#創作大賞、読むぞ 宣言⑦『うまれつき』佐合 こうさん
「25話」 とても良かったです。
特に主人公がノートに書いた文章。「先天性」という言葉に向き合うシーンは作者がこの小説の主題に肉薄しているのを感じます。最後の結論に向かう大切な道標だと思いました。
『うまれつき』佐合 こうさん
前半、「うまれつき」の才能に恵まれた主人公のストーリーは、波乱があるものの青春小説のフォーマットの中で好ましさに包まれていました。
私はとても好きです。
ただ、プロローグを読んだときから、どこかでフォーマットを踏み越える展開があるのだろうなと期待していました。
プロローグ
どうやら俺は「先天性」という言葉に
好かれているらしい。
この一文から始まるプロローグ、とても不穏でさまざまな想像にかき立てられます。
ある展開とともに「25話」を迎えたわけですが、一気に小説のステージが上がったと思いました。満を持してギアチェンジした感じです。
それについてもっと感想を書きたいのですが、これ以上書くとネタバレになりそうですので控えておきます(プロローグの回収なども含めて)。
残りは数話だそうなので、ラストに作者が何を持ってくるのか、とても楽しみです。
☆26話にはこんな文章があります。
まだほんのりと熱の残ったその場所は、
まるで小さな火種のようで——。
前後がわからないと伝わりにくいかもしれませんが、こんな素敵な文章が置かれていると、読んでいて良かったと思います。
☆他にも「 」に「から」というルビを振る表現など、作者の感性と工夫を感じます。
そして、私がこの作品の感想を書きたくなったのは、もう一つ
作者の文体のせいです。
詩を読んでいるようだ。
初めの数話を読んだ時にそう思いました。読みやすくテンポも良い。それでいて、語られていく内容は尖っていて緊張感が伴います。
冗長を嫌い、飾りを排除して、意味のあることのみを語る。そんな姿勢が感じられました。
この文体のまま書かれたらどんな長編小説になるのだろうかと思いましたが、これは作者のスタイルなんでしょうね。
陸上部で主人公がトラックを走るときのように、自然にリズミカルに言葉が紡がれていくのだろうと。
しかしプロットは緻密に作られていると感じました。
やがてこの作品を読む私も、作者のリズムに呼応して読んでいました。
そうなるとセンテンスがひとつずつ、次々に頭に飛び込んでくるようです。
そして短い文章でつくられた余白は、読む者に考える隙間を与えているようにも思えます。
この文体に磨きをかけていくと個性的で良いだろうなと思いつつ、noteではない普通の本の体裁になった時は、どんな文体になるのだろうと興味を持ちました。
そちらも読んでみたいです。
○今週、気になった作品
【小説】運命の猫 yuhiさん
絵にもならない 花邑 灯火さん
恋するバスケ 谷山走太さん
以上、【#創作大賞、読むぞ 宣言】 7週目でした。また来週末に。
