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たどりついた答え|恋人になれない

「仕事でアメリカに行くことになったんだ。一緒に来てくれないか」
彼の言葉に時が止まった。同時に心臓も止まった気がした。

驚き、嬉しさ、恐れ。それらが一挙に私に訪れていた。
止まった鼓動とともに、言葉は喉に張り付いていた。

「……、だめかな?」
彼の言葉に、時間が動き出した。

喫茶店の中のざわめき、冷めていくコーヒー。響き渡るような鼓動。
けれど、胸の想いはまだどこかにつっかえていた。

「あの……」

彼が、まっすぐに私を見つめている。
この眼差しに私は惹かれているのだ。

「ごめんなさい」
彼の視線から逃れるように私はうつむいた。

「理由を教えてくれる?」

母と二人きりの家族、その母は長期療養中だ。
この街から出たこともない。
英語なんてまったくしゃべれない。
それから、それから。

何かを言おうとしたが出てきた言葉は、ごめんなさい、だけだった。

「僕の勘違いだったのかな」
その言葉はなんとかして否定したかった。

こんなに思っているのに、こんなに好きなのに。
何も言えない自分がバカに思えた。きっと、こんなバカは彼にはふさわしくない。

恋人と呼んでもらえるかどうかはわからないけれど、彼と過ごした日々はかつてないほど彩りに満ちていた。
彼の笑顔をみることで私は呼吸し、彼の声を聴くことで私は癒されていた。
毎日、期待とともに目覚めて、希望と共に眠りにつくことができた。

今、望んでいた言葉を彼が言ってくれたのに、私の答えは私が想像していたものとは違っている。

頭をよぎるのは、キラキラしている彼と、その陰でおどおどしている私。

彼は私を許すかのように、視線を外し、窓の外を見た。遠いアメリカをみるように。

やはり私はバカだ。
始めからバカだったのかもしれない。彼を好きになるなんて。

バカな私はもう一度言った。

「ごめんなさい」




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