曼殊沙華|毎週ショートショートnote
朝、権現堂堤のベンチに腰を下ろす青年を、曼殊沙華は燃えるような赤で迎えた。
「君は今日も咲いてくれているんだね」 そよ風が運ぶ青年の呟きが嬉しくて、花びらが震えた。
一昨日初めて彼を見て以来、曼殊沙華は、彼のことばかりを考えていた。もっと自分を見ていて欲しかった。
次の日、青年は女性と一緒だった。二人の楽しげな様子に、秋風の中、曼殊沙華は身をよじった。それでも彼の笑顔を見ていたかった。
「実は転勤が決まったんだ。明日もう一度だけ会えないかな」青年の言葉に女性は答えなかった。
翌日、青年が現れた。女性は来ない。
曼殊沙華は知っている。花が散れば葉が出て、来年までもう咲くことはない。彼には二度と会えない。
一時間後彼は背を向けた。曼殊沙華には、一分と経っていないように思えた。
立ち去る青年の背中に、曼殊沙華は静かに花びらを散らせた。風に舞う赤い花びらが、小さく歌った。 さようなら。
けれどその時ふと誰かの言葉を思い出した。「曼殊沙華の花言葉は再会」
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