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『カペリンの奇跡』#06                                   プロローグ 《スタビレの帰還》             第六章 【渡せなかった手紙】

前のお話、第五章【放課後の予兆】はこちら▼

放課後、呼び出されたスタビレは緊張していた。

落ち着けるわけもない。

小さく地面をつま先で蹴りつけて、そわそわと辺りを見回す。
と、そこにリーリエがやって来た。

「スタビレ。」

「あ、リーリエ……な、なんだろう?」

(どうしよう。心臓の音がリーリエにも聞こえそうだ。)
(イヤ、前に貸した画集かな、そう、きっとそうだ。)

「あの、スタビレ、ベセールと仲いいよね……」
聞きなれたリーリエの声が違って聞こえる。

「う、うん、なんていうか、あいつサッカー部で、俺、美術部なのに、なんか気が合うというか。」

スタビレは何だかフワフワとした気持ちになっていた。

「ほら、お互い甘いものが好きでさ……」
「あ!」
そこまで話してスタビレは気づいた。

リーリエがうつむき気味に話しを始めた。

「ベセール、今度入隊するでしょ、あの、」
そういうと、リーリエは小さな手紙を、そっとスタビレに差し出した。

「これ……」

「ベセールに?」

「そう」
リーリエは小さくうなずいた。

「……」
「そうか、よし、任せておいて。」

「……じゃあね、また。」
そう言うとリーリエは走っていった。

校舎の屋上からハンスの笑い声が聞こえる。
「はははっ、本気にして、バカだねぇ~」

僕は恥ずかしくなって走って帰った。

結局、僕はベセールの入隊の日になっても手紙を渡すことが出来なかった。
渡す事が出来なかった自分を恥じた。

僕は後悔し、軍への入隊を決めた。

ベセールに会わなくては、会って手紙を渡さなくては、と強く思った。

2人への後ろめたさを、彼らへの裏切りを、少しでも許してもらいたいと思っていた。

次章、第七章 【心の灯をたどって】
人のやさしさと、悪意が交差する……
「君は帰れる場所はあるか。」


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