『カペリンの奇跡』#06 プロローグ 《スタビレの帰還》 第六章 【渡せなかった手紙】
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放課後、呼び出されたスタビレは緊張していた。
落ち着けるわけもない。
小さく地面をつま先で蹴りつけて、そわそわと辺りを見回す。
と、そこにリーリエがやって来た。
「スタビレ。」
「あ、リーリエ……な、なんだろう?」
(どうしよう。心臓の音がリーリエにも聞こえそうだ。)
(イヤ、前に貸した画集かな、そう、きっとそうだ。)
「あの、スタビレ、ベセールと仲いいよね……」
聞きなれたリーリエの声が違って聞こえる。
「う、うん、なんていうか、あいつサッカー部で、俺、美術部なのに、なんか気が合うというか。」
スタビレは何だかフワフワとした気持ちになっていた。
「ほら、お互い甘いものが好きでさ……」
「あ!」
そこまで話してスタビレは気づいた。
リーリエがうつむき気味に話しを始めた。
「ベセール、今度入隊するでしょ、あの、」
そういうと、リーリエは小さな手紙を、そっとスタビレに差し出した。
「これ……」
「ベセールに?」
「そう」
リーリエは小さくうなずいた。
「……」
「そうか、よし、任せておいて。」
「……じゃあね、また。」
そう言うとリーリエは走っていった。
校舎の屋上からハンスの笑い声が聞こえる。
「はははっ、本気にして、バカだねぇ~」
僕は恥ずかしくなって走って帰った。
結局、僕はベセールの入隊の日になっても手紙を渡すことが出来なかった。
渡す事が出来なかった自分を恥じた。
僕は後悔し、軍への入隊を決めた。
ベセールに会わなくては、会って手紙を渡さなくては、と強く思った。
2人への後ろめたさを、彼らへの裏切りを、少しでも許してもらいたいと思っていた。
次章、第七章 【心の灯をたどって】
人のやさしさと、悪意が交差する……
「君は帰れる場所はあるか。」
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