MI(マテリアルズインフォマティクス)勉強ログ② MIって何?
はじめに
前回の記事では、GW中にマテリアルズインフォマティクス、略してMIを勉強してみることを書きました。
前回の記事はこちらです。
今回はその続きとして、
「そもそもMIって何?」
というところを、自分なりに整理してみます。
なるべくわかりやすく書くつもりですが、わかりにくいところがあれば修正しますので、コメントで教えていただけると助かります。
MIは、材料科学と情報科学をつなぐもの
最初にざっくり言うと、MIは
材料開発に、データ科学や機械学習の考え方を取り入れる方法
です。
もう少しやわらかく言うと、
過去の実験データや計算データを使って、次に試す材料や条件を考えるための道具
という感じです。
材料開発では、組成、構造、製造条件、物性など、考えることがたくさんあります。
例えば、
・どんな元素を組み合わせるか
・どのくらいの比率にするか
・どんな温度で処理するか
・どんな物性を狙うか
といったことを考えながら、実験や評価を進めていきます。
ただ、材料の組み合わせはとても多いので、全部を実験で試すのは現実的ではありません。
そこで、過去のデータや計算結果を使って、
「次はこのあたりを試すと良さそう」
という候補を絞り込むのが、MIの考え方なのかなと思いました。
従来の材料開発と何が違うのか
従来の材料開発は、かなりざっくり言うと、
作ってみる → 測ってみる → 結果を見て改善する
という流れが中心だったと思います。
従来の材料開発は、物質を合成して機能を調べ、その結果をフィードバックしながら改善していく「順問題的」なアプローチです。
もちろん、この流れは今でもとても大事です。
材料の知識や経験がないと、そもそも何を試せばよいのか分かりません。
ただ、この方法だけだと、時間も労力もかかります。
一方でMIでは、
ほしい物性や機能に近づくには、どんな材料や条件が良さそうか
を、データから考えようとします。
つまり、
欲しい性質 → そこに近づく材料や条件を探す
という向きで考えるわけです。
これは「逆問題的なアプローチ」です。
私の理解では、
「MIは簡単に良い材料を見つけてくれる魔法」
ではありません。
材料屋さんの経験や勘をなくすものではなく、
経験や知識に、データの力を足して、次に試す場所を考えやすくするもの。
そんなイメージに近いのかなと思いました。
AIに丸投げしたら材料が見つかる、というより、
材料屋さんが地図を持って探索できるようになる感じです。
地図を持っていても、歩くのは人間です。
そしてたぶん、道に迷うこともあります。
MIで何をするのか
MIでやることをかなりざっくり分けると、次のような流れになりそうです。
材料のデータを集める
材料の特徴を数字で表す
物性との関係を調べる
まだ試していない材料や条件を予測する
実験や計算で確かめる
例えば、ある材料の強度や導電性、熱伝導率などを予測したいとします。
そのときに、材料の組成や構造、処理条件などをデータとして用意し、
それらと物性値の関係を学習させます。
そして、まだ実験していない条件に対して、
「この条件なら良さそう」
という候補を出してもらう。
その候補を実験やシミュレーションで確認して、またデータに戻す。
この繰り返しが、MIの基本的な流れなのかなと理解しました。
※ここでは理解のため、外挿の問題は一旦横に置いています。
よく出てきそうな言葉
MIを勉強していると、いくつかよく出てきそうな言葉があります。
まだ私も完全には分かっていませんが、今の時点ではこんな理解です。
データ
材料に関する情報のことです。
組成、構造、実験条件、物性値、計算結果などが入ります。
「この材料はこういう条件で作って、こういう性質でした」という記録を、コンピュータで扱いやすい形にしたものだと思っています。
この材料データは、大きく「計算データ」と「実験データ」に分けて考えられそうです。
計算データは、第一原理計算やシミュレーションなどによって得られるデータです。条件をそろえて大量に集めやすい一方で、実際の実験結果とはずれる場合もあります。
実験データは、実際に材料を作ったり測定したりして得られるデータです。現実の結果を反映している一方で、作製条件や測定条件の違いによるばらつきが入りやすく、大量にそろえるのは大変そうです。
説明変数
目的変数を予測するために使う情報です。
例えば、組成、構造、実験条件、処理温度などが説明変数になります。
かなり雑に言うと、
予測の手がかりになる情報
です。
目的変数
予測したいものです。
例えば、
・強度
・導電率
・熱伝導率
・融点
・電池容量
・触媒の収率
などが目的変数になります。
「最終的に知りたい値」と考えると分かりやすそうです。
モデル
データから関係性を学習して、予測に使う仕組みです。
ここで機械学習が出てきます。
例えば、説明変数と目的変数の関係を学習して、
まだ測っていない材料の物性を予測するような使い方です。
いきなり全部理解しようとすると頭から煙が出そうなので、
まずは「予測するための仕組み」くらいに考えておきます。
過学習
学習モデルがデータを過剰に学習してしまい、一部分だけに最適化しすぎてしまうモデルを作ることです。
私の理解では、
手元のデータにはやたら強いけれど、新しいデータには弱い状態
です。
テスト前に過去問だけ丸暗記して、少し違う問題が出たら固まる感じでしょうか。
耳が痛いです。
MIでうれしいこと
MIを使うと、材料開発で次のようなことが期待できそうです。
・実験する候補を絞れる
・物性を予測できる
・見落としていた組み合わせに気づける
・開発の試行錯誤を効率化できる
・実験、計算、データをつなげられる
材料開発では、全部を手当たり次第に試すのは難しいです。
だからこそ、
「どこから試すか」
「どの条件が有望そうか」
を考える道具として、MIが使われるのだと思いました。
参考にした総説では、触媒研究でMIを使った具体例も紹介されていました。
メタンをエチレンやエタンなどに変換する反応を対象に、大量の触媒データを集めて機械学習を行い、有望そうな新規触媒を予測し、実際に合成・評価する流れです。
「データで候補を絞る」と聞くと少し抽象的ですが、こういう具体例を見ると、MIで何をしたいのかが少しイメージしやすくなりました。
個人的には、ここが少し面白いです。
MIは、材料の仕事から離れたものではなく、
むしろ材料の知識を使うための新しい方法なのかもしれません。
逆に、MIだけではできなさそうなこと
一方で、MIだけで何でもできるわけではなさそうです。
例えば、
・データが少ない
・データの質がばらばら
・条件がうまく記録されていない
・なぜそうなるのか解釈が難しい
・実際に作れるかは別問題
といった課題がありそうです。
参考にした総説では、材料データには
「質」「量」「網羅性」
のバランスが重要だと説明されていました。
ここは、実際にMIをやっていなくても納得感があります。
同じ組成でも、作り方や測定条件が違えば結果が変わることがあります。
「そのデータ、本当に同じ条件で比べていいの?」
という問題は、かなり出てきそうです。
また、理論計算から得られるデータは大量に集めやすい一方で、実際の実験系とはずれる場合があります。
逆に、実験データは現実の結果を反映していますが、たくさん集めるのが大変です。
このあたりを見ると、MIは
「データを入れれば何でも正解が出る箱」
ではなさそうです。
データをどう集めるか。
どう整理するか。
どう解釈するか。
ここにも、材料の知識がかなり必要になりそうです。
パソコンに任せれば全部解決、ではありませんでした。
パソコンも困ります。たぶん。
今回のまとめ
今回、MIについてざっくり整理してみて、私は次のように理解しました。
MIは、材料の知識とデータ科学をつなげて、材料開発の進め方を少し賢くするための考え方。
材料屋さんの経験や知識を置き換えるものではなく、
次にどこを調べるか、どの条件を試すかを考えるための補助線のようなものだと思いました。
まだ分からないことも多いですが、
「材料」と「データ」がつながる感じは、少し面白そうです。
次回は、MIが実際にどんな分野で使われているのかを調べてみようと思います。
電池、触媒、高分子、合金など、いろいろな分野で使われているようなので、初学者向けに整理してみます。
まだ勉強中なので、もし認識が違っているところや補足があれば、コメントで教えていただけるとうれしいです。
アドバイスをもらいながら、少しずつ理解を深めていけたらと思っています。
参考にした資料
・宮里一旗・橋啓介著「マテリアルズ・インフォマティクスの概要とその具体例」
マテリアルズ・インフォマティクスの概要とその具体例
MIとは何か、従来の材料開発との違い、材料データの考え方、触媒研究での具体例がまとまっていて、今回の記事を書く上で参考にしました。
・岩崎悠真著『マテリアルズ・インフォマティクス 材料開発のための機械学習超入門』日刊工業新聞社, 2019年
説明変数・目的変数・モデルなど、機械学習の基本的な考え方を材料開発の文脈で理解するために参考にしました。
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