『カペリンの奇跡』#05 プロローグ 《スタビレの帰還》 第五章 【放課後の予兆】
前回のお話、第四章【守れなかったもの】はこちら▼
目の前の少年に、寄り添ってやることも上手く出来ない。
ピービーは、かける言葉を見つけられないままだった。
また無意識に蓋を鳴らし始めると、
ピービーには怒りが渦巻いてきていた。
「許せないのはデマを流した奴だ。」
普段は穏やかな彼の声に静かに怒気がこもっていた。
「そいつは、スタビレと同じ歳くらいの……ハンスとかいう奴だ。」
「ハンス!」
ハンスはクラスメートだ。
あいつは何という事をしたんだ。
「知っているのか。」
「……ええ。」
「たぶん、軽い気持ちでだろうが……酷い話だ。」
スタビレの知り合いと分かって、ピービーの気持ちの矛先は行き場を見失っていた。
ハンスはクラスの中でもウワサ好きで、とりわけデマを流すのが趣味みたいな男だった。
スタビレの中に黒い感情が湧いていた。
――思い出されるのは、あの放課後だった。
「……スタビレ!」
「おい、スタビレ。」
下校中のスタビレに声を掛けた男、ハンスだ。
「お前、リーリエと仲いいな、」
「そうかな、家が近いくらいだよ。」
ハンスと分かって足早に帰ろうとする。
関わりたくないのだ。
しかし、そんなことはお構いなしにハンスが続ける。
「いやいや、リーリエの友達いるだろ。」
「友達、あ~カレン、カレンがどうかした?」
返答した事をスタビレは少し後悔した。
ハンスを調子に乗らせてしまう……そう思った。
掛かった、とばかりにハンスが続ける。
「そうそう、そのカレンから聞いた、聞いたんだよ。」
ハンスがこちらを覗き込むようにして言う。
嫌な顔……ニヤニヤと、とても楽しそうだ。
「リーリエ、お前に気があるらしいぞ。」
スタビレがどう返していいのかわからないでいると、ハンスが念押しした。
「いや、ほんとうだって。」
スタビレの耳が真っ赤になった。
「わはは、じゃあな。」
――そして、ある日の放課後、
リーリエから校舎裏に呼び出されることになる。
それが、スタビレのその後の人生を大きく変える事になって行くのだった。
次章、第六章 【渡せなかった手紙】
クラスメートの何気ないやり取りが少年の人生を大きく変えていく。
スタビレに宿る想いは何処へ向かうのか……
