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29歳無職、検問だらけの新疆で、人とごはんに救われる

中国・新疆を旅して、検問や職質の多さに心身ともに削られました。

それでも、ナラティへ向かう途中で出会った人の優しさと食文化の豊かさが、その疲れを溶かしてくれましたた。

ナラティへ向かう途中

窮屈さの中で人とごはんに支えられた、旅の記録です。

まずはごはんの話から。

新疆の「餃子定食」で中国の奥行きを知る

昨日に引き続き、伊寧の喀賛其民俗旅游区(カザンチ民俗観光区)を歩きました。

伝統的な町並みが残る旅游区(写ルンですで撮影)

半地下食堂のホロホロ餃子

昼食に入った半地下の食堂は、ウイグル人らしき客で賑わっていました。

ウイグル人らしき家族が食卓を囲む

どの料理にしようかと迷っていると、相席になった中年のウイグル人男性が食べていたものに目が留まりました。ナンの上に肉まんほどの餃子が4,5個乗っている。この餃子は皮がかなり薄いようで、箸でつまむとホロホロと崩れ、こぼれた肉汁を吸ったナンがなんとも美味しそうです。

餃子 on ナン

私も同じものを頼もうしましたが、さすがにナンまで食べると腹が膨れすぎるかと思い、餃子のみを4つ注文しました。

ん〜!羊肉!程よく臭みが残っていて美味しい!

「これ、全部主食じゃないか…!」

まだいけると思い、もう一軒ランチへ。

ここは観光客も多いお店

今度は店先でプロフと餃子を作っているお店へ。地元民らしき人と内地からの観光客で賑わっていました。プロフと餃子を頼んだら、下にナンが敷かれていてビックリ。

餃子とプロフ on ナン

「これ、全部主食じゃないか…!」

中国では「餃子定食(ラーメン・半チャーハン・餃子)」的な組み合わせはしないものだと思っていましたが、ここ伊寧ではその前提があっさり崩れました。やはり漢族とは食文化が異なります。ウイグルの食文化は奥深い。こちらの餃子も薄皮で大ぶり。たらふく食べて完全に満腹です。

腹が膨れたところで、旅游区をブラブラと歩いてみました。昨日とは違う場所を、適当に歩いてみる。興味のある方向にただ歩く。

伊寧の伝統的な町並み(写ルンですで撮影)

この日は晴れていて、絶好の散歩日和でした。

この喀賛其民俗旅游区(カザンチ民俗観光区)というのは、伊寧という都会の中にある古き良き町並みで、低い建物が並んでいます。ナン屋や果物屋など小さな店がまばらにあり、人通りは多くありません。あたりを見渡すと、旅游区の外にある背の高いマンションが目立ち、ここがまだ開発されていないエリアであることが理解できます。

ナンを売る 昼下がりの路 子の笑い
(写ルンですで撮影)

ウイグルの特徴的な家屋を見たり、すれ違う子どもたちに微笑みかけられたり、カザフの豪邸の前を通ったり、中央政府のプロパガンダのポスターを見かけたり…平和な春の町並みを歩いてまわって気持ちがよかったです。

那拉提(ナラティ)への旅路

那拉提(ナラティ)に行くことにしました。

伊寧から東へ250kmほどのところにある小さな町です。中国国内では「世界四大草原のひとつ」と宣伝されている観光地です。実際にどれほど有名なのかはさておき、写真で見る草原と雪山のコントラストは、心を惹きつけるものがありました。

やっぱり私は旅運がいい

中国ではバスのチケット購入にパスポート提示が必要です。

伊寧のバスターミナル(新客運站)

公安のパスポートチェックに時間がかかり、16時半出発のバスを逃してしまいました。落ち込む私を見かねたバスターミナルの職員が、代わりに「新源行き」の乗り合いタクシー乗り場まで案内してくれました。新源という町で乗り換えてナラティまで行く算段です。料金は76元でした。46元のバスで行くよりも速いそうです。

実際、バスに乗っていたら今日中にナラティに着くのは無理だったかもしれないです。バスは速度も遅いし、検問で何度も足止めされます。

そういう意味では、バスを逃して正解だったようです。やっぱり私は旅運がいいみたいだ。

多民族乗り合いタクシーで優しさにふれる

私を含む4人の乗客を乗せたタクシーは、伊寧の市街地を出て、広陵な平原が広がる地帯を猛スピードで飛ばしていきます。

ナラティへ向かう - 雲が低い

天気がよくて気持ちがいい。

カザフ族の運転手。車内の音楽もカザフの曲調。助手席には回族の若者、彼の顔つきは漢族と見間違うほどでしたが目の色は薄い緑色でした。

私が日本人だとわかると、車内は一時盛り上がり、運転手は初めて日本人を乗せた!と大喜びしていました。パスポートを見せ合ったりして遊びました。私のことを「シャオシー(私の苗字の中国語読み)」と呼んでくれて、もし、今日中にナラティまで辿り着くのが難しそうなら新源にある自分の家に泊まってもいいと言ってくれました。

今日中にナラティまで行けるか?

タクシーは休憩所に入りました。

小さな店とトイレのみがある簡素なサービスエリアです。周りに集落などもない。 他にもトラックや乗り合いタクシーが停車しており、10人程が休憩所の周りで屯していました。伊新超市という看板があることから、このあたりは伊新(伊寧と新源の間)というのだろう。

トイレだがここで用を足せる気がしなかった

トイレいわゆる中国式。地面に大きな穴を掘り、その上に穴が空いたコンクリの板を敷いただけの簡易的なものでした。その穴からは禍々しいオーラが放たれており、ここで用を足せる気がしなかったです。

新疆のおしゃれボーイ

食堂か雑貨屋と思われる小屋の前で、新疆の若者がタバコを吸っていました。紫色のトレーナーに、ウォッシュが効いたジーンズ、紺のコンバースのハイカットに、白地に炎のマークが入った靴下と、なんともおしゃれ。ここの若者は思っていた以上に垢抜けています。ちょっと驚きでした。

伊新の休憩所(サービスエリア)

それにしても景色が良い。雲が低い。

「毛主席万歳」としか言えない窮屈さ

車の中から窓の外を見ると、「毛主席万歳」という文字が、岩肌に朱色の文字で書かれていました。

(毛)主席万歳
これを見た乗客たちの心情はいかに

それを見た乗客たちは、嘲笑にも似た歓声を上げていました。

「毛主席万歳〜!」

共産党に逆らうことはもちろんタブーです。彼らは、彼らの土地に書かれた「毛主席万歳」という文字を見ても、どうすることも、何を言うこともできない。もちろん批判なんてできない。そう思うと、複雑な気持ちになりました。

日が落ちる20時頃、新源の町に到着。
車から降りて、ナラティ行きの乗り合いタクシー乗り場を探しました。

20時頃、新源に到着

多くの場合、中国の乗り合いタクシー乗り場には目印もなければ、案内板などもないです。人に聞いて探すのが一番早いですね。近くにいた人に場所を教えてもらいました。出発まではまだ時間がかかるそうなので、車の前でとりあえず待ちます。出発時刻が決まっていれば、周りを散策したりできるのですが、集まり次第ということであれば、その場で待機するしかないです。

五星紅旗と社会主義の赤旗

この一対の旗を置くことに、どんな理由があるのだろう?

乗り合いタクシーに置かれた一対の旗

私が乗る車のダッシュボードの上に、五星紅旗と社会主義の赤旗を対にした小さな置物が、ちょこんと載せられていました。この2つの旗を車の外から見える場所に置いておかないといけないのだろうか…どんな気持ちでこの旗を置いたのだろうか。疑問は絶えない。

20時45分になって、ようやく7人の乗客が集まり、乗り合いタクシーは出発しました。夕暮れではあるものの、まだまだ明るい。

新源の市街地を出る時にアルマトイ行きの標識がチラっと見えました。新源からアルマトイ、どのようなルートを通るのか興味が湧きました。

私以外の6人の乗客たちは、ナラティに何をしに行くのだろうか?観光という感じではなさそうで、たぶん住んでいるのだと推察しました。今日は土曜日なので実家に帰るのだろうか?みんな携帯をいじったり音楽を聴いたり、各々の時間を過ごしていました。車内は中国語の音楽が流れていました。

車は時々馬とすれ違いました。そういえば、20年前の伊寧では、「馬車が交通手段として機能していた」と、伊寧の周氏が言っていました。今では馬車を見ることはないですが、このあたりを馬車が走っていてもおかしくない、そんな風景が過ぎ去っていきました。

那拉提世界四大高山河谷草原之一

道路脇に大きな看板があり、そこには「那拉提世界四大高山河谷草原之一」と書かれてありました。前述の通り、ナラティは世界四大草原のひとつだそうです。誇大な気もしますが、これで中国国内各地から観光客を集めているのでしょう。

辺境のまた辺境で職質&職質

夜遅く、ようやくナラティに到着。伊寧から6時間かかりました。

小さな町なので、国道を挟んで両側にホテルや食堂が点在している程度です。灯りの少なさが「辺境のまた辺境まで来た」という実感を与えてくれました。予約していた文明大酒店にチェックインすると、ここでも例によって警官2人がやってきて(ホテルの受付の人が連絡したらしい)、パスポートと行き先の確認をされました。

質問が一通り終わったあと、警官のスマホの画面を見るとTikTokの本家「抖音」のアイコンが光っていて、妙な親近感を覚えました。

ホテルの部屋を出て、夕飯を食べに唯一開いていた食堂に入りました。

ナラティの食堂
内装はキラキラしているがどこか寂れた印象

メニューを見て辣子肉餅面を注文しました。皿に盛られた300gは麺。これに肉と野菜の入ったスープをかけて食べます。

ピリ辛で美味しい!赤ピーマンの種が特に辛い。麺はうどんの太さでコシがあって美味しかったです。食べ終わった頃に店員さんに「加麵?(替え玉する?)」と聞かれましたが、さすがにお腹いっぱいでした…

にんにくで旅の疲れを吹っ飛ばす

満腹になり店を出ると、さっきの警官2人に出くわしました。そしてまた職質されました。2回も職質して意味あるのか?と思いつつも、流れ作業のように回答。

最後は「色々聞いてごめんね〜」と申し訳無さそうな表情で微笑んでくれました。

那拉提(ナラティ)空中草原

翌朝、カーテンを開けた瞬間、思わず息をのみました。

ホテルから眺める山々(写ルンですで撮影)

澄んだ空気、真っ青な空、その下にどっしりと構える雪山。
その景色を見ただけで、6時間かけてナラティまで来てよかったと、素直に思えました。

国家AAAAA級景区に値する絶景

朝のナラティの町

ホテルから15分ほど歩き、ナラティ旅游区の入り口へ向かいます。

「国家AAAAA級景区 那拉提」と刻まれた巨大な石碑が、これでもかと観光地感を演出しています。ここでもまずはパスポートチェック、顔写真の撮影、行き先の確認。ほぼ儀式のような一連の流れを終え、受付で入場料と空中草原行きのバス代、合わせて115元を支払いました。

国家AAAAA級景区

オフシーズンのため、40人乗りのバスに乗客はわずか8人ほどです。
バスはゆっくりと山を上り、展望ポイントに着くと、視界いっぱいに広がる濃い緑の草原と、白い雪山、どこまでも澄んだ青空が目の前に現れました。

美しい草原と雪山 - ナラティ空中草原
(写ルンですで撮影)

「世界四大草原かどうか」は正直どうでもよくなるほど、ただひたすら気持ちの良い景色でした。

上海カップルとランチ

本当に美しい草原(写ルンですで撮影)

写真を撮っていると、上海から来た同年代のカップルに話しかけられました。

5月の連休を使って新疆を周遊しているそうで、ウイグル人のガイド兼運転手を帯同したプチ富裕層旅行といった雰囲気です。女の子の陳さんは気が強そうで、その彼氏の金さんはエンジニアをしているそうです。ブランド物のアウトドアジャケットにおそろいのトレーナーが、いかにも沿岸の中国人カップルという感じで、洗練された雰囲気を出していました。

帰りもバスで下山します

ナラティの町へ戻り、上海カップルとガイドさん、そして私の4人でランチをすることになりました。大通りにある食堂。このカップル、メニューを見ながら次へ次へと注文していく。羊肉の唐揚げ、丁丁炒麵、辣子肉餅面など、こんなに食べられるのか?と思うぐらい沢山頼んでいました。おそらく残す前提でしょう。これが沿岸の中国人なのだな…と驚くばかり。

上海カップルと一緒にランチ
たらふく食べました

さらに驚いたのは、彼らが普通に Google Maps や Instagram を使っていたことです。「百度地図は使いづらい」と笑う彼らと話していると、同じ中国国内でも、沿岸部と新疆では、見ている世界がまったく違うのだろうなと想像してしまいました。

4人で楽しく食事して、腹も気持ちも満ち足りた気分になりました。ご馳走してくれて、本当にありがたかったです。彼らはこれからバインブルク草原へ向かうそうで、車に乗って行っていまいました。

私は伊寧へ戻るめたに、バスターミナルへ向かいました。

帰路のローカルバスで

帰り道は長時間のローカルバス。けれど、この長さにも救いがありました。

新源のバスターミナル

検問&検問

ローカルバスはとにかく遅い!

そもそものスピードが遅い上に、途中の客運站や検問で何度も停まるのです。外国人は検問でパスポートをチェックされるのですが、その手続きに時間を取られ(パスポートをコピーしていくつか定型的な質問をされるだけなのですが、なぜかこれに10分以上かかるんです)、何度もバスを待たせてしまいました。

外国人は私だけだったため、申し訳ない気持ち。

けれど検問がきっかけで乗客と仲良くなれた

バスからの景色はめっちゃ良かった

けれど、この検問がきっかけで、私が日本人だということがバスの乗客に知れ、隣のおじさん、おばさんたちと話すきっかけになりました。

カザフ系のおじさんは日本に行ったことがるそうで、片言の日本語を話してくれました。ウルムチから来たという漢族のおばさんは、来月日本に行くそうです。「私にゃ金があるからね、ずっと旅行してるんだ」と言っていました。明日はカザフスタンに行くそうです。いったいどんな仕事をしてるんだろう?このおばさんは漢族だが、他のウイグル族やカザフ族の乗客にはそういった自由は少ないのかな、などと考えてしまいました。

バスから見た夕陽

そんなこんなで、バスで乗客たちと話す時間は、なかなか楽しいものでした。

深夜、ようやく伊寧の町に戻り、タクシーで瑞陽皇冠酒店へ。
運転手は、私が日本人だとわかると急に陽気になり、「パスポートを見せてほしい」とせがみました。やはり新疆では、日本人というだけでちょっとした珍客のようです。

安宿から高級ホテル、職質からランチ、草原から長距離バス。

伊寧とナラティで過ごした数日を振り返ると、「中国という国は疲れるけれど、人とごはんには恵まれた旅だったな」と感じます。

次回:中国・カザフスタン国境越えの旅!

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