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点をつくるだけでは、事業にならない

0→1の熱狂と、1→100を支える人への報酬

新しいプロジェクトが始まると、少し空気が華やぎます。

キックオフイベントが開かれる。新しい名前とロゴができる。SNSに写真が並び、「いよいよ始動しました」と投稿される。

企画を立ち上げた人は称賛されます。

一方で、始まった事業を毎日動かす人は、あまり注目されません。

問い合わせに返信する。参加者の日程を調整する。会場を押さえる。マニュアルを直す。集金する。請求書を発行する。トラブルに対応する。売上をつくる。引き継げる状態まで整える。

新しい点をつくる仕事より、点を育てる仕事のほうが長い。それでも、予算も称賛も0→1へ集まりやすい。

僕は国家公務員として24年間働き、その後、ベンチャー企業でも働きました。行政と民間の両方で感じたのは、0→1を語れる人は多いのに、1→100を引き受けられる人は驚くほど少ないということでした。

そして、1→100の仕事を軽く扱う組織では、やがて「やりがい」が通貨の代わりになります。

新しい点は、説明しやすい

新規事業には物語があります。

「地域初」
「官民連携」
「実証実験」
「未来を担う若者」
「関係人口」
「社会課題の解決」

企画書にも書きやすく、写真にもなります。登壇や取材の材料にもなるでしょう。

ところが、運営改善は地味です。

申込フォームを直した。重複していた会議を減らした。赤字だった料金を見直した。担当者しか分からなかった仕事を手順書にした。利用されていない事業を終了した。

事業の継続には欠かせない仕事ですが、華やかな物語にはなりにくい。

新規事業には予算が付き、運営改善は現場の工夫に任される。企画する人には外部委託費が支払われ、運営する人には「地域への思い」が求められる。

少々意地悪に言えば、始める人は実績を持ち帰り、続ける人は作業を持ち帰るわけです。

「参加人数」は成果なのか

行政の事業では、イベント参加者数やプログラムへの応募者数が成果として示される場面があります。

参加人数は無意味ではありません。誰も来なければ、何も始まりません。

ただし、参加人数は活動量を示す数字であって、地域や事業者に生まれた変化とは別物です。

内閣官房の行政事業レビューでも、国の事業について目的や課題を踏まえた成果指標を設定し、点検結果を翌年度の予算要求や事業執行へ反映するとしています。

地方創生関係のKPI設定ガイドラインも、イベント参加者数のような活動量と、新規雇用者数や売上高のような成果を分けています。創業支援であれば、セミナー参加者数だけでなく、支援を通じた起業者数や新規雇用者数まで見るべきだという考え方です。

要するに、イベントを開いた、参加者が集まった、SNSで反響があったという段階では、まだ点を置いただけです。

  • 有償の事業へ進んだか

  • 売上が生まれたか

  • 雇用につながったか

  • 地域の事業者へ利益が残ったか

  • 運営主体が自立できたか

  • 外部の支援が終わっても続いているか

1→100を評価するなら、必要なのは「盛り上がったか」ではなく、事業として残ったかという問いです。

やりがいは、請求書の代わりにならない

社会的な意味を持つ事業では、「やりがい」が強い力を持ちます。

地域を良くしたい。若者を応援したい。困っている人を助けたい。大きなイベントに関わりたい。

どの気持ちも本物です。善意や自発性に基づくボランティア活動には、大きな価値があります。厚生労働省も、ボランティア活動を「個人の自発的な意思に基づく自主的な活動」と説明しています。

問題は、事業の運営に不可欠な仕事まで、善意で埋め始めることです。

主催者が日時を指定する。担当業務を割り振る。マニュアルどおりに動くよう求める。欠席や遅刻を管理する。来場者への責任を負わせる。

実態によっては、単に「ボランティア」と名付ければ済む話ではありません。労働基準法上の労働者に当たるかどうかは、契約の名称ではなく、指揮監督や拘束性、報酬の労務対償性などを踏まえて個別に判断されます。

もちろん、無償の活動が直ちに違法になるわけではありません。

法律上の最低線とは別に、事業者としての節度があります。

有料イベントの運営、企業の宣伝、受託事業の履行など、誰かの売上や実績につながる仕事なら、まず報酬を予算に入れる。報酬を用意できないなら、仕事内容を減らす。無償で協力してもらうなら、参加しない自由や途中で離れる自由を守る。

「貴重な経験になります」
「人脈が広がります」
「地域の未来につながります」

経験も人脈も未来も、家賃を払ってはくれません。

1→100の仕事にも、きちんと値段を付ける

新しいアイデアだけが専門性ではありません。

むしろ、始まった事業を続けられる形へ整える仕事には、かなりの技術が要ります。

  • 関係者の役割を決める

  • 収支を確認する

  • 価格を見直す

  • 契約と責任範囲を明確にする

  • 業務を減らす

  • 顧客の反応を拾う

  • 問い合わせや苦情へ対応する

  • 担当者が替わっても回るようにする

  • 続ける事業と終える事業を決める

僕自身、ベンチャー企業で働いたときにも、同じ感覚を持ちました。

新規事業のアイデアを出す人はいます。企画書を書き、プレゼンテーションをする人もいます。

ところが、顧客へ売り、契約し、納品し、代金を回収し、改善を重ねる段階になると、担当者が急に少なくなります。

事業は発表した瞬間に完成するのではありません。顧客がお金を払い、提供する側にも適正な利益が残り、担当者が疲弊せずに続けられて、ようやく事業と呼べます。

「点をつくる」という言葉は格好いい。

ただ、点ばかり増やしても、地域や会社の仕事は楽になりません。むしろ、未完成の事業と運営業務が積み上がり、現場の負担が増える場合があります。

発注する側になって、僕が決めたこと

僕は独立して、AA WAVE合同会社をつくりました。

経営者になれば、誰かへ仕事を頼む場面も生まれます。発注する側になって決めたのは、事業に必要な仕事には、できるだけ報酬を払うということです。

立派な理念というより、単純な話です。

僕の事業に必要な仕事なら、本来は僕が費用を負担すべきです。外部の人の善意で原価を消すのは、経営ではありません。

フリーランスへの業務委託では、取引条件の明示や報酬の支払期日なども法定されています。一定の取引では、通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定める「買いたたき」も禁止されています。

契約書をつくり、業務範囲を決め、報酬を払う。

当たり前の話ですが、社会的意義の大きな仕事ほど、当たり前が「仲間だから」「地域のためだから」という言葉で曖昧になりがちです。

やりがいは、報酬を減らす理由ではありません。

やりがいのある仕事だからこそ、続けられる報酬が必要です。

新しい企画の前に、前の企画を確かめる

新しい挑戦を否定するつもりはありません。0→1がなければ、何も始まりません。

ただ、新しい点を置く前に、前に置いた点の現在地を確かめる必要があります。

  • 今も動いているか

  • 誰の売上につながったか

  • 誰が運営費を負担しているか

  • 無償の働き手に頼っていないか

  • 外部事務局が離れても続けられるか

  • 続ける意味を失った事業を終了できているか

点検の結果、続ける価値があるなら、1→100を担う人へ予算と権限を渡す。

成果が出ていないなら、内容を直す。役割を終えたなら、きちんと閉じる。

終了は失敗ではありません。成果が曖昧なまま名前だけ残し、別の新規事業を重ねるほうが、よほど無責任です。

僕が行政とベンチャーの両方で学んだのは、シンプルなことでした。

点をつくる人だけでは、事業は続かない。

点を育てる人。点同士をつなぐ人。毎日の運営を引き受ける人。売上をつくる人。必要なら終わらせる人。

地味な仕事を担う人にも、称賛だけでなく報酬を払う。

地域事業でも、ベンチャーでも、社会貢献でも、持続可能性を語るなら、まず働く人の仕事を持続可能にしなければなりません。


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国家公務員24年、46歳で民間転職、そして独立。官と民のあいだで仕事をする渥美洋行の自己紹介

AA WAVE合同会社では、新しい施策を増やすだけでなく、既存事業の見直し、担い手、費用、運営方法まで含めた地域事業・自治体DX・官民連携の支援を行っています。

AA WAVE合同会社|地域経営・自治体DX・官民連携


参考資料


#新規事業 #官民連携 #地域活性化 #事業運営  


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Hiroyuki A いつも温かい目で読んでくださり感謝しております。この記事が少しでもお役に立てたなら嬉しいです。皆さんからの応援が私の創作エネルギーとなっています。スキやコーヒー一杯のチップをいただけると創作の大きな励みになります。これからもよろしくお願いします。​​​​​​​​​​​​​​​​

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