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人事領域に詳しい事業部の部長とHRBPが「最高のパートナー」になるために大切なこと

なぜ「人事通の部長」との仕事は難しいのか。

HRビジネスパートナー(HRBP)にとって、主なクライアントは担当部門のC-suite(役員クラス)かと思いますが、施策の実行フェーズなどにおいては担当部門の部長級などのセカンドレイヤー(以下、部長)にいらっしゃる方との連携が多く発生しているケースも多いのではないでしょうか。

では、そういった環境において、事業部のパートナーともいえる部長の方が、あなたと同じくらい、あるいはそれ以上に人事制度やタレントマネジメントに詳しいとき、どう感じますか?
「話が早くて助かる!」という喜びの反面、「このタスク、結局私がやる必要ある?」「部長の意見が強すぎて、私の提案が通らない」といった、役割の重複や機能不全を感じていないでしょうか。

また、事業部の部長の皆さん、人事の専門家であるHRBPが配置されたにもかかわらず、「結局、自分でやった方が早い」と感じたり、「HRBPの提案が、現場のリアリティをわかっていない」と感じたりしていませんか。

このジレンマは、お互いの知識レベルが高いからこそ発生しているのだと私は感じています。
そういった状態にあるならば、私たちは現在進行形で「何を知っているか」ではなく、「誰が、何を、どこまで決定し、最終責任を負うか」という権限と責任の観点から、役割を再定義する必要があるのではないかと考え、今回整理してみました。

この記事では、実体験をもとにまとめた「HRBPポジショニング・マトリックス」を使い、人事経験豊富な事業部の部長とHRBPが、最高のシナジーを生むための役割分担と協業の在り方を探っていきます!

では、いきましょう!


HRBPが「何でも屋」を卒業するための共通言語:HRBPポジショニング・マトリックス

まず、私たちHRBPの活動の整理として、ベースを揃える内容として、「HRBPポジショニング・マトリックス」(四象限マトリックス)という形でまとめてみました。

図1:HRBPポジショニング・マトリックス

HRBPの役割を明確化するこのマトリックスは、活動を「提供価値の性質(オペレーショナル/戦略的)」と「対象範囲(個人・個別事象/組織・全体構造)」で分類しています。

【第I象限】ルール・プロセス・アドミニストレーター

役割:組織基盤の効率的な運用
この象限は、組織全体を対象とし、オペレーショナルな価値を提供します。
人事規程、評価サイクル、HRシステム(HRMS)といった全社的な人事インフラの設計されたルールやプロセスを正確かつ効率的に運用する役割です。活動は守りのHRの基盤であり、ガバナンスと整合性の確保が中心となります。HRBPがここに時間を割きすぎてしまっている場合は、HRシェアードサービス(SSC)の構築・整備やテクノロジーの活用で改善するなどのアプローチも考えることができます。

【第II象限】戦略的チェンジ・エージェント

役割:事業戦略と組織能力の直結
この象限は、組織全体を対象とし、戦略的・変革的な価値を生み出します。
HRBPがなるべく多くの時間を割きたい役割ではないかと感じています。事業部との信頼を構築しながら、事業戦略を深く理解し、その実現に必要な組織能力の構築、組織開発(OD)、タレントポートフォリオの最適化といった構造的な課題に取り組みます。経営層と対等に議論し、変革を主導する攻めのHRの核心です。

【第III象限】従業員・ラインマネージャー支援者

役割:現場の日々の課題解決とサポート
この象限は、個人・個別事象を対象とし、オペレーショナルな価値を提供します。個別の労務対応、異動手続き、規程に関する問い合わせ対応など、現場のラインマネージャーや従業員の日常的な人事課題を正確かつ迅速に解決する役割です。
現場に最も近く、不可欠なサポート役ですが、ここに時間を奪われすぎると「何でも屋」化してしまう恐れがあります。理想的には、事業部の管理職(マネージャー)の自律的な問題解決を促すコーチングに時間をシフトすることや、HRチームと連携しながら適切なサポートを提供しながら、HRBPの稼働比率を抑えていくことが理想だと感じています。

【第IV象限】タレント・エンゲージメントのコーチ

役割:個人のポテンシャル最大化とエンゲージメント向上
この象限は、個人・個別事象に焦点を当て、戦略的・変革的な価値を提供します。
特定のハイポテンシャル人材の育成、管理職(マネージャー)へのピープルマネジメントの個別コーチング、エンゲージメントに関する深い対話など、個人の能力開発とモチベーションを最大化するための活動です。短期的な事務処理(第III象限)ではなく、個人の成長を通じた組織能力の底上げという中長期的な価値を生み出す役割です。

HRBPポジショニング・マトリックスで捉えた問題の核心

人事経験豊富な事業部の部長とHRBPの機能が重複するのは、主に第II象限(戦略)と第IV象限(タレント)において、お互いが「自分の領域だ」と考えてしまうからではないでしょうか。

しかし、決定的な違いは、「オーナーシップ(所有権)」と「ファンクション・オーナーシップ(機能提供権)」にあると考えています。

では、これらはどう整理していけばよいのでしょうか。



戦略のオーナーは誰だろうか?【第II象限】と【第IV象限】の明確な線引き

人事経験豊富な事業部の部長とHRBPが最高のパートナーシップを築くアプローチの一つは、「事業成果に対する決定権と最終責任」は部長にあり、「HR専門知見と全社整合性」に対する責任はHRBPにある、と線引きすることです。
必ずしもこれが正解というわけではないとも感じておりますが、個人的にはこの線引きが現状はしっくりきています。

まず、機能が重複しやすい第Ⅱ象限と第Ⅳ象限について深堀してきます。

【第II象限】戦略的チェンジ・エージェント:決定 vs. 提案・設計

第Ⅱ象限については、上記に記載の通り、部長は「何を変えるか、どこに投資するか」を決定し、HRBPは「どのように変えるか、そのプロセスと手法」を専門的に設計し、実行をドライブするような役割分担がよいのではと感じています。
つまり、部長の知識は戦略オーナーとしての意思決定の精度を高めるためにフル活用いただくことをイメージしています。

【第IV象限】タレント・エンゲージメント・コーチ:投資判断 vs. 専門的育成手法

第Ⅳ象限については、部長は「誰に投資するか、どれだけ投資するか」を判断し、HRBPは「どのように能力を引き出し、定着させるか」の実行とサポートに責任を持ちます。
そして、部長の過去の成功体験に基づく育成論と、HRBPの最新の人事科学・手法が融合することで、育成効果を最大化することを目指します。



日常業務の効率化 【第I象限】と【第III象限】の権限委譲

役割重複のストレスを軽減するためには、HRBPが日常的・定型的な業務(マトリックスの左側)に費やす時間を削減することも重要です。
また、部署ごとの事案を部長などが対応ができるようになると、将来的な問題の予防活動にもアンテナが立ち、より円滑な部署運営につながっていきます。

また、HRBPは第I/III象限におけるリスク管理の観点から、部長が決定した事項が、法的なリスクや全社的な公平性に反する場合、それを指摘し、代替案を提供する義務があります。HRBPは、決定権はなくても「ノー」と言うべき専門的な根拠を提供する役割と責任を担うという部分も大切になると感じています。

【第I象限】ルール・プロセス・アドミニストレーター:部署最適化 vs. 全社公平性

第Ⅰ象限については、部長は「部署内の最適化を検討、実行」し、HRBPは「部署の個別最適化と会社方針との全体最適の調整」を担いながら、全体の生産性向上や組織作りを進めていきます。

【第III象限】従業員・ラインマネージャー支援者:指揮命令 vs. 専門的助言

第Ⅲ象限については、部長は「1次対応と予防対応」の責任を持ちながらその能力をより高めていき、HRBPは「部長や課長クラスの能力開発のサポート」を意識した動きを取っていきます。この両輪がかみ合うことで、トラブルの発生を抑え、部署内のエンゲージメントが高まり、社員の能力開発にも意識を向けることができます。


協業を成功させるための3ステップ

「人事通の部長」との仕事は、知識の共有という名の混乱を生み出しかねません。そこで、以下の3つのステップを導入し、建設的な関係を築きましょう。

ステップ 1: 「I Decide, You Design」(私が決め、あなたが設計する)の徹底

部長の方とHRBPの間で「部長は最終的な決定権を持ち、結果に責任を負う。HRBPは最高のHRソリューションを設計・実行する責任を持つ」という明確なコミットメントが交わされるのが理想です。実際に会話として行うのは難しいかもしれませんが、何かのきっかけの際にHRBPから上記の役割分担を投げかけてみるのが良いかと思います。
そして、部長のアイデアをHRBPが具体的な「人事領域の専門的な知見」に基づいてブラッシュアップし、実行に移すというサイクルが生まれていくと、信頼関係がより強固になり、よりよい組織運営につながっていくはずです。

ステップ 2: 「データと全社視点」の武器化

HRBPは日々様々な社内外の人事データや事例に触れているはずです。部長が個人的な経験や信念に基づいて意見を述べた場合、感情論や対立を避け、「全社的なベンチマーク」「過去のデータ分析」「最新の人事トレンド」という客観的な根拠を用いて議論を主導することを意識してみてください。部長の知識は過去のものである可能性や、会社特有の文化や価値観が色濃く反映されている可能性があります。HRBPの武器は「現在進行形のHRの専門性」であると私は感じています。

ステップ 3: 「価値貢献目標」の明文化

ここはハードルが高いのですが、四象限全体で、HRBPのKGI(重要業績評価指標)の最低60%以上を第II象限と第IV象限の成果に設定できると理想です。
例: 「次世代リーダー特定率のX%向上(第IV)」、「部門のキーケイパビリティ構築のための組織変更率(第II)」など。

これにより、HRBPが戦略的活動に時間を割くことへの正当性が生まれ、部長もHRBPの真の価値がどこにあるかを理解できます。
また、KGIとしてのコミットが難しい場合でも、可能な範囲でこの四象限の話を部長と行い、お互いの役割を会話できるような機会が作れるとHRBPとして戦略的な活動に時間を割くことの理解にもつながっていくかと思います。


最高のパートナーシップへ

人事経験豊富な事業部の部長との協業は、適切に役割を整理できれば、これ以上心強いものはないと感じております。実際に、私もこういった部長と協業することで、組織開発を推進できた経験があります。
部長は「事業の推進者」として、HRBPは「組織・人材の専門的な変革者」として、それぞれのプロフェッショナルな役割を尊重し合えることでHRBPの組織への価値貢献も高まるはずです。

HRBPが、役員や部長の「何でも屋」ではなく、事業成功の「伴走者」として、認めらえる事例が増えていくことを願っています。


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Shugo HORIGUCHI 本記事が皆さまのキャリアや組織運営のヒントになれば幸いです。より良い職場環境づくりや人材育成に役立つ情報を発信していきますので、ぜひサポートいただけると励みになります!いただいたチップは、さらなる価値あるコンテンツの制作に活用させていただきます。

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