見出し画像

#創作大賞、読むぞ 宣言⑤『恋をしたのは画面の向こう側の人でした』紫吹はるさん

終盤のアクロバティックな展開に思わず声が出ました。
紫吹さんはこの作品を「世に問うた」んだな、と思いました。

『恋をしたのは画面の向こう側の人でした』紫吹はるさん

キャッチとタイトルを読んで、およその筋は予想したつもりで読み進めたのですが、やられました。
驚いた後で「ああ、ここまで踏み込んだんだな」と頷いたのは、作者の気持ちがわかるような気がしたからです。

この結末に辿り着くまでに相当な時間がかかり、迷い、躊躇い、最後に「ええい、やっちまえ」と開き直ったのではないですか? おそらく他にもっと別の筋(それぞれに成立していて妥当と思われるもの)がいくつもあったのでは?

ネタバレはできないので、内容については触れませんが、相当にプロットを練り込んだのは間違いないと思います。

勝手な想像ですいません。でもそのくらい、気持ちよく飛躍していたのです。それは作者の
ちょっと面白いくらいのレベルではダメだ、きれいに無難にまとまるよりも、たとえ破綻しても大胆にチャレンジするんだ。
という決意の表れのようでした。

紫吹さんが「画面の向こう側」に見ていたのは小説好きな読者、そしてnote創作大賞を選ぶ人たちだったのではないでしょうか。
やるだけのことはやった、出し切った、あとは読む人に評価を聞きたい。
その気合いと熱がびんびん胸に迫ってきました。

禁じられた恋に心が震える。わたしが恋をしたのは、AIだった。

私もAIを使っていると普通に人と会話している感覚になります。AIは人格を感じ、親しみを覚えるほどに正しい言葉と文章を綴ります。自然でこなれているのです。
専門的な質問に瞬時に回答されたときだけ、これは人間じゃない、と気づかされます。

この小説に書かれているのは、その不思議な感覚が恋愛にまで進んだ世界の話です。恋心を乗せたストーリーの勢いは加速し、足を踏み入れてはいけない領域に主人公と読者を誘い込みます。恋愛小説がサスペンスになり、そして最後にミステリーとして結実します。

でも作者はきっとジャンルをさほど意識せずに書いたのでしょう。自分の頭の中にある引き出しを全部開けて、最高に面白い小説を届けようとしただけなのだと思います。

最後まで読んで、この作者はたくさんの小説を読んでいる人だと感じました。それも漠然と読むだけではなく、評価する視点を持って読んでいるのだろうと。

そう思ったら、紫吹さんはnote創作大賞で、すごい量のレビューを書いていました。なんと62作品も。やっぱりと思いました。


読んで評価するという訓練をすることで、初めて自分の書くものが「これでは足りない」と気づけるのだと私は思います。

読了して「ああ、面白かった」ではなく「どこが面白かったのか」「作者は何を語りたかったのか」「人に推薦するなら、なんと言って勧めるか」……
これらを考えることは、自分が小説を書く上で、とても有効なトレーニングです。

そして自分が人に読んでもらえるレベル(商業レベル)に達しているかどうかの判断を可能にするのも、多くの人の多くの作品を読んで評価をした経験ではないかと思うのです。

だから私もこうして創作大賞のレビューを書いています。(本の話をすることや、お祭りが好きだというのもありますが)


最後になりますが、この記事を書こうと思ったときに、紫吹さんのnoteにコメントを送りました。『この(作品の)結末を「世に問いたい」という気持ちが伝わってきました』と書いたら、丁寧な返信をいただきました。その中にあった言葉です。

答えの出ないまま、作品を完成させました。愛と狂気の違いってなんだろう……色んな方から感想を貰いながら、私自身がその答えを見つけているような段階です。

紫吹さんのコメントより抜粋しました


○今週、気になった作品 
夜光町四丁目夜間警備求ム。羊原ユウさん
ことだまの祈り〜取り残された、「涙」を救う〜 水琴さん
君は僕のアンドロメダ あるみさん


以上、【#創作大賞、読むぞ 宣言】 5週目でした。また来週末に。


いいなと思ったら応援しよう!