石巻マリンヴィレッジ×地元企業──コラボ体験で広がる地域の輪
2024年12月に誕生した垣根のない分譲住宅「石巻マリンヴィレッジ」は、釣りやマリンスポーツといった「体験」を通じて地域内外の人々がつながる新しいまちです。
敷地を明確に区切る住文化が根強いなかで「垣根のない分譲住宅」という特徴が受け入れられるのか、当初は未知数でした。
ところが、ヴィレッジ完成を祝うレセプションにはプロジェクトに共感する30名が集結。その中には、石巻地域でダイビングショップや飲食店を営む方々も名を連ね、地域の熱量は日を追うごとに高まっています。
この熱の高まりが地域にもたらす価値とは何か──。石巻マリンヴィレッジ誕生の背景と現在の取り組み、そして目指す未来をご紹介します。
あいホームが地域づくりにこだわる理由
「家づくりは、地域づくりである」──これが、あいホームの変わらぬ思いです。私たちは、住宅販売とは単に建物を提供するにとどまらず「暮らし」そのものを提供することだと考えています。そのため、地域に貢献することで豊かな暮らしが生まれると信じ、東北を元気にする活動に取り組んできました。
今回の「石巻マリンヴィレッジ」も、その活動の一環です。
当初は「復興ヴィレッジ」という名称で地域活性化を目指していましたが、地元の方々との交流を重ねるなかで「復興」という言葉は望まれていないことを認識。そこで、地域の未来志向を大切にして「石巻マリンヴィレッジ」という名前で新たにスタートしました。
石巻マリンヴィレッジを拠点に描く地域の未来

「石巻マリンヴィレッジ」が目指すのは、釣りやマリンスポーツといった「体験」を通じて地域内外の人々がつながり、一つの地域コミュニティを築いていくことです。そして、その盛況感が地域から全国、日本から世界へと波及し、地域の企業が元気になる未来を描いています。
例えば、地元のダイビングショップとのコラボレーションは、ヴィレッジに宿泊する他県や海外のダイバーを介して、ショップの新たな利用や認知の広がりへとつながります。
また、食に関わる企業であれば、ヴィレッジの共用キッチンを活用した料理体験を通じて、その価値を発信していくことができます。
石巻マリンヴィレッジは、このように地域の企業と連携しながら化学反応を生み、地域全体を元気にする拠点となることを目指しています。
「暮らす」と「泊まる」の境目を曖昧に
垣根のない分譲住宅として生まれた石巻マリンヴィレッジの大きな特徴の一つに、居住エリアと宿泊エリアが明確に分かれていないことが挙げられます。これは、ヴィレッジを一つのコミュニティとして地域内外の人がシームレスにつながっていく未来を想定しているためです。

チェックインの翌朝、共用の庭でりんごの実を見ていたら向こうから人影が。
「おはようございます。いつから泊まっているんですか?」
「いや、実はここに住んでまして」
「そうなんですか!じゃあ地元の方なんですね」
このように境界の曖昧さから生まれる会話もあるかもしれません。観光客が地域について住民から学ぶこともあれば、反対に地元の方が、外からの視点によって日常の価値に気付かされることもあるでしょう。そうした交流が、地域の魅力を再発見するきっかけとなっていきます。


インバウンドも視野に入れた「体験」の可能性
私たちが「体験」にこだわる背景には、世界に広がる旅需要の変化も挙げられます。象徴的な例として、民泊プラットフォーム「Airbnb」は、2025年夏には「宿泊」に加え「体験」「サービス」を押し出したプラットフォームへとアップグレードされました。(出典:Airbnb公式「2025年夏季アップグレード:宿泊以外も充実した、進化したAirbnbを体験」)
「体験」とは、どのようなものでしょうか。例えば、イタリアを訪れ、現地のおばあちゃんと一緒にスーパーで食材を買い出し、一緒にパスタを作る。そうしたローカルな体験ができる点が特徴です。
地元の方にとってはごく普通のスーパーマーケットであっても、観光客にとっては特別な意味を持ちます。それはスーパーマーケットに限らず、他の日常的な場所にも当てはまるでしょう。
暮らすように泊まる──そうした宿泊体験を目指しているあいホームにとって、Airbnbの進化は方向性が重なるものです。
海外や首都圏の地名で検索すると、さまざまな「体験」がヒットします。一方で「宮城県」で検索しても登録されている「体験」は見当たらず(※)、可能性を感じると同時に危機感を覚えました。(※ 2025年8月25日時点)
宿泊予約ではなく「体験」を予約し、その「ついでに」泊まる。そうした旅の需要が、今後より広がっていくのではないかと考えています。
地元企業と形づくる4つのコラボレーション体験
こうした未来を見据え、石巻マリンヴィレッジでは地元の企業と連携し、多様な体験を用意しています。プロジェクトに参加するパートナーの中には、本業の枠を超えて手広く活動している企業も少なくありません。
「未来への好奇心」を共通項に、新たな価値の創出に挑戦しています。共に地域の将来像を語り合い、互いに新たな発見を与え合える存在です。
ここでは、地元企業と織りなす体験の魅力と、コラボレーションの経緯をご紹介します。
元祖石巻焼きそばづくり:有限会社島金商店様

地元のスーパーマーケットで食材を買い出し、ヴィレッジのキッチンで石巻名物「元祖石巻焼そば」をスタッフと一緒に調理する──そんな地域ならではの食体験です。調理をサポートするスタッフは、まちおこし団体「石巻茶色い焼そばアカデミー」の伝統的な調理法を受け継いだ「石巻焼そばマイスター」。あらかじめ用意された食材を調理するだけでなく、買い出しの段階から参加することで、地域の食文化と日常の暮らしをよりリアルに体感できます。
◆ 石巻焼きそば──魚介出汁だけで仕上げる「茶色い」ひと皿
石巻焼きそばは、2024年に文化庁から伝統的な食文化として認定された「100年フード」で、1930年頃に誕生したともいわれる歴史深い料理です。
その大きな特徴はソースを使わないこと。麺を二度蒸すことで茶色く変色させ、さらに魚介の旨みがつまった出汁を麺に吸わせます。石巻焼きそばは、まるで三陸の海を丸ごと味わうような体験を叶える、世界に誇る一品です。
ソースを使わない、と述べましたが、地元では仕上げにソースを後がけして食べるスタイルも親しまれています。初めての方はたいてい出汁の香りをそのまま楽しみますが、物足りなく感じたときにはソースを加えることで自分好みの味わいへと広げられるのです。
◆ 食文化への思いと技を受け継ぎ、新たな体験を創出
この、何にも代え難い特別な食文化を地域の外、さらには世界に広めたい──。そこで私たちは、昭和25年より地元石巻で製麺業を営む有限会社島金商店様を訪ねました。島金商店様は、麺や出汁の製造に加え、地元の学生さんとの共同商品開発やレシピ発信を通して、石巻の伝統的な食文化を伝え続けています。
島金商店様のホームページを訪問すると、すぐにYouTube動画が目に飛び込んできます。動画には、島英人社長が「島金3分クッキング」と題して石巻焼きそばを自ら調理する姿が。そこから伝わってくる地域の食文化への思いと、発信の形を常にアップデートし続ける姿勢に強く共感しました。
石巻焼きそばを世界に広めたい──そう伝えたところ、島社長は「ぜひ、石巻焼きそばを受け継いでほしい」と背中を押してくださり、「石巻茶色い焼きそばアカデミー」の木村均会長を紹介してくれました。その後の研修を経て、代表の伊藤を含むあいホームのメンバー5名が「石巻焼きそばマイスター」に認定。現在はこのメンバーを中心に、冒頭で紹介したオリジナルの体験を提供しています。

釣船の釣り体験:割烹スタンド 松ばる・木下智也さん

地元の海を知り尽くした船長のガイドで、季節ごとに表情を変える海釣りを楽しめる体験です。釣った魚はその場でさばいて味わうこともでき、石巻の海の美しさと恵みを一度に体感できます。
船を操るのは、地元で人気の料理屋「割烹スタンド 松ばる」を営む木下智也さん。釣り人との交流も深く、この辺りの海ならではの楽しさと奥深さを伝える、この体験の中心的存在です。
◆ 東京や地元の釣り人から聞いた、石巻の魅力
あいホームと木下さんの出会いは2024年の秋。地元での評判を聞きつけ「松ばる」を訪ねたのがきっかけでした。話を聞くと、木下さんは「松ばる」のオーナーであると同時に釣船の船長でもあり、夕方から店を開けて夜遅くまで営業し、翌朝には海に出るという、本格的な複業を続けていました。
数日後、石巻店店長で大の釣り好きとして知られる八木裕樹と伊藤が「松ばる」を訪れると、カウンターには東京や地元の経営者がずらり。偶然にも全員が釣り人で、木下さんを介した会話から、地元ならではの釣り事情や季節ごとの楽しみ方まで知ることができました。
石巻の海は親潮と黒潮がぶつかる場所にあり、季節によって釣れる魚が大きく変わるのが魅力です。釣った魚はヴィレッジ近くのスーパーマーケットで有料でさばいてもらうことができ、食べきれない分は宅配便で送るという流れも整っています。さばいている間、天然温泉「元気の湯」に立ち寄るのも一つの楽しみ。釣り人たちは「釣り人にとって非常に便利な場所」と口をそろえます。
これは釣り人から直接話を聞くことでしか知り得ない魅力であり、ここに私たちが目指す、地域に根ざしたリアルな「体験」の本質があります。
ダイビング体験:ダイビングショップ「ダイビングハイブリッジ」

ダイビングといえば南の海──そんな印象を持つ人もいるかもしれません。女川町に拠点を置く「ダイビングハイブリッジ」も、2012年の開業当初は「こんな寒い海でダイビングなんて……」と周囲から反対されたそうです。
そんな「ダイビングハイブリッジ」の歩みを支えてきたのは、豊かな海の恵みが織りなす美しさでした。
伊藤が初めて石巻の海に潜ったのは2024年2月。極寒の海ではありましたが、内側に服を着込めるドライスーツのおかげで思いのほか快適に潜ることができました。
海中にはウニやホヤ、アイナメ、マダコなど、普段食卓にのぼる地元の食材がそのまま泳いでおり、まさに海中と食卓がつながっていることを目で見て実感する瞬間でした。
◆ ダイバーの資格取得で「体験」に説得力を
「世界のダイバーに、この景色を見せたい」──石巻マリンヴィレッジがその宿泊拠点となるには、まず宿のオーナー自身がダイバーを理解することが欠かせない。そう考えた伊藤は、ダイビング指導機関「PADI(パディ)」の初心者コースから学び始め、半年かけてレスキュー・ダイバーの資格まで取得しました。


ダイビング体験を提供する私たちにとって、最も避けなければならないのはダイビング中の事故です。そこで、体験は「ダイビングハイブリッジ」のプロダイバーによる徹底した安全管理のもとで行っています。
とはいえ、例えば前日に宿で深酒をしてしまえば、それが取り返しのつかない事故につながりかねません。安全のためのルールを守っていただくには、宿のオーナー自身がダイビングへの知見を深め、そのルールに説得力を持たせる必要があると考えました。
森に溶け込むサウナ:JUURI SAUNA(ユーリ・サウナ)

JUURI SAUNAは2024年12月、女川町の出島に誕生した薪ストーブの本格サウナです。かつて出島は離島でしたが、60年越しに橋がかかり、今では陸続きの地となりました。そんな場所に、新たに誕生したのがJUURI SAUNAです。
オーナーはサウナ発祥の地とされるフィンランドを自ら訪れ、その文化をまとう薪ストーブを導入。石に蓄熱するため、火を落とした後も余熱で体の芯から温まることができる──そんな新しいスタイルを提供しています。
クラウドファンディングをきっかけにその存在を知った大のサウナ好き・伊藤は、たちまち虜に。森と海に囲まれた極上の外気浴、未知のサウナ体験──その感動をつづった個人ブログがこちらです。
Special Thanks:あいホームと歩むプロフェッショナル
あいホームは、プロジェクトごとに最適な社外プロフェッショナルを募り、実現に向けて共に歩んでいます。ここでは、石巻マリンヴィレッジの実現を支えてくださった方々をご紹介します。
Webサイト制作 ※ 順不同

石巻マリンヴィレッジのロゴデザイン
株式会社巻組 佐藤優花さん
https://makigumi.org/about/

プロデュース
株式会社エンジョイワークス
https://enjoyworks.jp/
代表メッセージ:地域に飛び込み、新たな価値を創出
あいホームは昭和34年に創業し、祖母から父へ、父から私へと受け継がれてきた会社です。学生時代に一度地元を離れ、首都圏で学んだ経験があるからこそ、東北の豊かな自然や、そのなかで育まれた温かな地域性の魅力を改めて実感。事業を父から継承する際には、地域への恩返しを誓いました。
もっとも、私が生まれ育ったのは宮城県加美町であり、石巻地域との接点は多くありませんでした。そこで、まずは地域を知ることから始めようと、自ら現地に飛び込み、事業を営む方々をはじめ、多くの地元の方と交流を重ねてきました。実際に自分の足で石巻を歩き、リアルな声に耳を傾けることを大切にしてきたのです。
今後ヴィレッジを訪れる人々や、地域の企業が本当に求めるものは何か。その問いに向き合い続けることこそ、私たちの使命だと考えています。これからも石巻マリンヴィレッジを通して、地域と共に成長していく未来を描いていきます。
編集/三代知香、AIイラストディレクター/得丸祐子
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