウトボード(ハードウェアエフェクト)などを使わなければなりません。
近年のオーディオインターフェイスは性能が向上し、5万円以下の機種でも10万円以上の機種に匹敵する音質を備えているものもありますが、低価格帯の多く機種では「ダイレクトモニタリング」の音にのみエフェクトをかけるということが出来ません。
昨今のオーディオインターフェイスの価格差は、音質よりもむしろ「ダイレクトモニタリング」での利便性(ゼロレイテンシーでエフェクトをかけることができるか)という点や、入出力の豊富さ(アウトボードをどれだけ接続できるか)によるところが大きいと考えられます。
低予算で「ダイレクトモニタリング」にエフェクトを返す方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
