見出し画像

麦茶|せりふ三題噺

祖母は、麦茶が好きだった。
私が持っていくと、いつも嬉しそうに受け取ってくれた。

自分でもやかんに入れて、縁側でよく飲んでいた。
畑仕事の途中も、洗濯物を干す手を止めても、「喉乾いてたんだよね」と言いながら、縁側に戻ってくる。
そして、やかんからついだ麦茶を、ゆっくり飲んだ。

コップは、いつも同じ。
緑色の、少し曇ったガラスのコップ。

「そんなに喉渇くの?」
聞いたことがある。

「歳をとるとね、喉が渇くのよ」

よくわからなかったが、そういうものなのかと思った。

時折、風鈴が鳴り、蚊取り線香が細い煙を上げていた。

麦茶を飲み終えると、祖母はまた立ち上がって、畑に戻る。麦わら帽子の背中が、日なたに消えていく。

お盆が近くなると、そんな祖母の姿を思い出す。

当時と変わらない実家の縁側では、風鈴が力なくぶら下がっている。

台所には、あの緑色のコップがまだあった。
洗って、やかんの麦茶を、ついだ。

静かな縁側に戻って座った。

「……喉、乾いてたんだよね」

喉を通る麦茶は、少しぬるかった。





はらとけいさんのせりふ三題噺に参加します。

▼今週のお題
■セリフ 「喉乾いてたんだよね」
■三題 ・火山 ・シマウマ ・風鈴

今回はセリフだけを使わせていただきました。

▼麦茶三部作が、これで完成しました。



#せりふ三題噺 #喉乾いてたんだよね #ショートショート #創作 #小説 #ABC共創ラボ #AI協働 #祖母 #思い出 #火山シマウマ風鈴 #風鈴

いいなと思ったら応援しよう!