山上たつひこの「長井勝一批判」の真相?
「山上たつひこ(1947-)」と「長井勝一(1921-1996)」のどちらか、あるいは両方を知らない人にはどうでもいい話ですし、私も特に関心があるというわけでもないけれど。なぜこの投稿をしようと思ったかというと、『COMIC BOX(コミックボックス)』という『まんが専門誌ぱふ』(清彗社)の実質的な後継誌の1989年5月号「特集ぼくらの手塚治虫先生」という「手塚治虫(1928-1989)」の追悼特集で、普通は故人の業績や人格をたたえる文章ばかりが並ぶのが普通なのに、なぜか「宮崎 駿(1941-)」による辛辣な〈手塚批判〉のインタビューが載っていて、そういえば同じ『COMIC BOX』で『月刊漫画ガロ』(青林堂)の初代編集長で創業者の長井勝一氏が亡くなられた時の追悼特集号にも、人格者として知られる?長井氏の人間性を痛烈に批判する山上たつひこ氏の文章が載っていた(驚いた)が、何か理由があったのか?という疑問がきっかけ。山上氏の代表作である少年向けギャグ漫画『がきデカ』(1974~1980年連載)は、その前の青年向けで過激なギャグ漫画『喜劇新思想大系』(1972~1974年連載)の流れにあるのは知られているが、『喜劇~』が最初に全巻が単行本化されたのは掲載誌の「双葉社」からではなく、長井氏が編集長(『ガロ』)で自身の出版社である「青林堂」から出版されている。
そのワケは知らないが、その時に両者の間で、何かトラブルがあったのか?
1973年[~]、長井勝一は山上たつひこ初期の代表作『喜劇新思想大系』の単行本刊行に際して山上と打ち合わせを行う。この打ち合わせで長井は「あれは面白いけれど、あくまでも大人のものだから『喜劇新思想大系』を子供向けにして出版社に持っていったら受けるんじゃないか」と山上に助言し『がきデカ』誕生の契機を作る。 ※Wikipediaの「青林堂」から引用
長年の疑問をネット検索してみたら「理由」?が判明した。↓山上氏の文章。
~~~のちに青林堂から全六巻の「喜劇新思想大系」が刊行(※1973~75年)され、折からの「がきデカ」ブームも手伝ってそれが爆発的に売れ、詩人の知るところとなった。詩集を出している出版社から抗議がきた。
「一応、山上さんから高木さん(※高木 護)に謝罪の電話を入れていただいたほうがいいんじゃないかな」
青林堂の長井勝一が例のしゃがれ声で言った。
「高木さんご本人は穏やかな方だけど、周りが騒いでいるみたいなので」
長井氏は言葉を継いだ。
「喜劇新思想大系」の単行本が売れに売れて長井勝一社長は笑いが止まらなかった頃だ。噂によると彼は毎晩キャバレーに繰り出し、酒池肉林のどんちゃん騒ぎをしていたそうである。
ちなみにぼくはこの本の印税をもらっていない。「青林堂」、「ガロ」で仕事をするときは無報酬でなければならない、というのが業界の暗黙の了解だったからぼくも要求しなかった。単行本がどれほど売れたのか具体的な数字は知らないけれど、この年は長井勝一が自ら中元と歳暮を届けに来た。
ゴルフセットに高級紳士服、とまではいかないものの、青林堂のイメージからはかけ離れた高価な品だったのを憶えている。さすがの長井氏も後ろめたかったのであろう。
『ガロ』では「雑誌に掲載されても原稿料は払われない」というのは有名?ですが(その代わりに、他社では掲載されないような作品や新人が全国流通誌に載る)、他社で連載した漫画の単行本化でも印税は払われないのか(真相は知らない)。山上氏の漫画は、多分『ガロ』本誌には一度も載ってないはず。
詳しいことは知らないが、『ぱふ』と『COMIC BOX(コミックボックス)』は『ガロ』(青林堂)と『アックス』(青林工藝舎)みたいに分裂していたらしい。
1980年から1981年にかけて、当時の社長と編集長の編集方針の違いなどから清彗社は雑草社(社長派)とふゅーじょんぷろだくと(編集長派)に分裂、清彗社発行の『ぱふ』は1981年1月号が最終となった。1981年12月号より雑草社の手で『ぱふ』が復刊された。ふゅーじょんぷろだくと派は、雑誌『ふゅーじょんぷろだくと』を経て、『COMIC BOX』を創刊している。
分裂前の『ぱふ』も『COMIC BOX』も、私は「濃い漫画マニア」ではないので、ずっと後で古本屋(具体的には大阪にまんだらけが出店した時)で興味のある漫画家の特集号を数冊買ったぐらいの程度で、語る資格を持たない。
問題?の『COMIC BOX』(ふゅーじょんぷろだくと)1996年5月号の表紙がコレ。山上氏は、既に漫画家を引退され小説家に転身後の「山上龍彦」名義。


『喜劇新思想大系』は青林堂「現代漫画家自選シリーズ」での刊行(全6巻)

『ガロ』1975年7月号裏表紙に掲載の『喜劇新思想大系』第3巻の刊行予告

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